203.招かれざる来訪者
ここまでの33章のあらすじ
登場人物:佐々木(31歳、男性)、リベラ(AI、女性)、サラ(29歳、外科医、女性)、アイリス(22歳、ハッカー、女性)、ギルバート(30代、商人、男性)、グレイソン(50代、元市議会議員、男性)
惑星エイドスに到着した一行だったが、サラが違法な臓器移植の容疑で警備隊に拘束される。リベラとアイリスは極小ドローンで潜入し、サラの無実を確認。佐々木は彼女を救うため、行政管理AIが要求した法外な供託金50億クレジットを迷わず支払い、サラを救出した。リベラの調査で、収賄で逮捕された元議員グレイソンの虚偽供述が事件の端緒だと判明。佐々木たちは彼を保釈し、真犯人が別にいる可能性を突き止めた。その裏で、一行が不在のホテルを武装集団が襲撃するが、留守を預かるアイリスが迎撃した。
リベラはアイリスのロボットから送られた男たちの顔画像を警察署のデータベースに侵入し検索した。
「なるほど。⋯前科のある実行犯グループですね」
リベラは迷うことなくホテルのフロントへ通信を繋いだ。
「ペントハウスを借りている佐々木です。たった今、武装集団による襲撃を受けました。幸い、こちらのボディーガードが全員を取り押さえました。後はおまかせします⋯」
フロント側のパニックに近い通信を一方的に切り、リベラはアイリスへ通信を繋いだ。
「アイリスさん。ホテルスタッフが到着しますので、侵入者の武装を解除し、拘束したまま身柄を引き渡してください」
再び一方的に通信を切ると、リベラは静かに席を立った。
「では、佐々木様。行きましょうか」
「じゃあ、急いでホテルに帰るんだね。サラとアイリスが心配だ!」
「いえ。そちらはアイリスさんが完璧に対応してくれました。あとの事も彼女に任せておいて問題ありません。私たちが今すべきことは、別にあります」
「別に?」
「ええ。この襲撃を送り込んだ方に会いに行きましょう」
リベラは事も無げに言って店を出ると、通りかかったタクシーを止めた。
⋯
タクシーはエイドスの中心地の高層ビルが立ち並ぶ一角にある建物の前に止まった。
タクシーを降りたリベラは、迷いのない足取りで佐々木を誘導するように進んだ。
エントランスを抜けると、どこか威圧的な空気が漂っている。
受付の周りには、スーツを着こなしてはいるが大柄で、隠しきれない殺気を放つ男たちが数人立っていた。
リベラは受付の女性の前に立ち、用件を切り出した。
「社長との面会をお願いします」
受付の女性は、リベラに一瞬気圧されながらも、マニュアル通りに問い返した。
「お約束はありますか?」
「はい。先程ホテルに武装集団の襲撃を受けたものとお伝え頂ければ、すぐにわかると思います」
受付の女性は、不穏な回答に眉をひそめた。
「申し訳ございません。お約束のない方をお通しすることはできま⋯」
断りの言葉を口にしようとしたその時、目の前の電話が鋭く鳴り響いた。
女性はリベラに軽くわびを入れ、受話器を取る。
「はい。! はい、かしこまりました」
顔色を変えて受話器を置くと、彼女は先程までの態度を一変させ、丁寧な仕草で横のエレベーターを指し示した。
「失礼いたしました。あちらのエレベーターにお乗りください」
「ありがとうございます」
リベラは短く答えると、佐々木と共にエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの中で、佐々木はふと既視感を覚え、口を開いた。
「なんだか、ドレッドノートさんの事務所に雰囲気が似てるね」
リベラは微かに微笑むような表情を見せた。
「さすが佐々木様。ここはエイドスの裏の顔であるバロウズさんの事務所です」
佐々木は、むしろ興味深そうにエレベーターの豪華な内装をキョロキョロと見渡していた。




