202.襲撃者への鉄槌
佐々木たちが喫茶店でグレイソンの話を聞いていたその頃。
滞在している高級ホテルのロビーに、大きなバッグを担いだ3人の男たちが現れた。
彼らはフロントからキーカードを受け取ると、エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターにカードをかざすと、指定された宿泊階が表示された。
扉が閉まった瞬間、男の1人が小型端末を操作パネルに押し当てた。
その瞬間、エレベーターの表示階層が最上階に変わった。
1フロアを独占している、佐々木たちが借りたペントハウスだ。
エレベーターの扉が開くと同時に、男たちはバッグから大型の銃を取り出し、漆黒のタクティカルマスクを装着した。
しかし、彼らは知らなかった。
エレベーターを降りたその瞬間から、アイリスが物陰に配置していた昆虫型ロボットによって、その全挙動が筒抜けになっていたことを。
すぐにアイリスがリベラに侵入者を知らせると『排除』の指示が届いた。
客室内で待機していたアイリスは、楽しげに準備をはじめた。
ベッドで眠るサラの耳元に、ノイズキャンセリング装置を設置する。
これで多少の音がしても、サラが起きることはない。
廊下では、男の一人が威嚇のために発煙筒に火を付けた。
スプリンクラーが作動してパニックが起きる、⋯はずが、何も起こらない。
代わりに、廊下の照明がブレーカーを落としたように一斉に消え、完全な闇が訪れた。
直後、発煙筒を掲げていた男のそばで「ドスッ」という重い音が響いた。
短いうめき声とともに、発煙筒の火が床に落ちて消える。
生き残った男たちは即座に暗視ゴーグルを起動した。
緑色の視界の中で彼らが見たのは、倒れた仲間を物色している、身長1メートルほどのロボットだった。
カチッ、と安全装置を外す音を鳴らした。
ロボットは男たちの方を見たかと思うと、高速で物陰へと消えた。
残った男の1人がロボットに近づこうと移動した瞬間、壁際から何かが飛来し、胸部を直撃した。
うめき声とともに男が崩れ落ちる。
しかし、最後の男は何が起こったのかを理解した。
エレベーター付近の壁にいる小型ドローンが、ゴム弾を放ったのだ。
「この野郎!」
最後の男が壁に向けて銃を乱射し、小型ドローンを破壊した。
その瞬間、客室の奥から「あー!」という、叫び声が響いた。
⋯
ドローンとの通信が途絶した瞬間に、アイリスは大声を出してしまった。
「アイツ……絶対に許さない!」
佐々木たちの荷物が置かれた一角に、大きめのトランクケースがあった。
アイリスがそのトランクケースを見ていると、トランクケースは人型へと変形した。
それはリーナから譲り受けた運搬ロボットだった。
運搬ロボットは、飛び蹴りの姿勢でスイートルームの頑強な扉を粉砕し、廊下へと突き抜けた。
「なっ…!?」
男が飛んできた何かをとっさに身をかわし、銃口を向けようとした。
しかし、飛び出してきた何かは銃の先に一瞬触れた。
その一瞬で、銃身は飴細工のようにへし曲げられ、上を向いていた。
暴発を恐れた男は銃を投げ捨てた。
その瞬間、廊下の照明が一斉に点灯した。
強烈な光を浴びた暗視ゴーグルが男の視界を真っ白に染めた。
「がっ……!」
横から叩き込まれた強烈な一撃が男の意識を深い闇へと沈めた。
静まり返った廊下で、アイリスは満足げに通信を開いた。
「排除完了! 全員捕まえておく」
そう言ってアイリスは通信を切った。




