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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第34章:鉄壁の要塞と電脳の女神

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229/240

229.アヴァロンの子ども

ここまでの34章のあらすじ

登場人物:佐々木(31歳、男性)、リベラ(AI、女性)、サラ(29歳、外科医、女性)、アイリス(22歳、ハッカー、女性)、カミーユ(30歳、秘書、女性)、エマ(28歳、技術者、女性)、オリーヴ(75歳、レーザー砲設計者、女性)、ゼウス(80歳、技術者)、ゼロ(AI、女性)

アヴァロン到着を目前に手術を怖がるアイリスに対し、サラは過去の凄惨な記憶を塗り替えるような、機械の修理ではない「生身への蘇生」を約束し、彼女に再起の勇気を与える。入港後、一行はメイリンら家族の温かい出迎えを受け、カミーユは佐々木の父親としての顔に驚きつつも、アヴァロンの住人たちから新たな仲間として迎えられた。要塞巡りでは、カミーユが巨大レーザーの破壊力を認めつつも、商売上の政治的視点から新ステーションへの武装不要論を説き、技術者たちの信頼を勝ち得る。さらに、高出力レーザーの反作用を制御し、巨体を自在に操る900基のスラスター群の精密な制御システムに感銘を受けた彼女は、全ての源であるエネルギー炉へと向かう。アヴァロンの圧倒的技術と家族の絆に触れ、一行は新たな日常へと歩み出すのだった。

リベラたちは最後に、エネルギー炉を目指して移動を開始した。


エレベーターで地上へたどり着いた時、メイリンの隣ではベガが眠たげに目をこすりはじめた。


「メイリンさん、ベガはお昼寝のようですね。お願いしてもいいですか?エネルギー炉には私たち2人で向かいますので」

リベラの提案に乗る形で、メイリンはベガの手を引いて部屋へ戻っていった。


残されたリベラとカミーユは、地下へと続く専用エレベーターに乗り込んだ。


下降を始める静かな箱の中で、リベラがふと問いかけた。

「カミーユさん、ベガを見て、何か感じましたか?」


カミーユは、ベガの姿を思い出しながら、率直な印象を口にする。

「佐々木さんに少し似ていますけど⋯お相手が誰なのか、実はよくわかりませんでした。メイリンさんやセレネさんのどちらにも似ている気がしますし⋯」


「ありえないことだと思うのですが、アードさん、リリィさん、オリーヴさん、ゼウスさん、さらに言うとゼロさんやリベラさんにすら、どこか面影がある気がして⋯」


「さすがですね。そのとおりです」

リベラは穏やかにうなずいた。


「実はベガは、アヴァロンが制作したアンドロイドなのです」

「ええっ!」


「造形は、佐々木様をベースに、アヴァロンにいらっしゃる方々に愛されるようどこかしら似た部分を持たせています」


カミーユは思わず声を上げた。

「あんなに普通の人間の子どものように見えるのにですか?」


「はい。ベガはふつうのアンドロイドとは異なります」


リベラは、その特異な設計思想について説明を始めた。

「ベガのコンセプトは、人の子どもの成長を忠実にトレースすることです。膨大な演算能力は、年相応の予測不能な反応や情緒のシミュレートに全振りされています。あえて不完全な子どもの振る舞いをリアルに再現する方が、システム的には遥かに複雑な工程を必要とします」


カミーユが驚くが、リベラは話を続けた。

「ちなみに、ベガを制作できたのにはゼウスさんが大きく関わっています」


「ゼウスさんって、エンジンだけじゃなくて、アンドロイドにも精通しているんですか?」

「いいえ。知識の話ではなく、ゼウスさんは『完全義体』の人間なのです」


「はい? 完全義体って有機組織がまったくないって事ですよね?⋯それって、『人間』なんですか?」

そういった後、カミーユは深い思案に沈んだ。


やがて、ある技術に関する記憶を掘り起こした。

「もしかして⋯『ゴースト・スキャン』ですか?」


「さすがです。やはりご存知でしたか」


「ええっ!」

自分で正解を当てておきながら、カミーユは驚いた。


脳の情報を完全にデータ化する『ゴースト・スキャン』。

カミーユは理論だけのエセ科学だと思っていた。


「本当に、そんなことが可能なんですか?」


「ええ。ちなみにカミーユさんは、もう1人のゴースト・スキャンを受けた人物にすでに会っています」


「⋯リベラさんか、ゼロさんですか?」

「いいえ。私たちは別の秘密を持つAIアンドロイドです」


「別の秘密?、それは一旦おいておくとして⋯ギルバートさん?」


カミーユの回答に、今度はリベラが興味深そうに質問を返した。

「…なぜ、そう思われたのです?」


「ギルバートさんやゼウスさんの顔や体って、どこか『整いすぎている』気がしていたんですよね。左右対称というか、モデルみたいというか⋯」


「なるほど。そういう見分け方があるのですね」


エレベーターが最深部に到達し、重厚な扉が静かに左右へ分かれた。


その先に待っていたのは、アヴァロンの全機能を支える、大型の機械だった。

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