242.戦後審判
『ん。ここは?⋯どこだ』
それが意識の混濁から浮上したギルバートが、最初に発した言葉だった。
「ここは惑星エデンの近隣宙域です」
リベラの声が、すぐそばで返ってきた。
『リベラ?お前、なんで⋯というか、何があった?』
リベラと話を続けようとしたその瞬間、視界が急激に回転し、体ごと宙に浮かび上がった。
「ギルゥー! よかった、無事でえええ!!」
『うおっ!? ちょ、リラ! お前、大げさだぞ。っていうか、なんだ⋯お前ら、なんかデカくないか?』
ギルバートは自分を抱き上げるリラが、巨大に見えることに違和感を覚えた。
続いて、視界の端に入った自分の手に視線向け、絶叫した。
「んんん!? なんじゃこりゃあぁぁーっ!!」
それは、人間の手ではなく、ロボットの手だった。
⋯
降伏を宣言したガブリエラは単身で小型艇に乗り、リベラたちの豪華客船に乗り込んだ。
ガブリエラが脇に抱えたアタッシュケースを開くと、黒い玉が大切に保管されていた。
リベラはイヤがるアイリスに頼み込み、アイリスが普段から大切にしている身長1メートルほどの小型ロボットに黒い玉を格納し、ギルバートを再起動した。
⋯
リベラはガブリエラに依頼をした。
「では、これまでの経緯を、説明してもらえますか?」
ガブリエラは、苦々しい表情で語り始めた。
「エイドスでアヴァロン商事を出たギルバートを呼び止め、静かな店で、2人きりで話をしようという提案をしたの」
「へぇ⋯。静かな店で、2人きり、ねぇ⋯」
リラの声のトーンが数度下がった。
ギルバートを抱く腕の形は変わらないが、その指先がロボットの外装に食い込み、ミシミシと不吉な音を立て始める。
『ちょ、待てリラ! フレームが歪む!首があらぬ方向に曲がってるって!!』
「やめてぇ! リラ、それ私の宝物なの!壊れるぅ!」
アイリスがリラの腰にしがみつき、涙をポロポロ流しながら必死に抗議する。
しかし、嫉妬の炎に包まれたリラの耳にその声は届かない。
リラの腕の中で、小型ロボットは「ギギギ⋯」と、断末魔のような音を立てていた。
リラの静かな圧に押されながらも、ガブリエラは話を続けた。
ガブリエラはギルバートと会話を重ねる中で、ある強烈な違和感に囚われた。
それは、AIアンドロイドだと思っていたギルバートが、実は「本物の人間」なのではないか、という疑念だ。
「私の目的のためには、どうしてもそれを確かめたかった。だから、ギルバートさんが後ろを向いた瞬間に、首の後ろの接続デバイスへシステム停止モジュールを繋いだの」
ガブリエラの調査の結果、ギルバートはハードウェアとしては完全なアンドロイドであることが判明した。
つまり、「本物の人間」に見える理由はソフトウェアにあると言える。
より本格的にソフトウェアを解析するため、エデンへ持ち帰ったのだと説明した。
一通りの説明が終わると、リベラが「なるほど」と短く応じた。
⋯
「事情は理解しました。では、ここまでの話を聞き、かつ我々が完全勝利した事実を受け、ギルバートさんとリラさんで、『落とし前の付け方』を決めていただけますか?」
リラと小型ロボットのギルバートを見つめ、リベラは淡々と続けた。
「私たちは少し別の話をしたいと思いますので、一時退席させてください」
リベラはそう言うと、ガブリエラを連れ、リベラは部屋を出ていった。




