12 魔導基盤ゲットだぜ
やはり、ゴーレム専門の道具売り場も、さっきの娯楽品コーナーと同じで規模はかなり小さい。
棚の隅のほうに、ひっそりと部品なりパーツなりが並んでいる程度だ。
「あ、これ魔導基盤じゃない。学園にあるのと同じね」
フラムが棚の一角を指さして声をあげた。
「おや、珍しいね。……その制服、王立学園の子たちかい」
カウンターの奥で手入れをしていた店主が、振り向き顔を上げて俺たちに声をかけてきた。
「はい、そうです。このカイトが魔導基盤を見たいって言うんで、寄ってみたんですよ」
フラムが人当たりのいい笑顔で受け答えをする。
「へえ、ゴーレムを専攻する子は少ないからねえ。……よし、彼女さんも可愛いし、買ってくれるなら少し安くしてあげるよ」
店主がニカッと笑いながら、景気のいいことを言ってくる。
「ありがとうございます、助かります」
俺はひとまず店主にお礼を言った。
……それにしても、なぜか行く先々で彼女だと間違われるな。
フラムも訂正すればいいのに、当たり前みたいな顔をして聞き流している。
まあいいか。俺は気を取りなおして、あらためて魔導基盤に目を向ける。
うぐ……。魔導基盤一枚で、銀貨五枚か。
前世の感覚でいうと、だいたい五千円くらい。
買えないこともないが、失敗したときのリスクを考えると、十五歳の身には少し勇気がいる金額だ。
「ふーん。思ったよりするのね。カイトが研修ダンジョンで叩き割ってたのに、クレイマン先生が全然怒ってなかったから、もっと安いのかと思ってたわ」
フラムが横からひょいと覗きこんで、そんなことをつぶやく。
……正直、忘れたかった記憶だ。
やはりあれは、ちゃんと謝っておいたほうがいいんだろうな。今度先生のところへ、頭を下げにいこう。
「そうかい。やっぱり学生さんには高く感じるかねえ。……そうだ、これは全然売れないし、ここにある四枚を全部まとめて買ってくれるなら、特別に銀貨五枚でいいよ」
店主が棚の奥から、埃をかぶった基盤をさらに三枚引っ張りだしてきた。
お、フラム、ナイスつぶやきだ!
一枚の値段で四枚手に入るなら、一枚あたりの単価は一気に四分の一だ。これなら試作で多少失敗しても痛くない。
俺は迷わず、腰の財布へと手を伸ばした。
「はい、買います! 四枚全部買わせてください!」
俺は食い気味に即答した。
「……あはは、そうかい。まいどあり」
あまりの勢いに店主は少し引いていたが、そんなことは気にしない。
魔導基盤四枚で銀貨五枚。
一枚あたり銀貨一枚と大銅貨三枚くらいだ、千円ちょっとだ。これは本当にお買い得だと思う。
俺はすぐさま代金を支払い、魔導基盤を受け取った。そして、ついでに気になっていた『導魔盤』についても聞いてみた。
「あの、導魔盤は置いてないんですか?」
「んー? ああ、そっちか。そっちは置いてないね。使う素材が希少だし、めったに売れないからさ。基本的には注文を受けてから作る『受注生産』なんだよ。だから、どこの店にも置いてないと思うよ」
店主はあっさりとそう教えてくれた。
「そうなんですね。ちなみに……おいくらくらいするんですか?」
「そうだね。俺が知ってるのだと、この前は白金貨三枚でやり取りされてたかな」
……は? 白金貨三枚?
三百万だぞ!? 高い!高すぎる!!
そんなバカ高いものを、授業でさらっと使わせてくれているクレイマン先生、最高すぎるだろ。
もちろん学園の備品なんだろうけど、もし壊しでもしたら……。
俺はさっきの基盤を叩き割った件を思い出し、今度先生に会ったら絶対に、頭を下げにいこうと心に誓った。
俺とフラムは店主にお礼を言ってその場を去り、最後に商業ギルドの総合受付に向かったのだった。
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