『白球の余韻、そして君とまた歩く国で』 ―引退後の傑と成旼、再び韓国で―
【ソウルにて、ふたたび】
2028年、春。
東京ドームでの“最後の一球”から半年――
安川傑は、妻・成旼とともに再び韓国の地を踏んでいた。
彼の帰還は、かつて在籍した斗山ベアーズ、三星ライオンズのファンにとっても“特別な報せ”だった。
そして、ソウル市内の大ホールで開催される予定のイベント。
――「日韓を駆けた名将、安川傑・特別講演会」
その司会を務めるのは、今や韓国でも著名なキャスターとなった成旼だった。
「15年ぶりね、あの時の球場とは違って…今は“言葉”で人を魅了する舞台よ」
「投げるのはボールじゃなく、想いだな。韓国語で話すのは…まだちょっと緊張するけど」
「あなたなら、大丈夫よ。あなたの背中を、みんな覚えてるから」
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【講演会当日:満員の会場】
開演15分前。
客席はすでに満員。中にはかつてのチームメイトだった朴海旴や姜ミン鎬の姿もあった。
スクリーンには現役時代の傑の映像が流れ、観客の目が潤む。
「오늘의 특별 강연은, 한국과 일본을 넘나든 전설의 투수…(本日の特別講演は、日韓を駆けた伝説の投手…)」
成旼の声が静かに響く。
そして――
「안녕하세요. 전 프로야구 선수, 야스카와 스구루입니다(こんにちは。元プロ野球選手の安川傑です)」
ステージに現れた傑に、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
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【講演:韓国語で語る“家族”と“野球”】
彼は最初に、斗山・三星での思い出を語った。
「투산 시절, 저는 언어도, 문화도 몰랐어요.(斗山時代、僕は言葉も文化も分からなかった)
그때… 그녀를 만났죠.(でも、そのとき、彼女に出会った)」
視線の先には成旼。
「야구가 제 삶이었지만, 사랑은 그녀가 가르쳐줬어요(野球が人生だったけど、愛は彼女が教えてくれた)」
会場が静まり返る中、傑は自身のキャリアと家族の支え、娘・祐美子の成長を語った。
「딸이 저를 보며 말했어요. ‘아빠, 내 인생도 당신처럼 뜨겁게 살고 싶어’(娘が僕に言いました。“パパ、私もパパみたいに熱く生きたい”と)」
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【夫婦での質疑応答】
後半、成旼が舞台に並び、質疑応答セッションへ。
「引退後、何が一番変わりましたか?」
傑は笑いながら答える。
「밥을 집에서 먹어요(家でご飯を食べるようになりました)」
会場爆笑。
「또 하나… 매일 그녀와 산책해요(そしてもう一つ……毎日、彼女と散歩しています)」
成旼は少し照れながらも、言葉を添える。
「이젠 ‘야구선수 아내’가 아니라 ‘파트너’로서 살아가고 있어요(今は“野球選手の妻”じゃなくて、“人生のパートナー”として生きています)」
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【講演会の最後】
「오늘 이 자리는, 은퇴 후에도 제가 누군가에게 의미가 될 수 있다는 걸 보여줬어요(今日この場所が、引退しても誰かの力になれるって、感じさせてくれました)
그리고… 그녀와 함께라면, 어디든 무대입니다(そして、彼女と一緒なら、どこだって舞台です)」
傑は深く一礼し、会場から再び拍手が鳴り止まなかった。
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【夜、ふたりきりの時間】
講演後、ソウルの夜景が見えるホテルの部屋で、ふたりは肩を並べていた。
「昔、あなたが言ったでしょ。“君がいなきゃ野球できない”って」
「言ったな」
「……今のあなたは?」
傑はゆっくり手を取り、答えた。
「君がいるから、野球のあとも生きていける」
静かな夜のなかで、ふたりは笑い合った。




