『EP-00:17』-『決戦の乱入者の正体は』
「真相を知るために潜伏していたのだが……。どうやら、何やら妙なことに巻き込まれたようだな……」
カナサのお蔭で呪縛は解けた。
だが、色々と疑問が残る。
「お前は……」
「何が起こっているのかは分からないが、どうやら保健室で邪魔された時の借りは返すことができそうだな」
見つめる先には、カミシメがいる。
どうやら、保健室で邪魔されたことをまだ根に持っているらしい。
そうとうねちっこい性格をしているな。
「ちっ――!」
カミシメがガムを使って机をぶん投げてくる。
相殺させるための道具はないか。
そして、レンの近くにあったのは消火器だけ。
「時間を、止めるッ――!!」
机と、それからカミシメの時間を止めて、消火器をぶん投げた瞬間。
時の硬直を解く。
消火器と衝突させた机は軌道を変えて堕ちる。
「よしっ!」
その間に距離を取る。
消火器はめちゃくちゃ重かった。
できれば、投擲された机を蹴り上げたかったが、しかし、それでは机についているガムが身体に付着する可能性もある。
一度絡みとられたらなかなかとれないのは、経験済みだ。
「どうして、ここに――!?」
「それはこちらの台詞だ。この状況、どうなっているかは把握できないが、何者かに学校を占拠されたのか? 私にも樹の根が絡み付いてきそうだったから焦ったぞ」
「お前は、操られていないのか?」
「私は水を使った『瞬間移動』があるから何とか逃れることができた。……他の連中は違うようだがな」
見たところ、カナサは無傷だ。
樹の根も見えない。
「お前、奴の友人なんだろ? こいつの『特異魔法』の弱点とかはないのか?」
「……分からない。あいつの『特異魔法』はガムを操るってことぐらいしか……」
「ふん、そんなことでよく友人と言えるな……」
二挺の拳銃を乱射する。
だが、
「銃弾が通らない……。より粘度のあるガムか……」
銃弾は全てカミシメの前で停止している。
その全てをガムの盾で防いでいるのだ。
「ガムを幾重にも巡らせれば、あんたの銃弾は俺に届かない」
グラウンドのように野外ならば、ガムの死角を生まれやすいし、こちらも逃げやすい。
だが、この狭い廊下では、あちらが圧倒的に有利。
だからこそ、ここまで引き寄せたのか。
「くそっ、ここじゃあいつの独壇場だ!」
カナサは身を翻す。
だが、カミシメがそれを許すわけもない。
「逃がすと思うか?」
ガムが廊下や天井、割れた窓ガラスまで、あらゆるところに張り巡らせていく。
「や、ばい――っ!!」
視界全ての時間を止める。
まだガムで塞がれていない近くの教室に入ると、机の上に飛び乗る。
時間が動き出すと、カナサもこちらの後に続くように机を足蹴にして、銃弾を発射しまくる。
細く伸びるガムならば、銃弾は通る。
それを正確無比の射撃技術で狙って、なんとかガムの進行を遅らせる。
だが、こんなのいつまで続くか……。
「廊下の蛇口も止められた。くそっ!!」
カナサは懐からペットボトルを取り出すと、床に水をぶちまける。
そこから予備の拳銃を取り出すが、それができるのもあと何回だ。
少量の水たまりならば、ガムで周りを固めてしまえばすぐに使えなくなってしまう。
これじゃあ、ジリ貧だ。
いつまでもこの机の上が安全とも限らない。
今のうちに特攻をかけるしかない。
だが、
「待て!」
隣の机に飛び移ろうとしたら、kナサに肩をつかまれる。
「な、何をする!?」
「お前が特攻したところでどうなる? 奴のガムに絡め取られておしまいだ! 役立たずは後ろで私の後方支援でもしていろ!」
「なっ――」
一瞬言葉に詰まる。
カナサは今ただの私怨で動いている。
だが、こちらは違う。
操り人形となってしまったカミシメを助けるためにも、急いで倒してやりたいのだ。
「あ、あんたこそ水がなければ役立たずだろうが!」
「なにぃ。誰のおかげで助かったと思っているんだ!」
