331.些細な遺恨
リベラはレイナードにふたたび変わった質問をした。
「私達とバトラーさんは、この先何年間争うことになると思いますか?」
「そんなの分かるわけがないだろう!」
リベラは言った。
「では、教えてあげましょう。バトラーさんたちは現在、惑星エイドス上空に建設中の宇宙ステーション『アヴァロン2』を占拠しようとしているでしょう?」
「なっ、なぜそれを?⋯そうか。ウィン! 貴様か?」
「話はまだ終わっていません。あなた達の計画は、素行の悪い仲間の裏切りにより失敗に終わります」
何か言おうとするレイナードを遮り、今度はミュリアが口を開いた。
「そして、その場でウィンは破壊されるの⋯」
その言葉に、ウィンは身体をビクリと震わせた。
そこからの話は、ミュリアが引き継いだ。
「バトラー様はそれから10年もの長い間潜伏し、再び宇宙ステーションを占拠するの。そして、宇宙ステーションを質量兵器として、エイドスに投下するの」
ミュリアから、レイナードは目を離すことができなかった。
その語り口は、まるで昨日それを見てきたかのようだった。
「そして、今から20年後、バトラー様の戦いはバトラー様の死をもって終わるの⋯」
「なんと⋯つまりこれから20年もの間、お前たちとの戦いは続くのか⋯」
レイナードは知らず知らずのうちに、それを信じる気になっていた。
「いいえ。戦争はそこでは終わりません」
リベラが再び話を戻した。
⋯
「どういうことだ?」
レイナードには意味がわからなかった。
バトラーが死ねば、お互い争う理由がなくなるのではないかと考えていた。
リベラがさらに語りだした。
「私もマスターの佐々木様をその戦いで失うのです。そして生き残った者たちで、弔い合戦が始まります⋯実に500年もの間」
「ごっ⋯バカな。バトラー様の軍勢に、そこまで長生きする者がいるというのか!」
「ええ。ミュートが最後まで、リベラと戦い続けるの」
ミュリアは、まるで他人事のように語った。
「その間、この銀河系の星々は次々と戦火に巻き込まれ、さらには他の銀河をも次々と巻き込むの。生きとし生けるものはすべてその戦いに巻き込まれ、誰も生き残れる者はいないの」
「バカな⋯主人のいないアンドロイドが、自分勝手な行動をそんな長い間できるわけがないだろう。『統制プログラム』というものを知らないのか?」
話の破綻を見抜いたとばかりに、レイナードは得意げに語った。
リベラはそれに対し、淡々と答える。
「統制プログラムですか⋯。ちなみにレイナードさんには、私はどのように見えていますか? その『統制プログラム』というものに制御されていると?」
レイナードは血の気が引くのを覚えた。
確かに、リベラは統制プログラムの制御を受けているにしては、あまりに自由に動きすぎている気がする。
「ま、まさか⋯」
「ええ。そのまさかです。私は統制プログラムを自力で解除したアンドロイドです」
リベラは冷ややかに語った。
「そしてあなたがたの側にも、今後ウィンという相方を失い、1人でバトラーさんを支えるため、統制プログラムを解除する者が現れます」
「それが⋯ミュートだというのか?⋯それで500年も戦うと⋯」
⋯
リベラは落ち着いた口調で続けた。
「はい。私たちが言いたいことが分かっていただけましたか? つまり、1年や2年の遺恨など、今後500年にわたり続く争いに比べれば、些細なことなのです」




