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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第40章:戦場の電脳覚醒

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277.執念のシンクロ

「クソっ、残りは動きが違いすぎる!」


生き残った10隻の敵艦は、他とは一線を画す精緻な回避能力を持っていた。

特攻船の直線的な軌道を見切り、紙一重ですべて避けてみせた。


さらに、バトラーの乗る母船は強固なバリアを展開しており、生半可な攻撃を寄せ付けなかった。


手札が尽きかける。

「覚悟を決めるか…」


ギルバートが、ふっと諦めるようなセリフを吐き出した。


「ギル…」

リラが悲痛な声をあげてギルバートに近寄った。


しかし、夫の顔を間近で見た瞬間、その目がまだ死んではいない事に気がついた。


130年を生き抜いた大商人の、全てを賭けた時のギラついた眼光が、そこにはあった。


その時、残った敵船団に向けて、特攻船の1機が猛烈なスピードで突っ込んでいった。


敵の精鋭艦は、お決まりのルーティンで回避行動をとった⋯ハズだった。


だが、特攻船は、まるで敵がそこに動くのを知っていたかのように、回避先へと軌道を曲げ、その鼻面に思い切り突っ込んだのだ。


「グッ…まだまだぁぁぁ!!」

ギルバートが、大声をあげて苦しげに絶叫した。


その直後、また別の特攻船が飛び込んできた。

それも先ほどと同じく、予測回避を行った敵艦の動きを完全に読んで、逃げ道へと突っ込み、木っ端微塵に粉砕した。


リラと先生は、目の前で起きている事態の正体に気がつきはじめた。


ギルバートは、ただ指示を出しているだけではなかった。


自身の意識のすべてを、あの特攻船と完全にシンクロさせて操縦していた。


それは同時に、特攻船が敵艦に激突して爆散する『死の瞬間』の凄まじい衝撃をも、ギルバートがダイレクトに喰らい続けていることを意味していた。


毎回、強烈な臨死体験の苦痛が彼を襲い、精神をズタズタに引き裂こうとする。

だから、あれほど苦しげに叫んでいるのだ。


「う、おおおおおおおッ!!」


激突の度に、ギルバートの身体が電流を流されたように大きく跳ね上がる。


そして、信じられないことが起きた。


強烈な激痛の中で、車椅子に座り、右手しか動かなかったはずのギルバートの「左手」が跳ね上がり、ひじ掛けを強く掴んだのだ。


「が、はっ…あぁぁぁ!!」

また1隻が爆散した。


その瞬間、ギルバートは背筋を強烈にのけぞらせると、なんと車椅子から自らの足で、勢いよく立ち上がった。


リラが息を呑む。


震える足を踏みしめ、ギルバートは一歩、また一歩と、メインモニターに向かって歩いていく。


その眼差しは、バリアを張って立ち往生しているバトラーの母船を完全に捉えていた。


『死の瞬間』という圧倒的な衝撃。


その『刺激』の連打が、眠っていた完全義体の神経細胞を強制的に叩き起こし、彼の肉体の機能を爆発的に復活させていた。


そうして気がつけば、バトラーの艦を残しすべての敵艦が沈黙していた。

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