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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第41章:アヴァロン2の崩壊

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294/349

294.放送できない情報

「見つけた!」


アイリスがそう叫ぶと、それに合わせるようにミネルヴァが、1つの倉庫の監視カメラ映像をモニターに映し出した。


そこには、コールドスリープポッドに入れられた誰かと、それを取り囲む数人の男たちの姿が映っていた。


「あのポッドは?⋯あれは誰ですか?」

アナウンサーがミネルヴァに質問する。


『私の弟⋯』

しかし、答えたのはアイリスだった。


「どういう事ですか? あなたはギルバートさんのサポートでココにいるのではないのですか?」

アイリスの答えに、アナウンサーの目が『特ダネを見つけた』と言わんばかりにギラリと光った。

視聴率が稼げる強烈な人間ドラマの匂いを察知した。


「彼女は囚われた弟を救うために、我々のカーゴを利用したのです。目的は別にあります」

アイリスに代わり、今度はミネルヴァが答えた。



ミネルヴァは多少のウソを混ぜつつ、ツジツマを合わせた説明をはじめた。


アイリスはアヴァロン商事のグループ企業に仕える優秀なハッカーであり。

アヴァロングループの敵対勢力が、セレノグラフィアの病院に入院していた彼女の弟を誘拐し、このアヴァロン2へと逃げ込んだ事を説明した。

ちょうどエイドスにいた彼女は、今回の軌道エレベーターの式典に合わせてカーゴに乗り込み、アヴァロン2を目指していた。

そして、今回のトラブルを起こした宙賊と、その誘拐犯は同一の勢力であるらしいと説明した。


「ん? ということはアヴァロン商事は、宙賊がアヴァロン2を占拠している事をご存知だったのですか?」

アナウンサーが、今度はアヴァロン商事の不祥事を暴こうとするかのように、意地の悪い鋭い質問を向けた。


「それは先ほどキャンピングカー内で、アイリスさんから情報共有を頂いた所でした。それに、これほどの規模でアヴァロン2が占拠されていることを事前に知っていれば、エドワード社長を危険な場所に連れてきたりはしません!」


ミネルヴァが毅然と言い放つと、アナウンサーは「それは確かに⋯」と納得した。


しかし、すぐにまたアイリスの『おいしいネタ』へと言葉の矛先を戻す。

「アイリスさん、あなたは弟さんをさらわれ、たったひとりでこの巨大な陰謀に立ち向かおうとしているのですね 」


感動的な美談に仕立て上げようと、ここぞとばかりに根掘り葉掘り問いかけるアナウンサー。

カメラマンも興奮気味にアイリスにレンズを近づける。


しかし、アイリスから返ってきたのは、エンターテインメントとして消費できるレベルを遥かに超えた、冷徹で生々しい現実だった。


「私たちはこれまで、セレノグラフィアでひどい生活を送っていた。弟はその生活の中で、臓器売買業者に捕まっていたの⋯」


「ぞ、臓器?⋯えっ!」

予想もしなかった生々しい単語に、アナウンサーの声が裏返る。

あまりにも悍ましく、救いのない本物の闇の告白。


メディアが喜ぶ「かわいそうな被害者」の枠に収まらないひどすぎる内容に、先ほどまでスクープを求めてギラついていたアナウンサーの顔から、一気に血の気が引いていく。


「佐々木のお陰で、私たちはもう一度出会えたのに⋯』


「その佐々木という方はあなたの所属するハーレムの主でしたっけ?」


質問を重ねたアナウンサーに、ミネルヴァが答える。

「関連企業の社長ですが、その方の情報は完全非公開でお願いいたします。その名が公表されますと訴訟問題になります。これ以上の詮索はご遠慮ください」


ミネルヴァの厳格な注意に、アナウンサーは言葉を呑み込んだ。


『あいつら、ぜったいに許さない⋯』

静まり返った倉庫の中に、アイリスの深い恨みの声だけが冷たく残った。

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