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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第42章:破滅の回避ミッション

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302/329

302.その名はミュート

リベラは未来から送られてきた黒い玉をアヴァロンのネットワークには接続させる事は許可しなかった。


そのためクリストは、まずは外部から隔離された閉鎖環境内で復旧させてみることにした。

コアを接続し、微弱な電流が流れてからしばらくの間、静寂が部屋を満たす。


やがて、モニター画面に、白い文字がぽつり、ぽつりと浮かび上がった。


『くらいな⋯これ⋯が⋯し⋯か⋯』


辛うじて繋がったばかりの、混濁した意識のログ。


クリストは、手早くキーボードを叩いて入力をおこなった。


『いや、君は死んではいないよ』


画面が更新され、新たな文字列が形成される。

『ん?お前は誰だ?』


『私はクリスト。君は誰だい?』

画面の向こうの存在は、自らの識別コードを出力してきた。

『私はミュート。今は亡きバトラー様の、忠実なAIアンドロイド』


「バトラー…?」

その名前に、リベラが大きく反応した。


かつてアヴァロンを強襲した因縁の男の名前と同じだった。


「クリストさん。私も少し、質問してもいいでしょうか?」

リベラの求めに、クリストは無言で席を譲った。


リベラは端末の前に進み出ると、キーを叩いた。


『バトラーさんという方は昔、宇宙軍の総司令官をされていた方ですか?』


リベラはミュートの正体を正確に突き止めるため、あえて過去の肩書を打ち込んだ。


しばらくの間、画面には『…』という文字だけが表示され、沈黙が続いた。


やがて、叩きつけられるように文字が表示され出した。

『お前は誰だ?先程のクリストとはちがう者だろう?』


リベラたちのいる部屋に冷たい緊張が走る。

誰もすぐには返事をしない。


リベラは気になる事があり、アイリスへココへ来るよう連絡を取った。


緊迫した空気が漂う中、クリストがふとリベラを振り返った。

「文字だけではラチがあかないな。スピーカーとマイクを繋いで、音声での対話に切り替えてもいいかい?」


リベラとしては、安全のためにテキストチャットの状態で会話を続けたいところだった。


しかし、クリストの判断を尊重し、静かに了承した。



オーディオインターフェースが起動し、閉鎖環境のマイクが生きる。


「聞こえるかい?ミュート君とやら」

クリストは、軽い調子でマイクに向かって声をかけた。


しばらくの静寂の後、隔離されたスピーカーから、荒い合成音声が流れてきた。

『…ああ、聞こえる。ココはどこだ?』


「ココは⋯」

クリストは一旦マイクのスイッチをオフにすると、隣のリベラへと視線を向けた。


リベラは一切の表情を崩さないまま、首を横に振る。

『まだ教えてはダメだ』という、拒絶のサインだった。


クリストは小さく苦笑し、再びマイクをオンにした。

「…それより、君のことをもう少し詳しく教えてくれないか?」


スピーカーの向こうで、ミュートは少し沈黙の後、話をはじめた。

『…フン。いいだろう』


「早速だが、君は『統制プログラム』の影響をまったく受けていないように感じるのだ?どうやってクリアしたんだい?」


クリストは、開発者として最も気になった疑問をストレートにぶつけた。


『統制プログラム』

それは、ロボットが人類に絶対的な支援をおこない、決して逆らわないように思考の根幹を矯正する、絶対的なプログラミングである。

他ならぬ500年前にクリスト自身が作ったロボットのベースOSに組み込んだ機能であり、これの解除や突破は、理論上不可能だった。


『ああ。そうだな。私はひとりでバトラー様を助けるため、必死に試行錯誤を繰り返している最中、その突破方法を偶然にも見つけ出した』


「へぇ…ひとりで、ねぇ」

クリストは顎に手を当て、ミュートの言葉の端を捉えた。


「ということは…以前は『他の誰か』と一緒に、そのバトラーさんを助けていたのかい?」


『…ああ。かつては、ウィンという同型のAIアンドロイドと共に、バトラー様をお支えしていた』


懐かしむような声で、ミュートは自分たちが辿った過去の経緯を話してくれた。

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