11話 華乃子からのお願い
「かなで、LED持ってない?」
巡先輩が115系にLED式の行先表示器を取り付けてから一週間。私がキャンパス内でのんびりしていると、華乃子に話しかけられた。
確か巡先輩が予備で二つくらい買っていたはずだ。どこに片づけたのかは知らないけれど。
「あるにはあるけど、何に使うの?」
「商業目的よ」
「いや、そんなざっくり言われても。もっと具体的に……」
「今度、ホラーのアトラクションを期間限定で行うの。それでLEDが足りなくなってね」
「買ったらいいじゃん」
「予算があるのよ」
怖さは『気絶しかける程度』らしい。華乃子も被験者(?)になって体験したのだとか。
「き、気絶はしなかったわ」
ダウト。絶対嘘だ。
「……じゃあ夕方にでも取りに行こうか。サイズが希望通りか見てもらうためにも、華乃子にはついてきてもらうけどいい?」
「もちろん!」
というわけで夕方、博物館に華乃子を連れて帰ってきた。
「巡せんぱ~い」
「おや、どうしたのかな? ご令嬢まで連れてボクに何か用かな?」
「行先表示器、まだ余ってましたよね?」
「ああ、運転室の中にあるよ」
「それ使わせてもらってもいいですか?」
そう言うと、巡先輩は即答した。
「構わないよ」
「ありがとうございます」
ステップを登って115系の運転室に入ると、床に行先表示器と配線が入った段ボール箱が置かれていた。裏手にある倉庫にしまえばいいのに。
「……」
華乃子は行先表示器をまじまじと見つめていた。
「どう?」
「かなで、警笛はあるの?」
「え、警笛?」
「この電車を見てビビッと来たわ」
華乃子がちょっと悪い顔をしていた。もっと115系みたいに穏やかな表情になってよ……。
「これで……これでさらに恐怖を体験させられるわ!」
警笛の使い道なんて一つしかないだろう。
日を改めて。私は今、博物館から近いところにある大きな屋敷に来ていた。ここで華乃子が言っていた『ホラー系アトラクション』をするらしい。
「かなで、来たわね」
駐車場にルーミーを停めると、屋敷の勝手口から華乃子が出てきた。
「こんな場所、よく見つけたね」
「もとはとある実業家の別荘だったんだけど、使う機会があんまりなかったみたいなのよ。で、うちに格安で譲ってもらったの」
格安……私たちのような庶民からしたら高額なんだろうなぁ。
「それで、心の準備は出来てる?」
「一応はできてるよ。これがあるし」
私は手に持っていた一冊のノートを見せた。
「何それ?」
「211系のノート。先輩が持っていたから借りてきた」
どちらかと言えば『博物館が所蔵していた』ものだけれど。
211系を選んだのは偶然で、鉄道車両の資料があれば絶叫せずに済むと思ったからだ。
「……かなでの反応次第では、持ち込めるものに制限をかけないとね」
「逆に制限してないの?」
「してないわよ。というか、持ち込んだもので撃退することだってあるわ」
何それ怖い。
「さ、とりあえず入ろう。全員、準備完了したみたいだし」
「は~い、出発」