「助けてくれなんて頼んでいない! それに、俺はあんたに撃たれたこの左眼のことを忘れてないんだよ!」
『レンさん! 今は口げんかしている場合じゃありません!』
その通り正論なのだが、頭に血が上ってしまった。
反省する間もなく、ガムが足元から忍び寄ってきていた。
「まずい! もう、ガムが机の上に――!」
時間を止める前に、足首にガムが縄みたいに結ばれる。
それを、
「ちっ、どけ!」
銃弾を撃ってガムを弾き、カナサは体当たりしてきた。
「うっ! お前!」
吹き飛ばされ、別の机の上に乗っかって自分は助かった。
だが、自分の身代わりとしてカナサの身体がガムによって拘束されてしまった。
「こののろまが……。『時間停止』したとしてももう遅い……。触れたその瞬間、お前までつかまってしまう」
「ぐっ……」
カナサの身体を這わせるガムは、まるで生き物のように蠢く。
そして、ガムは白い肌を露出させるように、制服を脱がそうとし始める。
胸を強調させるようにして、ガムをゆっくりと這わせる。
「ふん。えっちぃ漫画のようにこのまま縛り上げている方が目の保養にはなるが、あまりいたぶるのは好きな方じゃないんだよ。……正直、俺はどちらかというと縛って欲しい派だ」
げすい顔をさせるカミシメは、趣味に走っているように見える。
「こいつ、本当に操られているんだよな……?」
『た、多分そうです』
そんな冗談を言っている間にも、カナサの縛りは強くなっている。
「ぐあっ」
汗をかきながら、カナサはまだ動ける首元を動かす。
手に持っていた銃を噛んで、そのままそれをこちらに器用にも投げてくる。
「使えっ!」
投げられた銃を中空でキャッチする。
「うおっ!」
しかし、こんなもの渡されても……。
「使えと言われても……どうやって……」
「安全装置は外してあるっ!! 標的の真ん中を狙って引き金を引くだけでいい!!」
ずっしりと重い。
使い方は教わった。
両手で構えてみるが、
「無駄だ!!」
カミシメの叫びと同時に、死角からガムが襲い掛かってきた。
「ぐっ!」
捕まってしまった。
こんな銃を持たされてもどうすればいい。
仮にガムの盾をかいぐぐってカミシメを狙撃できたとしても、下手したら、あいつを殺してしまう。
自分のように強靭な肉体を持っているわけではないのだ。
銃以外でカミシメを救うことはできない。
だが、それと同時にカミシメを殺すかもしれないのだ。
「だめっ、だ。……狙えない……」
躊躇している間に、ガムは腕まで忍び寄ってきた。
腕が――動かない。
「馬鹿が……っ。情に流されやがって――」
「ふん、腕を固定さえすれば俺を撃つことなどできないだろ? これで終わりだ」
カナサやカミシメの言うとおり、もう天井しか狙えない。
だから――
スプリンクラーを撃ちぬく。
ガムで固定されていたからこそ、銃の反動に負けず連射できた。
スプリンクラーが壊れた瞬間、警報と共に水が噴射される。
粘着性のあるガムは、勢いある水によって流される。
それによって、ガムの戒めが解かれる。と同時に、カナサは新たな銃を水面から取り出すことができた。
「天井に備え付けられてあったスプリンクラーを――!? だが、いくら武器が揃ったところで――!!」
「確かに、俺にはなにもできない。だけど、カナサ――お前なら――」
「ああ。よくやった、レン。あとは任せろ」
銃を構えるカナサに対して、ガムで守りを固めようとする。
だが、いくらカミシメがガムを集束しようとするが、うまくいかないようだ。
「ガムが……水のせいで固まらない……そうか、これが狙いかっ……!!」
カナサは銃弾を撃つ。
「くそおおおおおっ――」
粘つくガムを何とか集められたカミシメだったが、最初からカナサは正面からの銃撃を狙っていない。
シャワーのように降り続けるスプリンクラーの水の中を乱反射した銃弾は、カミシメの後ろに回り込む。
「な、なにっ!?」
「お前を縛っているもの、撃ちぬいてみせる」
