211.逆転の辺境戦略
翌朝。
リビングに現れた佐々木の腕には、カミーユがぴったりと寄り添うようにくっついていた。
「佐々木様。昨日はさみしさは⋯まぎらわせることができたようですね」
「⋯おかげさまで」
佐々木はリベラにすべてを見透かされ、恥ずかしそうに返事を返した。
まんまとリベラの計画にハマる形にはなったが、カミーユとの間に確かな絆が芽生えたのは事実だった。
「ったく、お前は節操がねーな!」
そこへギルバートが、いつも以上にトゲのある口調で絡んできた。
その表情はどこか不機嫌そうで、パンにかじりついていた。
「ご機嫌斜めだね。どうかしたの?」
佐々木が不思議そうに尋ねると、ギルバートは忌々しげに吐き捨てた。
「バロウズのやつら、どうしようもねーな! いっそ捕まった方が社会のためだぜ」
どうやら、バロウズとその部下たちのあまりの素行の悪さに、サジを投げかけているようだった。
「そうなんですよ! 私もそう思います!」
佐々木の腕に掴まっていたカミーユが激しく同意した。
⋯
ギルバートはバロウズの部下の使い道としてカジノ建設の計画を佐々木たちに説明した。
「だが、カジノ建設だけでは産業としては小さすぎる。もっと大きな事業を立ち上げる必要があるな」
腕を組んで唸るギルバートに、カミーユが分析を加えた。
「そうですねぇ、ココって周辺の惑星からはどことも同じぐらいの距離離れていますからねぇ。たとえば、ハブステーションとして中継所となるならいいかもしれませんが、わざわざココをハブとする必要もないですからねぇ」
「ハブか⋯。まてよ、リベラ。あの計画、ココでやるってのはどうだ?」
ギルバートの言葉に、リベラも即座に反応した。
「『第2アヴァロン計画』ですか? なるほど。それはたしかに面白そうですね」
どこかで聞いた単語にカミーユが反応した。
「アヴァロンって20年ほど前に落とされた宇宙要塞の名前ですよね? ココに要塞を作るんですか?」
「いや、俺達が今ホームにしているのがアヴァロン要塞なんだ。旧アヴァロンの設計士が、バージョンアップして作り直したんだ」
「へぇ、それはすごいですね⋯。皆さんは要塞にお住まいなんですね」
カミーユがわかっていなさそうだったので、ギルバートは補足した。
「要塞つってもアレだぞ。佐々木の個人持ちだ!」
ふーんと、うなずいていたカミーユが意味を理解した。
「えっ! 要塞を個人持ちですか? というか個人で要塞を持つとか⋯えっ、もしかして何万人もハーレムメンバーがいるからですか?」
佐々木は飲んでいたオレンジジュースを吹き出した。
リベラが淡々と補足する。
「それぐらいの資産はお持ちですが、ハーレムメンバーはカミーユさんを入れて8人しかいません」
「うふふ⋯」
自分がその特別な枠に入ったことに、カミーユは思わず浮かれ、顔をほころばせた。
しかし、すぐに疑問が浮かぶ。
「でも、何の目的で要塞なんか作ったんです?」
「一番は、資源倉庫ですね。私は100年近く、宇宙空間で収集を続け、資源を大量に持っていました。資源の管理は宇宙船を増築していたのですが、仲間のアドバイスで図面を購入し、収集した資源を使い要塞を建築する事にました」
リベラが語る壮大な経緯に、カミーユは目を丸くした。
「ひゃ、100年ですか⋯そっちも気になりますが、『第2アヴァロン計画』でしたっけ? それがこの話にどういう関係があるんですか?」
「現在のアヴァロンの資源貯蔵量が70%を超え、新要塞を制作予定だったのです」
「おいおい、また増えてるじゃねーか!」
「はい。ですのでギルさんにはもっと頑張っていただかないといけません」
リベラが平然と返すと、ギルバートは肩をすくめた。
「しかし、エイドスをハブステーションにするってのはなかなか痛快だな。あらくれの仕事もできるだろうし、カジノも潤う。佐々木それで行こうぜ!」
ギルバートの提案に笑顔で佐々木はうなずいた。




