2 俺がダンジョンに行くのか?才能ないのに?
金を稼ぐ手段……一番手っ取り早いのは、やはり冒険者になってダンジョンに潜り、モンスターの素材や財宝を売ることだろう。
学生であっても、入門用のダンジョンや、普通のダンジョンの浅い階層なら潜ることが許されている。
そう、俺はまだ学生だ。
来年には卒業という年だが、今はここ『王立グランアステリア学園』の生徒。ちなみに、由緒正しき格式ある名門学園だったりする。
一般市民から貴族までが通うこの場所に、よく俺みたいなのが入学できたものだと思う。
理由は単純。
前世の記憶のおかげで、数学はほぼ無勉でなんとかなったからだ。
歴史や言語学も、覚えることは多かったけれど、地頭がよかったのか、なんだかんだ上手くいって合格できた。
魔法は使えないが、やっぱりファンタジー世界への興味は人一倍あったから、関連する本もたくさん読んだ。
一応、モンスターが魔法を使ってくることもあるため、魔法を使えない者でも知識を入れておくことは推奨されている。
もっとも、今となっちゃ学力も学園内で真ん中くらい。
子供のうちは前世パワーで『神童』ともてはやされたが、十五を過ぎれば……なんとやら、というやつだ。
「カイト、ねえカイトったら!」
横に座っている赤髪の女、フラムが声をかけてきた。
こっちはゲーム制作の構想で忙しいっていうのに、いったい何の用だよ。
「あんた、午後のダンジョン研修どうすんの? ペア、いないでしょ?」
ダンジョン研修……? そんなのあったっけ。
「何よ、自分には関係ありませんって顔して。選んだ学科に関係なく、全員『必履修科目』でしょ!」
あろうことかこの世界、一番人気の職業は、死と隣り合わせの冒険者なのだ。
だから、どこの学園もこうして生徒を無理やりダンジョンに潜らせようとする。
まったく遺憾である。
「ソウイエバ、ソンナノアッタネー」
棒読みで答える。
非常に行きたくない、本当に行きたくないぞ。
危ないのは真っ平ごめんだ。
だが、行かなければ今度は反省文じゃ済まされない。最悪、単位を落として卒業できなくなる可能性だってある。
「どうせカイト、ぼっちでしょ。あたしがペア組んであげよっか?」
む。それは非常に魅力的な提案だ。
フラムは魔法使いとして優秀だ。
こいつと組めば、楽にダンジョンを踏破できるだろう。
だが、そうなると俺が前衛をやるのか?剣の才能なんてこれっぽっちもない、ちょっと手先が器用なだけの俺が?
それに、お返しに何を要求されるかも怖すぎる……。
「何よ。そんなに考え込んで、あたしの実力じゃ不満だって言うの?」
フラムがジト目でこちらを睨んでくる。
「いや、実力に関しては文句なしだ。むしろこちらからお願いしたいくらいだよ」
俺は即答した。
「ふーん。じゃあいいじゃない。さあ、行くわよ」
まあ、いいか。
彼女の魔法は強力だし、所詮は学園のオリエンテーション用ダンジョンだ。
危険なことはないだろう。
「よし、フラム。改めてよろしく頼む。魔法使いの君に頼むのは心苦しいが……前衛を任せたぞ」
よし、これで完璧だ。俺は完全に安全圏にいられる。
「は?」
フラムの顔が真っ赤に染まった。なんだか小刻みに震えている。体調でも悪いんだろうか。
「あんたっ! 嘘でもいいから『俺に任せろ』とか『絶対守る』とか言えないわけ!?もういいわ、来なさい!」
俺は無理やり引きずられていった。
……絶対、俺より筋力あるだろ。前衛にめちゃくちゃ向いてるじゃないか。これぞ適材適所ってやつだろう。
結局、重い鎧に盾と剣を無理やり装備させられ、俺はフラムと共に研修用ダンジョンへと潜ることになったのだった。
三話目13時更新予定です。
よろしくお願いします。




