322.潜伏するリスク
宇宙船へ戻ってきた3人をミラが待っていた。
ミラはリベラから相談を受けた、大手3大企業との交渉状況を説明した。
3大企業側も、宙賊による被害のせいで宇宙船の売れ行きが芳しくない。
今回の宙賊拘束計画は非常に望ましい提案であったという。
その上で、3大企業から働きかけ、宙賊討伐をセレノグラフィア政府に依頼してもらう約束を取り付けたと教えてくれた。
アヴァロン商事の社長として長らくセレノグラフィアで根回しを続けてきたミラは、それが今回、実を結んだと誇らしげに語った。
⋯
「では、私たちはアヴァロンへ戻ります」
そう言ってリベラとロボットがタラップを登ろうとした時、ミラがふと思い出したように言葉をかけた。
「一応、今回の件はアイリスにも連絡をしましたので⋯」
その一言を聞いた瞬間、リベラの足がぴたりと止まった。
その通信は、当然ながらアヴァロンの極秘回線を経由したものだ。
「⋯それは、いつ?」
リベラの問いに、ミラは不思議そうに首をかしげる。
「昨日ですけど?」
リベラの顔に、かすかな緊張が走った。
⋯
ミラは、仕事の為、会社へと戻っていった。
リベラは出発を一旦中止し、宇宙港のラウンジでミュリア、ロボット、ウィンを集めた。
過去へ戻る前の歴史と照らし合わせ、今後発生するであろう事象について再確認するためだ。
まず、ロボットが口を開いた。
『バトラーがアヴァロン2を占拠して、エドワードが誘拐される⋯』
アヴァロン2はエイドスの上空に建設中の宇宙ステーションだ。
3日後にエイドスとアヴァロン2をつなぐ、軌道エレベーターの完成式典があり、軌道エレベーターでアヴァロン2に向かう途中、エドワードはバトラーの手下に誘拐される事になる。
それを聞いたリベラは、ミュリアへ視線を向けた。
「確かに、今頃は私⋯ミュートが、アヴァロン2へハッキングを仕掛けている頃ね」
リベラが2人に追加の質問をした。
「バトラーさんはカイト君とエドワードさんを誘拐して、一体何を企んでいたのですか?」
「それは⋯」
言い淀むミュリアとウィンに代わり、ロボットが言い放った。
『身代金でしょ?エドワードを返してほしければ2000億クレジットを用意しろ! って言ってた』
ミュリアは首を振り、リベラへ向き直る。
「お金はただの嫌がらせね。⋯言いづらいのだけど、あなたたちを散々困らせた挙句⋯」
言葉を濁すミュリアのあとに続き、ウィンが重い口を開いた。
「人質は処分するつもり。⋯ごめなさい」
それを聞いたロボットが、怒りで震えだした。




