6話 何か裏がありそうな
「待って待って! 私だから!」
「……華乃子?」
浴衣姿の女は華乃子の声で話し始めた。
博物館の中に招き入れると、本当に華乃子だった。
「はい、これお茶……それでどうしたの?」
「実は……喧嘩しちゃって」
話を聞くと、華乃子は一時間前に父親と『跡継ぎ』の問題で揉めたらしい。
「『さっさと彼氏を見つけろ』だとか『祖父を見習え』だとか……思い出すだけでも嫌になるわ」
「それは大変だね………」
「頭にきたからコレを盗んできたのよ」
と、華乃子はだいたい75センチくらいの日本刀の鞘を机の上に置いた。
「……かっこいい鞘だね」
「かなで……これ、鞘だけじゃないみたい」
「え?」
「持ってみて」
「じゃあ……」
高そうなものなので手袋をはめて鞘を持ってみた。
「……!?」
車のウォーターポンプくらいの重さに感じた。だいたい1キロかな?
いやいやいや、鞘だけでこの重さはおかしいって。確かに鞘には模様が描かれているが、飾りなんて一切ない。
「ね?」
「ま、まさか」
「そう。刀身もあるみたい」
「完全に銃刀法違反~!!」
逆にここに来るまでによく見つからなかったよ……!
「ねえ、かなで。その鞘って抜ける?」
「そんなの怖くてできないよっ!」
「一回だけ、お願い」
………これが実は呪いの刀で、手に持ったら人を斬りたくなる、なんてことになりませんように!
私はゆっくりと鞘を引き抜くと、中から銀色に輝く刀身が出てきた。RZ34のルーフフィニッシャーみたいにきれいだった。
これを持った華乃子は本当に美しいお嬢さんになる……。
「嘘……!?」
そんな華乃子は鞘を引き抜いた私を見て驚いていた。
「私じゃびくともしなかったのに……!」
「………え?」
私、本当に何かやっちゃったみたいだ。
一旦鞘を戻し、華乃子へ渡した。
「見てて……んっ!」
一分経っても鞘は抜けなかった。
「……っはぁ!! ほら、抜けないでしょ?」
「なんでだろう……あ、もしかして『選ばれし人物』じゃないから?」
「そうだとしたら、かなでが『選ばれし人物』になるわよ?」
そういうのって同じ家系の人しか……みたいな感じじゃなかったっけ?
「……なんか面倒そう。誰かに追いかけられたりしそうで怖い」
コンコンコン。
「すみません」
玄関から男の声がした。聞いたことある声……C12形の時に聞いたような。
「まさか、透明……かなで、上手くはぐらかして」
「えっ!?」
そう言うと華乃子は階段を駆け上った。
「誰かいませんか?」
「は、は~い」
ドアを開けて大丈夫かな……。『ドアを開けなさい』とか言われる前に開けてしまおうか。
恐る恐る開けると、あの時出会った高本さんだった。でも、若干目つきが怖い。
「ああ、あなたでしたか。ここにお嬢様……浴衣姿の女性は訪ねてきませんでしたか?」
「いや~、来てないですね」
私、落ち着いて。こういう時はハードコアを脳内再生させて……。
「ほぉ……」
高本さんの視線は中にある115系……にかけ立てている刀に向いていた。
やっちゃった。片づけるのを忘れていた。
「……あとはお嬢様を探すだけですね」
「へ……うわっ」
なんというか、覇気というかオーラというか、そんな圧がかかってきた。
私の周りには現実離れした人が多すぎやしない?
一旦冷静に考えてみよう。私は耳を塞いで目を閉じた。
高本さんは刀を見て『あとはお嬢様を探すだけ』と言った。華乃子を見つけて従わせ、刀を使わせるのかもしれない。
もしもそれで華乃子の家族を傷つけるのだとしたら……。
……アモアモアモアモ。よし、決めた。
私は刀に向かって走り、手に取った。そしてさっと鞘を引き抜く。
「……!? 僕はとんでもない勘違いをしていたのですね」
やっぱり。高本さんは『二ツ宮の血縁者しか使えない』と思っていたのだろう。私だって華乃子に『鞘って抜ける?』と聞かれたときはそう思った。でも、目の前で華乃子がやっても引き抜けないことを知った。
私はスマホを取り出し、イヤホン端子を差し込んだ。聞くのはもちろんハードコア。
「僕がなんとかしないと……ね」
なんでこんなことになったんだろう。ただN700S系のノートの空白を埋めていただけなのに。
「あなた、そんなことをして許されるとでも?」
「そっちの方こそ、物騒なことしようとしてるでしょう?」
「気付かれましたか……そうです。お嬢様に会長と社長を斬ってもらおうとしましたよ。その前にお嬢様が喧嘩して出ていかれましたが」
「……本当に人間?」
「人間ですよ。人の道は踏み外してますがね」
「……」
「さて、こうなったらあなたを屈服させるしかないようですね」
「嫌だと言ったら?」
「もちろん、心を折ります」
作者「何で……? 何でこの流れになった( ゜Д ゜)?」




