7話 サクッと終わらせるのが一番
高本さんは細々とした弾幕を飛ばしてきた。私はそれを切り捨てる。私が、というよりも刀がエイムを合わせている感覚に近かった。
案外軽いんだね、1キロって。いや、それは鞘も含めてだったよね。刀身だけなら700グラムぐらいなんだっけ。
対して私はBPM212のペースでノーツを生み出していく。ロングにトレース、フリック、トリル、AIR……頭で思った攻撃方法が実現できるみたいだ。
高本さんは全てを捌ききれないようで、何回か被弾していた。それでも消耗は少しだけに見えた。どれだけタフなんだ。
「いいですね……面白くなってきましたよ!」
「こっちはそう思えない……」
一応、私の腕と刀は一秒間に32.7連撃くらいはできそうだけど、向こうがどれだけの速さで撃ってくるかが分からない。
「……後ろにあるそれが一番大事なんですか?」
私の背後には巡先輩の115系がある。私はずっとこれに当てないようにしていた。
「まあ、人の所有物なんでね」
「では……これでもぶつけてみましょうか」
高本はバランスボールくらいの大きさの弾幕を生み出した。今までのものとは大きさが全然違う。
「『シャドウ・スバラメント』」
「ここで……ここで Don't you try it!!」
私は刀を下から切り上げた。すると、風がこちらに向かってきていた弾幕を真っ二つにした。
わ~お、これがウィンドカッターなるものかぁ。
「ぐっ……!」
ウィンドカッターは高本さんのオーラも切り裂いた。そのおかげか、圧が若干収まった気がする。
「ま、まだだ……! 必ず……!」
「………」
どうすべきか。今、イヤホンからは青い蝶の曲が流れてきている。それに合わせるのなら斬るべきだ。
でも、高本さんごと斬ってしまわないか……。
「いいや刀を信じる!」
『友達の為なら?』
すぐそばに!
『鉄道のことなら?』
任せとけ!
「マ……『マルディシオ
高本さんが私に手を伸ばしそうとしたその瞬間、二階から何かが落ちてきた。
「うぐっ」
「うおっとと」
高本さんの口から変なうめき声を出した。それ以降、気絶してしまったのか動かなくなった。
「結構長引いてたわね……かなで、何ボケっとしてるのよ」
二階から落ちてきたのは華乃子だった。
「本当に、迷惑をかけて申し訳ない」
「ほら、華乃子……」
「………」
翌日、博物館に連絡を受けた華乃子の父と祖父が護衛を引き連れてやってきた。なにこの光景……。
父に促されても、華乃子は黙ったままそっぽを向いた。昨日のこと、まだ根に持ってるのかな。
「こちら、お詫びの品です」
秘書らしき人から紙袋をもらった。中には菓子や旅館のサービス券、E001形『TRAIN SUITE 四季島』のNゲージが入っていた。ひ、ひょえ~。
「い、いいんですか、こんなに……」
私は声を震わせながら華乃子の祖父に尋ねた。
「少し前にも迷惑をかけていたようだからな……むしろ少ないくらいだ」
「いえいえいえ! これでも十分です! あ、華乃子っ!」
「……何?」
私は冷蔵庫からアップルパイを取り出した。怜太さんが作ったものである。
「私だけじゃ食べ切れないから……あげる」
「…………ありがと」
「あの、それで……刀はどうするんですか?」
「……こちらで処分する。私たちにはもう必要のないものだ」
華乃子の父がそう答えた。そうだよね。私は触ったとはいえ部外者だ。預かれるわけがない。
しばらくして、華乃子たちは博物館から去っていった。それと入れ違うように怜太さんが大学から帰ってきた。
「何あのクラウンの車列」
「えっと、私の友人です」
「そ、そうなのか……。そういや、昨日は何かあったのか? 寝てて気がつかなかったけどよ」
「何にもありませんでしたよ」
「そうか。……115系に何かあったら、巡はめちゃくちゃキレるだろうな」
「ですよね。大切そうにしてたし……」
じゃああの時、弾幕を真っ二つにしておいて正解だった。
その時、ルーミーを預けたディーラーから電話がかかってきた。
「もしもし?」
『バンパーの交換終わりました。いつ頃取りに来られますか?』
「あ、今から向かいます」
……もしかしてルーミーが厄を遠ざけていた? そんなわけないよね。ただの偶然だ……と信じたい。
「ルーミー、修理が終わったそうなので取りに行ってきます」
「おう、気を付けてな」
私は代車のカローラスポーツに乗り込んでエンジンをかけた。
ルーミーを受け取ったら、神社にでも行ってお参りでもしてこよう。




