197.不意打ちの宣言
翌朝の朝食時のニュースにはアヴァロン商事の社長が登場していた。
ミラは仕立ての良いパンツスーツを凛々しく着込み、若き社長然とした佇まいで、今回バルガスの残党から救出された孤児たちを全面的に保護することを語っていた。
アヴァロン商事は今や、セレノグラフィアにおいて確固たる地位を築きつつあった。
ギルバートによる市場開拓、ドレッドノートによる裏社会からのサポート、そしてミラの積極的な社会貢献。
この3本の柱がうまく噛み合い、組織は盤石なものとなっていた。
かつて、将来のことで悩み、迷っていたミラの姿をすぐそばで見ていたリーナは、モニター越しに映る彼女の堂々とした姿を、暖かく見つめていた。
出発の準備が進む中、サラはアヴァロンとの交易船に、アイリスから採取した血液検体を積み込んだ。
「エマに調査を依頼しておいたわ。私たちがアヴァロンに帰る頃には、何かわかっているはずよ」
いつもは敵視しているエマをサラは誰よりも信用していた。
そんなサラの言葉に、佐々木は小さく頷いた。
⋯
一方、アイリスはリベラの助言を受けながら、様々なタイプのドローンを潤沢な佐々木の資金を使い購入した。
小型で無音飛行するものや地上を転がり移動するもの、水中を進むものなど。
ドローンの種類は多岐にわたる。
アイリスの操作技術をリベラが補完することで、その情報収集能力はメイリンに匹敵するレベルにまで引き上げられることができた。
さらに、リーナが提供した資材運搬ロボットのテストも行われた。
その無骨なロボットをアイリスが操作すると、ドレッドノート配下の屈強な男2人を相手にしても、対等以上に戦えるだけの実戦能力を示してみせた。
「イケそうですね」
リベラが確信を持って佐々木に告げた。
確実にアイリスは、佐々木の戦力となっていった。
こうして、佐々木、リベラ、サラ、そしてアイリスの4人は、セレノグラフィアを後にした。
次なる目的地、エイドスに向けてスターゲイザーは静かに出港した。
船が加速し、セレノグラフィアが遠ざかっていく。
アイリスは星の世界に感動し、窓から宇宙空間をずっと眺めていた。
「旅ははじめて?」
佐々木が隣に立ち、優しく声をかけた。
「⋯まだお父さんとお母さんがいた頃は、色んなところに連れて行ってもらった。でも、宇宙へ出たのはコレが初めて」
アイリスは窓に映る星々の輝きを瞳に反射させながら、ぽつりと言った。
そうか、と佐々木はつぶやいた。
コールドスリープによって100年の時が過ぎ、自分の知る人が誰もいない時間を生きる自分。
境遇は違えど、孤独なアイリスに、佐々木はどこか自分と似たものを感じていた。
「これからは、アイリスをいろんな所へ連れて行ってあげるよ」
佐々木が努めて優しくそう告げると、アイリスは窓から視線を外し、じっと佐々木を見つめた。
「私も、ハーレムメンバーに早くなれるようガンバる!」
佐々木は飲んでいた水を勢いよく吹き出した。
水の玉がキラキラと光りながら、船内をふよふよと漂っていた。