カミシメの後頭部に銃弾が直撃する。
「ぐあああああああああっ!」
絶叫と共に、鮮血が散る。
そのまま倒れ伏すカミシメは、まるで死んだように動かない。
「カミシメッ!」
カミシメのもとに駆け寄る。
撃たれたところを見ると、銃弾が皮膚を削っていた。
だが、
「これは……根を狙って……」
銃弾は皮膚の表面を抉っているだけで、致命傷ではない。
ただ、脳の中枢に巣食っていた根だけをピンポイントに狙っていたものだ。
これを狙ってやったのか。
カミシメの口元に手をやるが、ちゃんと息もしている。
感謝の念を込めてカナサに何か言おうとするが、こちらの言葉など聴きたくもないといった顔で先に口出しされる。
「そこの趣味の悪い貴様の友人から、聞き出したいことが山ほどある。――それだけだ」
そういう言い方しかできないこいつはなんだか不憫だった。
「うっ……」
と――。
カミシメがうめき声を上げる。
「おい、カミシメ。大丈夫か? 俺が分かるか……?」
「レ、レン……?」
「……良かった」
『大丈夫、みたいですね』
命に別状はないようだが、まだ安静にしておいた方がいいだろう。
だが、カナサはそんな暇を与えない。
「おい、お前。早速で悪いが状況は把握できているか?」
「あっ! あんた、保健室で会った美脚の人!? なんであんたがここに?」
お……思ったよりも元気そうだ。
「お前はあの時私のどこを見ていたんだ……。だが、どうやら操られていた時のことは憶えていないようだな」
ん? とカミシメは眉をひそめる。
「操られて……?」
「あー、カミシメ。実はさっきまでお前は――」
「操られていたことは、おぼろげながら憶えているよ」
「えっ?」
カミシメは記憶をたどるために、頭に手を当てる。
「誰かと……戦ってた気がする。いつも感じる恐怖感が常に増幅されているような気がして、あまり物事を考えたくなかったって記憶はある……」
「いつも……?」
「ああ、不安なんだ。いつも、いつも。三次元に生きているだけで息苦しい。俺って空想のことしか興味なくて、言動がおかしいから周りからいつも奇異の目で見られることが多いんだよなあ。それが嫌で、また二次元、一次元に逃げ込むんだ。だけど、どこまで逃げても逃げ切れない。その恐怖感が何百倍にも凝縮された感じだった……」
カミシメはちゃんと周りを見ている。
見ているけれど、
「だったら、もっと逃げればいい」
自分自身は見えていない。
だから、カミシメのことをちゃんと見えている自分に何かアドバイスはできないだろうか。
「えっ……? なんだよ。てっきり、他の連中みたいに、現実から逃げるなとか説教垂れるかと思ったんだけどな……」
「現実は戦う場所じゃない。適当に折り合いをつける場所だろ。誰だって大なり小なり逃げている。お前に説教をした奴だって、『現実から逃げないといけない人間がこの世にいる』っていう現実から逃げてるだろ? 目を逸らしているだろ? 自分が常に正しいって思いこんでいるだろ? 根本的に、人間の思考回路っていうのは大差がつかないもんなんだ」
草木は華やかなものや、腐っているものいくらでも種類はある。
だが、その根っこの部分は、そこまで変わらない。
それとおんなじだ。
「一次元が好きとかいうなら、それを生かせばいいんだよ。例えば、漫画とか小説とか自分の妄想を書いてみるとか」
「は、はあ? そんなことできるわけないだろ」
「例えばの話だ。だって、そういう妄想や空想や理想を詰め込んだのが漫画や小説だろ? 誰かが物語に共感したり憧れるから、空想の産物が生まれる。一次元や二次元が三次元に必要だから、そういうものが生まれる。お前のその空想が誰かの糧になるかもしれないんだ。お前を必要としてくれる人間が、もしかしたらもっと増えるかもしれない」
「俺の空想なんてくだらないって。他人に必要とされるわけないだろ……」
