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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第33章:支配者の交代と王子の帰還

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217.優しき英断

ここ数日、カミーユはずっと何かに悩み、沈んだ表情を見せていた。


しかしとうとう、意を決したように佐々木とリベラに切り出した。


「佐々木さん、リベラさん。お2人には、打ち明けておきたいことがあります。⋯実は私、バロウズさんの持っていた10億クレジットを隠したんです」


カミーユにとって、それは自身の進退をも賭けた決死の告白だった。


だが、それを聞いた佐々木とリベラは、驚く素振りも見せなかった。

「でしょうね。忽然と消えた金の行方を調べれば、あなたに辿り着くのは時間の問題でした」


リベラが淡々とした口調で応じる。

だが、セリフはカミーユへの追及ではなく、生存戦略に対する肯定意見だった。


「ですが、私たちもそれ以上に、バロウズさんたちの破綻のほうが早いと想定していました。泥舟が沈む前に、あなたが自分の第二の人生のために資金を確保した。それは、あなたがこの絶望的な状況下で下した、唯一冷静で正しい『英断』だと思っていましたよ」


「えっ?⋯私が、自分だけ助かるために資金を奪ったと?」


「違うのですか?」


リベラが静かに問い返すと、カミーユは弾かれたように激しく首を振った。


「では、なぜ黙って持ち出したのです?」


カミーユは必死に言葉を絞り出した。


「バロウズさんたちは、『あの方』が生きていた頃と同じように無謀な行動を続けていました。ですが、今はあの頃とは違います。現政権にとって、彼らの行動は明確な処罰の対象になる。私は、せめて資金だけでも当局の手から守りたかった。だから、あえて、隠したんです」


「没収を防ぐために、独断で保護した、と?」

佐々木の問いに、カミーユは切実な表情でうなずいた。


「はい。もしもの時の保釈金の足しや、彼らの再起のための資金になればと⋯。ですが、いざ隠してみると、今度はいつ言えばいいのか完全にタイミングを逃してしまって。お2人にすら話せないまま、今日まで来てしまいました」


リベラはカミーユをじっと観察し、やがて静かに話しだした。

「そうでしたか。それでは早急に、バロウズさんたちに事情を説明して、返金したほうがいいかもしれませんね」


「そう、ですね。そうすることにします」

カミーユの肩から、ようやく少しだけ荷が降りたようだった。



3人は連れ立って、バロウズのもとへと向かった。

扉が開いた瞬間、カミーユの姿を認めたバロウズの目が険しく光り、反射的に掴みかかろうと腕を伸ばした。


だが、バロウズは途中でその手をピタリと止めた。


「お前が自分からココへ来るということは、何か聞いた方がいい話があるんだな」


バロウズは荒い息を吐きながらも、まずは話を聞く姿勢を見せた。

カミーユは震える声で、10億クレジットを独断で隠し持っていた経緯をすべて打ち明けた。


話を終えたカミーユは、バロウズの激しい怒りや暴力を覚悟して、ギュッと目を閉じ体を強張らせた。


しかし、静まり返った部屋に響いたのは、怒声ではなく重苦しい嗚咽だった。


バロウズは顔を覆い、肩を震わせて泣いていた。


娘ほども年の離れたカミーユに、自分たちの不甲斐なさを案じられ、密かに守られていた。

その事実に打ちのめされ、彼は絞り出すような声で謝罪を口にした。


「すまねぇ⋯カミーユ、本当にすまねぇ⋯。俺たちが情けないばかりに、お前にそんな重荷を背負わせて⋯」


カミーユがバロウズたちをも助けようとしたのは、今は亡き「あの方」が大切にしていた仲間を、自分があの方に代わって守り抜こうとしたからだった。


彼女の深い慈しみと優しさを理解したバロウズは、彼女の手を固く握りしめ、2人は和解した。



帰り道、リベラの端末にグレイソンから連絡が入った。


「朗報だ。バロウズの事務所へのガサ入れは、中止になった。それとサラとエマの件だが⋯例の50億クレジットの返金が不要なら、すべての容疑を不問にできそうだ。どうする?」


提案を聞いた佐々木は、迷わなかった。

「ええ、それでお願いします」


金よりも、この平穏な結末こそが今の佐々木にとって何よりの報酬だった。

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