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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第43章:未来のための歴史改変

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320.呼び覚まされた意志

「カイトをどうしても自分で守りたい!」


アイリスは生身の人間が過去へ行く危険性を痛いほど理解しており、その上で代案を考えていた。


「私を、『ゴーストスキャン』をして」


その突飛で壮絶な言葉を聞いたクリストは、目を見開いた。

「驚いたな、君からそんな提案が出るとは。しかし⋯」


「危険なのは知ってる!でも、大先生も生きてる時にスキャンして生き残ったんでしょ?」

アイリスはクリストの否定的な発言を強硬に遮った。


彼女の瞳には、引き下がる気配など微塵もなかった。


クリストは、2つの問題を考えていた。

ゴーストスキャンが精神にかける負担が極端に高く、通常は死に瀕した者に仕方なく使用する技術であり、文字通り死んでもいい場合以外はあまり勧められない。

そして、ゴーストスキャンしてデータ化した人物は、いつ起きるか分からない。


特に『生への強い執着や明確な義務感がない者』は、データの世界からなかなか復帰できないのである。


クリストは技術者として否定をしながらも、アイリスの放つ意志の強さに、ある種の可能性を感じていた。


「⋯わかった」


クリストは静かにつぶやき、システムを調整した。

「君の精神が持つところまでのスキャンにとどめよう。だが、無理は禁物だ」


「ありがとう」

アイリスはゴーストスキャンのヘルメットを装着し、ベッドに横たわった。


「限界が来たら言うんだよ」

クリストは優しく、しかし警告を込めてアイリスに説明した。


スキャン開始のスイッチが押され、少しずつデータへの読み出しが始まる。


「ぐっ⋯」

始まってすぐ、脳内を直接掻き回されるような強烈なプレッシャーに、アイリスはくぐもった声を上げた。


コピーが5分を超え、進捗が50%を超えたあたりで、アイリスの指先が激しく痙攣しだした。


生体モニターの数値が危険域を指し示していた。


「大丈夫か!?」


クリストの悲痛な質問に、アイリスは歯を食いしばりながら、「大丈夫」とだけ答えた。


しかし、その後すぐに限界は訪れた。


アイリスが意識を失い、ベッドに沈み込んだ。


「ここまか⋯」

これ以上は命を奪うと判断し、クリストはアイリスの精神を守るため、システムを緊急停止させた。


抽出されたデータは重要部分にいくつかの欠損を残したまま保存されることとなった。

モニターに映る不揃いな波形は、のちの人格形成に何らかの影響を及ぼす要素を含んでいたが、クリストはすぐさま次なる対処へと取りかかった。



しばらくして、アイリスがゆっくりと目を覚ます。

「どうなった?」


アイリスに、クリストは状況を説明した。

意識は70%まではスキャンできたが、そこでスキャンを停止せざるを得なかったが、足りない部分はAIによる補完を行ったため、なんとか『意識』としての形だけは完成させることができた。


「だが⋯目覚めないんだ」


クリストは、動かないプログラムを前に、厳しい表情で現状を告げた。


「わかった」


アイリスは青白い顔のままベッドから起き上がると、モニターに表示されている、不活性な意識の波形に向け、マイクを掴んで話しかけた。


「私の代わりにカイトを助けるんでしょ! 起きてよ!」


その魂の叫びが届いたかのように、死を告げていたフラットな直線に、稲妻のような鋭い波形が走った。

画面のラインは、まるで生き返ったかのように力強く波打ちながら、一気に起動レベルまで跳ね上がっていった。


『カイト!』


スピーカーから、その意識が覚醒し、声が響いた。


それを見たアイリスは、笑顔になり、そのまま気を失った。


クリストは倒れそうになるアイリスの身体をそっと受け止め、再びベッドに優しく寝かせた。


そして、今まさに目覚めたばかりの、強い意志が宿った黒いコアを、近くに待機させていたアイリスのロボットの胸部へと組み込んだ。


駆動音を立てて、ロボットが再起動する。


コアが機体の制御を奪い、キョロキョロと周囲を見回すロボット。


「ココはラボの中だよ」

クリストは優しく説明し、ロボットとしての新しい目的を思い出させるため、現在の状況を語り聞かせた⋯。



「なるほど、それで見送りにアイリスさんが来れなかったんですね」

ラウンジの静寂の中で、リベラはすべての点と線が繋がったことを理解した。

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