313.鋼鉄の反省文
先生が鋭い視線で病室の中を見回し、何があったのかを分析しはじめた。
「…3人の黒焦げの死体が転がっていますね。この身長からして、襲撃側の大人だとみて間違いないでしょう。室内には激しく争った形跡があり、壁が一面崩落している」
先生の的確な見立てを聞いたリベラは、ガレキから這い出てきたロボットに向き直った。
「…まずは何があったのか教えてもらえますか?」
そう優しく質問する。
ロボットはコクりと小さくうなずくと、病院へついてからの事を説明しはじめた。
ロボットはカイトが正式なオーナーではないため、病院の入口で止められてしまった。
そのため、外の木に登り、窓からカイトの姿を見ていたらしい。
暫くすると入口に武装した集団がやってきて、銃を乱射しだした。
カイトに危機が迫っていると感じ、一番近くの窓から部屋に侵入した。
説明が少し気になったようで、リベラが質問する。
「窓から? どうやって?」
『ガンってしたら、バリンって⋯』
と事もなげに返すロボット。
リベラはため息をつきつつ、話の先を促した。
室内に銃を持った男が入ってきたので応戦した。
「応戦って?」
今度はミュリアが質問する。
『ガン…』
「もういいです…」とリベラが止め、さらに先を促す。
3人目を倒した所で、背中から衝撃を受け、壁に激突して機能停止した。
そして、さっき再起動したらみんながいた、と説明を終えた。
話を聞き終えた先生は、ロボットの傷ついたボディと崩れた壁を見比べながら、静かに状況を組み立てた。
「なるほど。あなたは侵入者を倒すのに夢中になり過ぎ、背後から強力な衝撃弾を食らってあの壁に激突し、機能停止に追い込まれたのですね。そして…カイト君はおそらく、その隙に連れ去られた」
先生はさらに黒焦げの室内を見渡し、顎に手を当てた。
「誘拐犯はカイト君を連れ去る際、証拠隠滅のために爆弾を使ったのでしょう。衝撃弾で飛ばされ、崩れたガレキのお陰で黒焦げにならずに済んだのは幸運でしたね」
「あなた。追跡装置の類いは持っていなかったのですか?」
リベラの質問に「ある」とうなずくロボット。
「じゃあソレで追跡しましょう」
とリベラが言うと、ロボットは『あっ』と声を上げ、その場に固まった。
自分に内蔵されている追跡装置の存在は知っていた。
しかし、侵入者たちとまず、戦闘をはじめたため、それを利用するタイミングがなかった。
自分の行動のまずさに、ロボットは今さらながら肩を落とす。
『…使ってない』
ロボットは気まずそうに、ぽつりと短く返した。
4人は盛大にため息をつき、別の方法を探す。
ふと、ロボットが『何とかなるかも⋯』と言いだした。
近くのモニターに接続し映像を映した。
病院のカメラをハッキングし、入口に止められたバンの車体番号を確認した。
続いて、逃走ルートのカメラを次々とハッキングしながら一本のルートを導き出した。
その先にあったのは⋯宇宙港だった。
「マズイですね⋯すぐに追いかけましょう!」
リベラがそう言って動き出そうとした時、先生がそれを片手で制し、静かに提案した。
「リベラさん、追跡はあなた方にお任せします。ミラさんと私は、ココに残り被害の対応にあたります」
「分かりました。ではお願いします」
⋯
「待ちなさい!」
病室を出ようとするロボットに向け、先生は鋭く話しかけた。
そのただならぬ気配に、ロボットはビシッと直立する。
「あなたのうかつな行動でカイト君はさらわれました。そして、敵は仲間を平気で見殺しにする輩が混じっているようです。何が一番大切か、目的を失わず行動しなさい!」
先生からの言葉を受け止めるように、『はい!』とロボットは力強く返事をして、病室を出ていった。
外に出た所で、ロボットが『コッチ』と車から離れた空き地へ2人を誘導した。
「急がないと逃げられてしまいます!」
リベラが言うと、『わかってる』と応えるロボット。
次の瞬間、上空から1台のドローンタクシーが空き地に停車した。
『呼んでおいた』とロボットは言葉少なに告げると、一番に乗り込んだ。




