319.それぞれの選択
その出発を間近に控えた船内で、ミュリアが静かに告げた。
「私は、アヴァロンには戻らないわ。ウィンと共に行動する事にしたの」
リベラはミュリアの考えに同意するようにうなずいた。
「いちおう理由を聞かせてもらってもいいでしょうか?」
ミュリアは静かにうなずいた。その瞳には、かつての迷いは消え失せ、確かな未来を見据える光が宿っていた。
⋯
船内のラウンジに集まるリベラ、ミュリア、ロボットの3人。
まずはリベラが静かに話しはじめた。
「私とロボットは明日の朝、セレノグラフィアを出発しアヴァロンへ戻ることにしました」
それを聞き、ロボットが驚いたように質問する。
『ミュリアは?』
「彼女はココに残り別の仕事をやってもらいます」
『どんな?』
「それは、私から説明するわ」
そう言って、ミュリア本人が静かに話しはじめた。
「昨日のリベラの提案、バトラー様を星間警備会社のトップにするため、どうやって実績を作るかについて⋯いい方法を思いついたの」
ひと呼吸置いて、ミュリアはこれからの方針を説明した。
「バトラー様の配下を、『荒くれ者』と、『規律ある者』の2つに分けるの。そして、前者を星系の脅威として一網打尽に拘束する。これをバトラー様自身が主導して『危険因子を排除し、航路の安全に貢献した』という実績にするの」
「なるほど。星系の安全に寄与する実力者として、表舞台の企業や組織にその力を認めさせるわけですね」
リベラが納得したように、眼鏡の奥の瞳を光らせる。
「ええ。この実績があれば、私たちを真っ当な組織として迎える大義名分ができるわ」
「それで、残された後者の方たちはどうするのですか?」
リベラの質問にミュリアは答えた。
「その星間警備会社に傭兵として登録させるの。これ以上ない即戦力になるんじゃないかしら」
「よい感じもしますが、⋯なかなか難しそうな計画ですね」
リベラはあえて冷静に、その作戦の難易度を指摘する。
「だから、私とウィンと、⋯ミュートの3人でこの計画を進めることにするの」
ミュリアの覚悟に満ちた顔を見て、リベラも深く納得した。
「なるほど、それならば何とかなるかもしれませんね。その計画、我々も協力しましょう」
納得した様子のリベラだったが、すぐに実務的な懸念を口にする。
「ところで、拘束した人たちの処遇はどうするのですか?」
ミュリアは少し考え、リベラに向き直った。
「何かいい案はない?」
「彼らに迷惑をかけられている人たちに相談するのが良さそうですね」
リベラはそう言うと、ミラを経由してセレノグラフィアの大手3大企業に相談しする事にした。
話がまとまったところで、ミュリアはずっと気になっていた疑問を投げかけるために、最後にロボットに質問した。
「ところで、あなたは一体何なの?」
過去に戻る直前、クリストが連れてきたあのロボット。
リベラにはよく知る人物にあまりにも似た者がいた。
「あなたは⋯アイリスさんですか?」
リベラが尋ねると、ロボット首を横に振った。
『⋯少し⋯ちがう』
その答えは、『過去』に戻る前日までさかのぼる。
⋯
過去に戻る前日。
アイリスは1人で、重苦しい足取りで相談に来ていた。
「天才先生。お願いがある⋯」
アイリスはクリストの前で、真剣な面持ちで静かに話しかけた。
「カイトをどうしても自分で守りたい!」
アイリスは生身の人間が過去へ行く危険性を痛いほど理解しており、その上で代案を考えていた。