「まあ、確かに睡眠とか食事とかは人間が生きるために必要なものだけど、漫画とか小説って本来生きてい行く上でそこまで必要じゃないはずのものだよな。だけど、ここまで多種多様なものが生まれることは、やっぱり需要はあるんだよ」
「そういうことじゃない! 俺の空想に価値はないってことだよ!」
価値のあるなしをはかるなんてナンセンスだが、敢えて言わせもらう。
「でも、俺は読みたいよ。お前の空想が形になったものが……。だって、それってお前の心の中を知れるってことだから」
カミシメは言葉を詰まらせる。
「…………っ」
「さっきはさ……もっと逃げろって言ったけど、ずっと逃げていて欲しいわけじゃない。そうやって創作活動をして、色んな人に読んでもらって、そして三次元の輪が広がるのもいいなって思うんだ。アプローチの仕方が変でも、そうやってお前が三次元に少しでも関わって欲しいって思う」
「周りと、もっと同調しろってことか?」
「いいや、違う。だって、どんなに生きていくのが息苦しくても、俺達が生きているのはこの三次元だ。一次元でも二次元でもない。この三次元で俺達はこうしている。まあ、こんなお節介なことうぃうのもな、ちょっと変わり者お前に、俺は命を助けてもらった。お前が必要なんだよ。それに俺達は――」
気恥ずかしいが、カミシメだってそう思ってくれているのなら。
自分にだって宣言できるはず。
「親友だからな」
手をさし伸ばす。
まだ尻餅をついている彼を立たせるために。
「だから、たまにでいい。三次元にも目を向けようよ」
「…………」
何かを言おうとするが、首を振る。
そして、カミシメはこちらの手を握ってくれる。
「……他ならぬ親友の頼みだ。きいてやるしかないよな」
手を引っ張って立たせる。
そして、カナサに向き直る。
「俺はいかないといけない場所がある。カナサ、カミシメのことを頼む」
「……何故、私がこいつを?」
ここから離脱しないのは山々だが、無視できない懸念材料がある。
やはり、カミシメの身の安全だ。
「借りを作るって思えばいいだろ。それに、ザナドゥ軍は一般市民を守るのが義務だろ?」
「それは、そうだが……」
「今は操られている人たちが徘徊している。消耗しきったカミシメ一人じゃやられてしまうかもしれない……。頼むよ。あんたがこいつの身の安全を保障してくれないと、俺はこの事件の首謀者を止めることができない……」
もっと事情を話した方が説得しやすい。
だが、時間がない。
マリアがいつ過去を改竄してもおかしくないのだ。
だが、
「――承諾しよう。貴様には借りがある。決して変わらぬ我が誇りにかけて誓おう」
思ったよりも早くは頷いてくれた。
「あっ、ありがとう!」
これで何の憂いもなく助け出すことができる。
『待ってください!』
「……えっ?」
なにか問題でもあるのか?
『今、微かに思い出したんですけど、私……そういえば、気を失う前に見たんです……。レンさんが誰かに助けられるのを……』
「……思い出したのか?」
『は、はい。全てを吸われて意識がほとんどない状態で、あまり見えなかったんですけど、その人はレンさんのお姉さんの動きを止めていましたよね……? そして、そんな芸当ができる『特異魔法』の使い手と言えば……たった一人しか思い浮かばないんですけど……』
テイシアの言いたいことは分かっている。
身体の動きを止められるもの。
それは、細くて見えざるガムのことだろう。
「カミシメ、この事件の首謀者から俺のことを助けてくれたことを憶えているか?」
「なんだ、いきなり? もう一人の自分との対話はもういいのか?」
「いいから、答えてくれ! 真面目な話だ! 俺のことを助けてくれたのはお前か?」
もし、そうならば。
今、テイシアと戦っているのは誰だ。
カミシメが命の恩人ならば、テイシアと今戦っているのは、命の恩人ではないということになる。
戦いは今もきっと続いている。
もしも、テイシアが完全に敗北していたとしたら?
