216.なぞの通信
翌日。
佐々木はリベラは、かつてエマの店で働いていた2人の潜伏先へと向かった。
道中、佐々木はふと足を止め、空を見上げて零した。
「ねぇリベラ。正直、そろそろアヴァロンが恋しくなってきたんだけど」
「そうですね。今回、エデンから来た人物の情報を入手できたとしても、一度アヴァロンへ帰還することにしましょう」
リベラは、佐々木の心に寄り添うように答えた。
「たぶん、ギルバートも同じ気持ちだと思うんだ。そろそろ限界なんじゃないかな?」
「アヴァロン商事としての交代要員をこちらへ呼び寄せる手配をいたします」
「交代要員? 」
リベラは、その名は明かさなかった。
⋯
バロウズから指定された住所の近くまで来ると、不意にカップルが近寄ってきた。
「あの⋯。佐々木さんですね?」
2人はバロウズの懸賞金情報を聞きつけた人たちだった。
あの家から写真の男が出てくるのを見たのだという。
情報を得た佐々木は、謝礼としてその場で彼らの端末に5万クレジットを送金した。
「ありがとうございます」
そう言って、この場を離れていく2人は楽しげだった。
⋯
目的の家のベルを鳴らすと、扉が開いた。
そこには無精髭を蓄え、酷く疲れ切った顔の男が立っていた。
「⋯ん? 誰だ、あんたたちは」
男は佐々木たちの顔を覚えていないようだった。
だが、奥から現れた女は、佐々木とリベラの姿を見るなり、声を上げた。
「お久しぶりです。エマさんとサラさんの件で、お聞きしたいことがあります」
逃げ場がないことを悟ったのか、2人は肩を落として佐々木たちを家の中へと招き入れた。
家の中で語られた真実は、予想通りのものだった。
臓器の移植手術は、2人が独断で行ったこと。
そして執刀したのは、エマの元恋人である医師、ケビンだった。
彼もまた、金に目が眩んで倫理を捨てていた。
一通り話を聞き終えたリベラが、佐々木に向き直った。
「佐々木様、彼らの罪をどう扱われますか? あと数日もすればサラさんのアリバイは立証され、犯人不明のまま問題は御蔵入りになる可能性が高いでしょう。あえて彼らを訴え、事を荒立てる必要もないかと思われます」
罪を覚悟していた2人は、その言葉にすがりつくような視線を佐々木に向けた。
「う、うん。じゃぁ黙っていようか」
よろこぶ2人に、リベラが追加で話をした。
「その代わりと言っては何ですが、お店の顧客情報を教えてください」
リベラは恩を着せる形で2人から情報を聞き出す事ができた。
ホテルに戻り、リベラがその人物について検索を開始した。
その瞬間、リベラは端末を通じ、「何か」が外部へ送信された気配を敏感に察知した。
その日の夜。
滞在先のリベラの端末に、発信元不明の通信が入った。
それは遠距離からの、ノイズまみれの音声だった。
『⋯あなたは、だれ?』




