213.政治の領分
ここまでの33章のあらすじ
登場人物:佐々木(31歳、男性)、リベラ(AI、女性)、サラ(29歳、外科医、女性)、アイリス(22歳、ハッカー、女性)、ギルバート(30代、商人、男性)、グレイソン(50代、元市議会議員、男性)、バロウズ(50代、裏の顔役、男性)、カミーユ(30歳、後方支援者、女性)、先生(40代、裏社会の教育係、男性)
『先生』による裏社会の教育が始まり、ギルバートも組織の違法行為の浄化を断行する。リベラの案で警察のガサ入れを延期させ、バロウズの『シノギの合法化』を計画。一方、サラは50億もの供託金に驚愕しつつも、元職場と決別し佐々木の仲間として歩む決意を固める。さらに佐々木の元には美人で優秀なカミーユが合流。リベラはエイドスをハブステーション化する「第2アヴァロン計画」を立案。元議員のグレイソンを抱き込み、政治工作を開始した。
「なら、この星にアヴァロン商事が店を出そう」
「ん? そりゃ最近セレノグラフィアで勢いのある商社の名だな」
「流石だな、よく最新情報をおさえている。俺はその商社の大番頭のギルバート。で、コッチが社長の佐々木だ。ちなみにコレが2つ目のお願いだ」
グレイソンは驚愕し、改めて佐々木を凝視した。
「あの医者の供託金の額については聞いている。お前らが腐るほど金を持っているのもわかった。その計画が実現可能であることも理解した」
今のグレイソンにはこれまでのどこかだらしない雰囲気はなかった。
「その上で、こんな辺鄙な星に店を出してお前たちにどんなメリットがある? ワシは腐っても、落選しても、この星の『あの方』に育てられた政治家だ。この星が食い物にされるような事には加担せんぞ!」
「いいねぇ。アンタ、見かけよりもいい男だな!」
ギルバートの言葉に、グレイソンは「見た目は余計だ!」と怒るが、その目は真剣だった。
「メリットは俺たちの3つ目のお願いを聞けばわかる」
「では私から」とリベラが引き継ぎ、『ハブステーション計画』を説明した。
「おもしろいな。何も産業がないこの場所が、逆に倉庫として使えるというのもうなずける。しかし、その要塞を建設する資材や作業員はどこから連れてくるんだ?」
「資材はわれわれが持っています。ほとんどの作業はロボットが実施する予定です。おそらくは半年程度で完成するかと」
「ふん! バカを言え。要塞なんてものの構築には何十年もかかったハズだろう」
「グレイソンさん。私たちがこれからエイドスで建設しようとしている要塞は、『2つ目』なのです。私たちは既にこれと同型の要塞を一度完成させています」
リベラはデスクの中央のホログラムで、アヴァロン構築のタイムラプス映像を見せた。
中心核が出来たあと、上下に軸が組み上がり、赤道線から上下に輪切りの骨組みができ、あっという間に球形の要塞が出来上がっていく。
端に表示される終了までにかかった日数は、わずか「205日」だった。
「信じられん⋯。一体どれだけの資材とロボットを投入すればこんなことができるんだ?」
「そりゃ、信じられん量に決まってるさ」
ギルバートは愉快そうに笑った。
「なるほどな。これがアヴァロン商事と名付けた理由でもあるのか。いけるぞ。コレは政治の仕事じゃないか」
グレイソンはブツブツ言いながら、ひとり思案にふけった。
急に正面を向くグレイソン、急に顔を上げ、佐々木たちの方を見た。
「いいだろう。私のコネクションを使って最短距離で問題を解決しようじゃないか」
グレイソンから連絡があったのは翌朝だった。




