1 そうだ、ゲームを作ろう
新作になります。
よろしくお願いします。
こちらはある程度書けているので毎日投稿予定です。
初日は三話連続投稿です。
俺は今、ひどく飢えている。
異世界に転生して、もう十五年も経ってしまった。
チートなんて便利なものはなかったし、そもそも神だの女神だのといった、都合のいい存在に会うことさえなかった。
そりゃあ、はじめのうちはワクワクしたさ。
なんせ、この世界には魔法があって、モンスターがいて、ダンジョンだってあるんだから。
ただ、どうやら俺には魔法の才能なんて、これっぽっちもなかったらしい。
人差し指を上に向けて炎の玉とか出してみたかったし、空も飛んでみたかったさ。
でも、魔法が使えるかどうかは努力や練習でどうにかなるもんじゃないらしく、すべては才能。
それがこの世界の当たり前で、誰もが知っている常識とのことだ。
でも、俺が今さら不満なのは、そんなことじゃないんだ。
俺は我慢できなくなって、天井を仰いで叫んだ。
「娯楽が少なすぎるーーーっ!!!」
「あんた、またバカみたいなこと言ってるの?」
話しかけてきたのは、隣の席のフラム・フォン・フォイアバッハだ。
赤い髪が綺麗で、顔も良くて、おっぱいもデカい!
ついでに下級とはいえ貴族様で、成績も魔法の才能も文句なし。
……くそっ、何一つ勝てるところがない。天は二物も三物も与えすぎだろ……。
「うっせー。娯楽が少ないのは事実だろ」
「娯楽が少ないって言ってもさ。吟遊詩人の歌も旅芸人の劇もあるじゃない。それにあと一年で成人すれば、お酒だって飲めるでしょ」
違う。そうじゃないんだ。
俺がやりたいのは、前世で死ぬほどやり込んだゲームなんだ。どの家庭にも当たり前にあって、テレビにつないで遊ぶ、あのゲームなんだよ。
そもそもこの世界、テレビどころか機械すらまともに発達してないんだけどな。
「あ、わかった。あんたが言ってる娯楽って『キングス』とか、そういうのでしょ?」
キングス。ようはチェスみたいなボードゲームだ。
そう、この異世界にだってテーブルゲームくらいはある。
トランプやカルタに近いカードゲームだって存在する。
俺もそういうのは嫌いじゃない。
けど、やっぱりテレビゲームがしたいんだ。
剣と魔法の冒険がしたい。魔王を倒したい。クエストだって受けたい。
じゃあ、この異世界はどうかって?
そりゃあ、ダンジョンに潜って財宝や名誉を得ること自体はできるさ。
……死と隣り合わせだけどな。
俺がやりたいのは、安全な冒険なんだ。
命のやり取りなんて、もってのほかだ。
ちなみに魔王だって実在はしている。
けど、ゲームに出てくるような「人類よ、すべて死にさらせ」なんて叫ぶ化け物じゃない。
魔族の領地に住んでいる、ただの人に近い存在だ。
「まあ、そういうのも嫌いじゃないけどさ。違うんだよ」
はあ……。
俺は顔に手を当てて、深くため息をついた。
「ほんと、あんたはもう……。そんなに言うなら自分で作ればいいじゃない。広めればいいじゃない」
――!!
確かに、そうだ。
なんで俺は、そんな簡単なことに気づかなかったんだ。
俺はおもむろに立ち上がると、フラムの肩をがしっと掴んだ。
「ちょ、ちょっと……っ」
フラムは少し顔を赤くして何か言っているが、そんなことはどうでもいい。
「そうだな、フラム。確かにその通りだ。娯楽がないなら作ればいい。ゲームがないなら、俺が作ればいいんだ!」
よし。この異世界で、俺がゲームを作って広めてやる。
一般大衆の娯楽として、ゲームという存在を叩き込んでやるぜ。
「助かったよフラム。今、俺はやっと女神に会えた気がする」
俺は彼女の目を見て、真っ向からそう言い切った。
「えっ!? それってどういう……いや、その前に、その……手を離してほしいかな、っていうか……」
フラムはなぜか、もじもじしながら視線を泳がせている。
まあいい。
彼女のおかげで天啓を得たんだ。感謝するぞ。
そうと決まれば、さっそく計画を立てなきゃいけない。
俺は教室を飛び出し、自室へと全力ダッシュを決める。
「えっ、ちょっとカイト! 授業はどうすんのよー!!」
去り際に彼女が何か叫んでいたが、今の俺の耳には届かない。
最高にテンションが上がっていた。
翌日。授業をサボった俺を待っていたのは、山のような反省文だった。
勢いよく教室を飛び出したまではよかった。
だが、そもそもこの世界には機械がないし、どうやってゲームを作るかも不明だ。
おまけに、手元の資金だって豊富にあるわけじゃない。
目的のための第一歩として、まずは金稼ぎ。
それから、この世界の技術でゲーム制作に代用できそうなものを探さないといけない。
「カイトくん、ちゃんと反省していますか? 枚数、増やしますよ」
「してますしてます! だから増やさないで! ああ、ユーナ先生、お願いします、一生のお願いです!」
俺の必死の願いもむなしく、結局、普段の倍近い反省文を書かされる羽目になった。
カイトこと俺の右腕は悲鳴を上げ、もはや腱鞘炎の一歩手前だった。
二話目は11時頃更新です。
よかったら続きを読んでいただけるとうれしいです。