そしたら、樹の檻など存在するはずがない。
もしも、テイシアが完全に勝っていたならば?
それならば、過去を改竄するはず。
今、過去の記憶を覚えている自分達が存在するということは、誰かが今懸命になってテイシアと戦っていることになるのだ。
「…………いや。何のことを言っているのか、全く分からない……」
だが、カミシメはすべての仮説を否定する。
カミシメは命の恩人ではない?
だとしたら、他に命の恩人がいるということになる、のか?
『操られている時の記憶がないから、その時に――?』
いや、とカミシメは首を横に振る。
「操られていた時に記憶はおぼろげで、詳細は思い出すのに時間がかかるだろうが、少なくとも、お前を助けたのなら、誰かを助けたという記憶はあるはず。だが、そんな記憶はない。ただ、その首謀者とやらに『ここで侵入者を待ち構えていろ』、と命令された記憶があって、ずっと待機していた記憶ならある……。首謀者が誰かは憶えていないがな」
「どうして、カミシメが……」
「俺にはガムのネットワークがある。細いガムを樹の全てを張り巡らせれば、どこから、一体何人が侵入してきたか即座に分かるようなネットワークがな。そして侵入者はお前だけだった」
適材適所というわけか。
ネットワークにひっかからなかったのは、最初から樹の檻にいたカナサぐらいのものというわけか。
『どういうことですか? 他にも操られていない人が……?』
「いや、ありえない。カナサが操られていないのは『樹創天蓋』を避けられる『瞬間移動』の『特異魔法』を持っていたから。そして、『樹創天蓋』発動後から、校門の外からの侵入者もいなかった」
『じゃあ、つまり……どういうことなんですか? 助けてくれたのが誰か分からないってことですか?』
「そのことなんだが、実は俺……顔をみたんだ……」
『えっ!? 誰か分からなかったんじゃないんですか?』
「い、意識がはっきりとしなかったんだ! だから見間違いだと思ったんだよ。だって、ありえない光景を見たんだから!」
『誰……なんですか?』
自信がない。
なにせ、現れた人は声を出さなかったのだ。
だが、顔が一番似ていたのは――
「お前だよ、テイシア。二人目のお前だ」
テイシアだった。
『二人目の私……?』
「だって、おかしいだろっ!! 倒れ伏しているお前と別に、またお前がいるなんて!」
『それって……』
テイシアは考え込むように少し黙ると、
『もしかして――時間を――未来から過去へ跳躍したんじゃないですか? 完全なる私の『特異魔法』だったら、それが可能です。そうです! 私達がこうやってここいるのも、未来の自分達がこの時間軸に送り込んだんですよ! 自分達自身を助けるために! それだったら矛盾しないじゃないですか。そしてレンさんの時間を止めて助け――』
「矛盾しているんだよ。だったらなんでお前は俺の中にいるんだ……」
『……あっ』
「だからお前が俺の中にいた時に驚いたんだ。きっとあれは見間違いだったんだよ……」
一番現れて欲しかったから、幻覚を見たのかもしれない。
だが、誰なのか見当もつかない。
……待てよ。
「いや、見間違いじゃなかったとしたら……? 見間違いじゃなかったとしたら、二人目のテイシアがいたとしたらそれは……」
二人目のテイシアはいない。
ありえない。
だが、見たのは二人目のテイシアだった。
この禅問答のようなものに、答えがあるとすれば……。
『どうしたんですか? レンさん』
「わかったぞ、レイシア。――全てが分かった」
あの時のことをなるべく正確に思い出す必要がある。
そのための準備が大切だ。
そして、そのためには自分以外の『特異魔法』の助けが不可欠だ。
『ど、どうするんですか?』
「ああ、なんてことはない。とりあえず――」
「過去に飛ぼうか」




