291.アヴァロン2潜入
『エドワード様。私、怖い!』
無線越しにそう言いながら、隣にいたエドワードの宇宙服に思いきり抱きつくアナウンサー。
『はは⋯大丈夫ですよ。ねぇ、アイリスさん?』
エドワードが苦笑交じりに問いかけると、先頭のアイリスから緊迫した声が返ってきた。
『⋯まずいかも』
『えっ!』
エドワードが声を上げる。
アイリスの目線の先には、漆黒の闇を切り裂いて、こちらに急速に迫ってくる宇宙船の姿があった。
『宇宙船を動かす!』
5人が文字通り『宙吊り』の状態のまま、アイリスの遠隔操作によって資源運搬船が動き出した。
『ギャーーーッ!!』
先程までの可愛らしさはどこへやら、アナウンサーは完全に地の声で激しく叫んだ。
『こっ、この野郎⋯!』
無線に野卑な男の声が混ざったかと思うと、敵の宇宙船から、資源運搬船に向け容赦のないレーザーが放たれた。
ミネルヴァがまずいと感じた次の瞬間、敵の無線に別の怒鳴り声が割り込んできた。
『バカモン! 生きたまま捕らえろと命じただろう! レーザーなど撃つんじゃない!』
敵が身内で揉めている間にも、アイリスはワイヤーを巻き取り、少しずつ資源運搬船の船体へと全員を引き寄せた。
やがて船の壁面に到着したものの、アイリスはなぜか安全なはずの船内へ入ろうとしなかった。
『アイリスさん! 早く中へ!』
焦るエドワードが声をかける。
『だまって!!』
強い勢いでエドワードの言葉をはねのけ、アイリスはヘルメットの中で目をつむった。
アイリスは電脳を介し、頭の中に先ほどまでいたカーゴの外部カメラ映像を映し出した。
敵の宇宙船は、全部で3機。
アイリスは付近に待機させていた特攻船の中から、すぐさま3機を敵船に差し向けた。
敵の宇宙船3機は、自分の真後ろから迫る特攻船を慌てて回避しようとした。
しかし、彼らは自分の後ろの敵にしか注意がいっていなかった。
アイリスは最初からそれを見切っていた。
自分の後ろの特攻船を避けたはずの宇宙船は、死角から突進してきた別の特攻船の直撃を次々と受ける形になり、3機とも一瞬にして宇宙の藻屑となった。
『くそっ! 貴重な宇宙船を⋯!』
無線から敵の悔しそうな声が漏れ聞こえてくる。
最大の障害を排除した資源運搬船は、そのまま目的地であるアヴァロン2のドックに向けて一直線に進んだ。
『あっ、コッチもダメか⋯』
アイリスが再び、ぽつりと独り言を呟く。
ミネルヴァがその声を聞き、アヴァロン2のカメラ情報を確認した。
「⋯確かにドックに敵兵が何人かいますね」
このまま正面から入港すれば、待ち伏せされている敵の餌食になる。
すると、資源運搬船はドックへの進路を大きく変えた。
船のスピードが少しずつ遅くなり、停止した瞬間。
『ここだ!』
アイリスが鋭く叫び、手元のアンカーをアヴァロン2の外壁にある、巨大な通信アンテナの根元近くに向けて撃ち込んだ。
『船から手を離して!』
アイリスの指示通りに全員が運搬船の手すりから手を離すと、アイリスのワイヤーに引きずられる形で、5人は再び宇宙空間へと放り出された。
アイリスたちが離れた資源運搬船は、無人のまま再びスピードを上げ、本来のルートに戻りドックへと入港していった。
『これで少しは時間が稼げる』
アイリスはそう言い、通信アンテナの近くにある緊急用のエアロックへと全員を滑り込ませた。
こうして5人は、敵の裏をかきアヴァロン2の中へと侵入していった。




