223.静かなる守護者
スターゲイザーのラウンジでは、カミーユが興味深げに窓の外を眺めながら、隣に立つリベラに問いかけていた。
「これから向かうアヴァロンって、あの記者会見で見せてくれた宇宙ステーションのような形をしているんですよね?」
「ええ。形だけはそうですね」
リベラは穏やかに頷いた。
「ああ、アードさんでしたっけ? あのおじいちゃんが言ってた攻撃機能と移動機能があるんでしたっけ?」
「はい。でも、その機能自体は元となったアヴァロン要塞にもあったんです。当時はそこまで性能が良くなかったのですが⋯」
「へー。現代の技術でそれをカバーしたんですか?」
カミーユの素朴な疑問に、リベラは間を置いて、語りだした。
「いえ。今のアヴァロンにはアードさんを含め、昔のアヴァロンに関与した3人の方が参加しています。その方々は、陥落後もずっと研究を続けていました。自分たちがもっとしっかりしていれば、違う世界線があったのではないかと⋯」
「後悔が人を突き動かす⋯ですか」
カミーユは納得したように頷いたが、すぐに首を傾げた。
「でも、それなら新しいステーションは危険じゃないんですか?」
そう言われ、リベラは船の外を指さした。
これまで気が付かなかったが、よく見ると、スターゲイザーに並走する小型の艦艇が数隻いた。
「えっ、なんですかアレ?」
「アレは特攻船です。⋯少し違う話をしましょう」
そう言ってリベラはモニターに宇宙船の運行ルートを表示した。
「現在のルートは交易路を使っておらずアヴァロンへ直線的に向かっています」
「それってあぶないんじゃないですか?」
「はい。交易路を外れると宇宙海賊に狙われる可能性が上がります。⋯実際、今も所属不明の4隻の船が近づいてますね。⋯通信が入りました」
リベラが通信チャンネルを開くと、メインモニターに『SOUND ONLY』の文字が表示され、雑音混じりの荒々しい音声がスピーカーから溢れ出した。
『おい! おまえら船を止めろ! さもないと撃ち落とすぞ!』
カミーユはその剣幕に震え上がった。
しかし、リベラは落ち着き払っていた。
「カミーユさんの考える危険が、向こうからやってきましたね」
リベラがそう口にして窓の外を見た。
すると、並走していた特攻船のうち、4隻が前方に向かって加速した。
数秒後。
音のない小さな発光が前方の4箇所で立て続けに起こった。
船は少し減速しながら前方に進んだ。
しばらくすると、窓の外には船の残骸か漂ってきた。
これが、先ほどの「発光」の結果だった。
「私たちは資源探査と回収を長年続けてきました。これまでもこのような危険につきまとわれ、それを長年排除してきました。星間警備会社が安定稼働するまでの間はこの特攻船を運用する予定です」
リベラの説明を聞き、カミーユもようやく安堵のため息をついた。
「なるほど⋯。これなら安心ですね」
残りの特攻船がスターゲイザーの傍らで沈黙を守りながら並走していた。




