198.ウソのような話
33章のあらすじ
登場人物:佐々木(31歳、男性)、リベラ(AI、女性)、サラ(29歳、外科医)、アイリス(22歳、ハッカー)、ドレッドノート(40代、顔役)、ギルバート(30代、商人)、リラ(31歳、ギルバートの妻)、リーナ(22歳、ロボット工学者)、ミラ(21歳、アヴァロン商事社長)
惑星エデンから来た人物を追うため、佐々木たちはエイドスへの旅を決意する。護衛探しに寄ったセレノグラフィアで出会ったアイリスは、驚異的なロボット操作技術を持つが、バルガスの残党に弟を人質に取られ密偵を強要されていた。その裏切りを冷静に見抜いたリベラは裏で弟を救出。佐々木は子供たちの莫大な医療費を即座に支払う慈悲を見せた。一行の温かさに心を開いたアイリスは、新たな戦力「ハーレム候補生」として忠誠を誓う。アヴァロン商事の発展を見届けた一行は、期待と少しの騒がしさを乗せ、次なる地エイドスへ向けスターゲイザーを加速させた。
エイドスへと向かう『スターゲイザー』のラウンジで、サラがリベラにたずねた。
「ねえ、あのドレッドノートって人、何者なの? すごく怖そうな人だったけど⋯」
「ああ、彼はセレノグラフィアの裏の顔役です」
リベラが淡々と答えると、事の大きさを分かっていなかったサラは「ええっ!」と思わず声を上げた。
「昔のセレノグラフィアは、今よりもずっと酷い場所でした」
リベラの言葉に、隣にいたアイリスも過去を思い出したのか「うんうん」と深くうなずいている。
「以前はバルガスという強欲な顔役が支配していましたが、佐々木様が退治され、ドレッドノートさんを後釜にしました」
「いや、倒してないし、後釜とか、そんな権限もないよ⋯」
佐々木が苦笑いしながら茶々を入れるが、リベラは続けた。
「当時のセレノグラフィアはボレアス・ダイナミクス、ネクサス・システムズ、ゼニス重工の3社が幅を利かせていました。裏ではネクサスと繋がるバルガスが地上を、ボレアスの私設軍隊が宇宙を占拠していました」
「ちなみに、ボレアスの私設軍隊はアヴァロンのレーザー砲で壊滅させました。さらに逃げ延びた残党を追跡し、その本拠地は佐々木様がこっぱみじんにしました」
「レーザー砲で壊滅って⋯それは流石に言い過ぎでしょ?」
サラは半信半疑で目を丸くするが、その途中で首を傾げた。
「ねぇ、ネクサスって、あの豪華客船を就航させた企業よね? それにしては、佐々木さんたちと随分仲が良さそうに見えたけど⋯」
「それは、以前のギルバートさんであるギルさんが株式を買い占め、会社を丸ごと乗っ取ったからですね」
リベラが事も無げに答える。
「今そこで働いているのは、ギルさんの優秀な部下たちです。経営陣ごと刷新されました」
「ええっ、乗っ取ったの!?」
サラは驚愕して身を乗り出した。
「でも⋯それにしては、ギルバートさんをそんなにうやまってなかった気がするんだけど⋯」
「ギルバートさんとギルさんが同一人物であるという情報は、伏せていますから」
リベラはふたたび、平然と告げる。
サラは「なんで?」と当然の疑問をぶつけた。
「また、処されるかもしれないじゃないですか」
「処されるって⋯そんな物騒な話なの?」
「ちなみに、ネクサス株の大暴落も佐々木様の差し金ですが、その話も聞きたいですか?」
「差し金って⋯、リベラの言い方じゃ、なんか僕、悪のオヤダマみたいじゃない?」
サラはリベラの話がどこまで本当なのか、自分をからかっているだけなのかよくわからなくなって来ていた。
「⋯怖くなってきたから、いい」
話を適当に切り上げ、星の海を見て心を落ち着かせることにした。
しかし、サラの平穏はそれほど長くは続かなかった。




