333.天才への難題
食堂を出たリベラ、クリスト、ガブリエラの3人は、クリストのラボで話をする事にした。
「それでは、お互いに気がついたことを確認してみよう」
そう言って、クリストが最初に、感想を語った。
「前回の歴史に比べると、エイドスで今後発生する事件を、事前に知り得たのは、アドバンテージとなりそうだね。彼らを未来へ帰す準備の方もさることながら、今回は事件を未然に防げるんじゃないだろうか?」
リベラもクリストの意見にうなずいた。
「ただ、ロボットがこちらに来てしまったことで、エイドスの我々側の戦力は不足しているかもしれません。カイト君が誘拐を免れた現在、アイリスさんがこの問題にどの程度真剣に関与してくれるか⋯。下手をするとエドワードさんが誘拐され、ミネルヴァさんが闇落ちするという別のシナリオが始まってしまうかもしれません」
クリストとガブリエラもリベラの意見に深く頷いた。
「クリストさん。エイドス支援のメンバー選出はこちらで行いますので、宇宙船をエイドスへ転送する方法を考えていただけませんか?」
「猶予は?」
クリストの質問に、リベラが即答する。
「バトラー側の行動は、軌道エレベーターの完成式典を予定していると思われます。それが2日後。そこに間に合えば最悪のルートは避けられると思います」
クリストの側は即答を避けた。
いくら天才でも、今回の作業が間に合うのかはやってみないとわからない。
⋯
「それはそうと、初めて君たちと有線通信をしたが、君たちは凄いな。情報の伝達スピードが、人間が知覚できる量ではない。この身体になって本当に良かったと思うよ」
クリストは完全義体となったことで、新たな能力に目覚めたことを実感していた。
アンドロイドのリベラも、ゴーストスキャンした人間との接続は初めてだった。
「私たちも、皆さんがどうやって記憶をしているのか分かりました。なかなか素晴らしい経験でした」
取り急ぎ、クリストは時空転移列車の準備の前に、宇宙船の時空転移方法を検討することにした。
⋯
リベラはエイドスへの行きのメンバー検討のため、一旦食堂へ戻ることにした。
室内へ入ると電気が消されており、何かの上映会を行っていた。
映像は、セレノグラフィアの空港で大男に迫るロボットの戦闘シーンだった。
大男は激しく舌打ちをすると、コートの裏から大型の銃を素早く取り出した。
男は狙いを定め、引き金を引く。
ドン、と空気を爆裂させるような重低音が響く。
発射時の凄まじい反動により、大男の巨体が一瞬後ろに下がるのと同時に、強烈な破壊力を秘めた実体弾が一直線に放たれた。
しかし、ロボットはその軌道を見切り、紙一重で回避する。
代わりに、後方に停まっていた無人の大型作業車へ着弾する。
強烈な着弾音とともに作業車が激しく火花を散らし、黒煙を上げた。
⋯
映像に集中する佐々木の隣にすっと近づく、リベラ。
「なるほど、説明の代わりに経験した内容を映画にしているのですね」
「うん。未来からタイムマシンに乗って、セレノグラフィアに着いたこのロボット君が必死でカイト君を守るお話なんだ。すごく面白いよ」
佐々木もその内容に惹きつけられ、映像を楽しんでいた。
「うわ、スゲー!!」
「すげー」
最前列のメイリンとベガは、その映像を心から楽しんでいた。
映像はカイトを助け、ロボットがギルバートの船に乗り込み、アヴァロンに向かうところで終わった。
部屋の電気が明るくなると、見ていた者たちから盛大な拍手が沸き起こった。
ロボットが少し誇らしく、そして恥ずかしそうに頭を下げる。
「お前スゲーな。それでカイトを助けてここまで連れてきたのかよ」
興奮冷めやらぬメイリンが、ロボットを褒めたたえた。
⋯
リベラがロボットに熱く話しかけているメイリンに近づく。
その真剣な表情に何かを感じ取るメイリン。
「荒事かい?」
「はい。まだ問題は終わっていません。お力を貸してもらえますか?」




