228.光の制御
「⋯それにしても」
カミーユがふと、何かに気づいたように顎に手を当てた。
「あれだけの高出力レーザーを放出すると、その反作用で要塞自体が流されてしまいませんか?」
自分でそう質問した後、カミーユは急に悩みだした。
しばらくして、パッと顔が明るくなり再び話しはじめた。
「ああ、それで『移動機能』が必要なんですね。アードさんがこぼしていたグチの意味が、ようやく繋がりました」
その言葉を聞いたオリーヴは、驚いたようにリベラの顔を見た。
80歳の天才技術者は、レーザー砲を見ただけで、構造上の矛盾と解決策を瞬時に結びつけたカミーユに、感銘を隠せない様子だった。
⋯
リベラたちは続いて、アヴァロンの移動をコントロールする「スラスターエンジン」を見に行く事になった。
エレベーターに乗り込み、地上から上空へ大きくせり出した、巨大な塔を上昇した。
最上階の展望ロビーには、アヴァロンのエンジンを担当する技術者ゼウスと、彼のAIアンドロイドのゼロが話し合っていた。
リベラが2人を紹介すると、ゼロは丁寧な一礼で応えた。
「皆様、こんにちは。カミーユさん、アイリスさん、はじめまして」
窓の外は、地平線のように広がるアヴァロンの地表面と、宇宙の深淵が同時に広がっていた。
「アレが、アヴァロンを支えるスラスターエンジンの1つです」
リベラが指さした先に、稼働中の巨大なスラスターが青白い炎をあげていた。
そのスケールに圧倒されるカミーユたちに、ゼロはエンジンの説明をした。
ゼロが指先を動かすと、空中に精密なホログラムが展開された。
「アヴァロンのスラスターは大きく分けて3種類あります。まず、今見ていただいている大型スラスター。これは地表面に100基あり、主に加速や減速、大きな姿勢変更に用いられます。次に、300基の中型スラスター。これらは姿勢制御や進行方向の微調整を担います。最後に、各所に分散配置された500機の小型スラスター。これが絶え間なく微調整と安定化を行うことで、振動やわずかなズレを抑え込んでいます」
ゼロがホログラムを回転させると、球体に近いアヴァロンの全方位を覆うように、大中小の無数の光点が緻密に配置されているのが見て取れた。
「ご覧の通り、エンジンを全方位に配置することで、アヴァロンはどの方向へも即座に、かつ自由なスライド移動や回転が可能です。これらを統合制御することで、精密な運動が可能となるのです」
「なるほど⋯」
カミーユはホログラムを冷静に見つめ、ふと疑問を口にした。
「ちなみに、エイドスのステーションにはスラスターエンジンの実装はしないのですか?」
「姿勢制御や安定化のために中型と小型スラスターは設置予定です」
ゼロがカミーユの質問に淀みなく答えた。
「現在実施中のメンテナンスが終了後、私とゼウス様が直接エイドスへうかがい、設置を行う予定です」
「なるほど。それはそれは、よろしくお願いします」
カミーユはゼウスとゼロに向かって、落ち着いた所作で頭を下げた。
カミーユはそこで疑問を提示した。
「高出力のレーザー砲に、大型スラスターエンジンなんて、かなりのエネルギーを必要としそうですが、どうやってそれをまかなっているのですか?」
「では、最後にエネルギー炉を見に行きましょう」




