表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼海のシグルーン  作者: 田柄 満
古代都市編
PR
67/70

第59話 会敵

 誰もいない都市を300人が往く。

 見上げると、高層ビルの隙間からスクリーンに映し出された星空が見えた。

 ケイビーはなんだか井戸の底にいるような気持ちになった。


 ビルの谷間の広場に到着すると、四方に見張りを置いて小休止した。

 ハンスが噴水のような階段の上に立つと注目するように促した。

「出発前の打ち合わせ通り、ここで五つの班に分ける」

 全員の顔を見てから、話を続けた。


「俺とタカハシ、アーサーはそれぞれ戦闘班を受け持つ。キムは技術班、クインの班は退避路の確保とバックアップ。いざというときは一般人、子供、老人を優先しろ」


ハンスの視線が全員の顔を見回した。


「戦闘班は3つのルートを進む。タカハシは東側、アーサーは西、俺は中央のルートを進む」

 タカハシとアーサーは頷いた。

「タワーまで400メートルの進軍だな 」

「撃ち合いになったら、無理に英雄になるな。生き残れ。中央ビルで合流だ」

「了解!」


  戦闘班はそれぞれ20名程の小部隊に編成された。ハッキング班の3人とケイビー、小さなルリもハンスと行くことになった。

『これから戦争でも始まりますの?』

 ルリが不安そうにケイビーの顔を見る。

「うん、これから君の姉さんを“取り戻し”に行くんだ」

『お姉さまは閉じ込められてますの?』

「ああ、閉じ込められている……」

 ケイビーは中央タワーを見上げた。MALで見た、あの魂が吸い取られていくような光景を思い出す。

 

「解放しなきゃ……」

 ケイビーは誰に言うでもなく呟いた。

 

 400メートルの距離を監視カメラの死角を縫い、物陰ごとにドローンを警戒して、一時間近く掛けて歩いた。タワーが目前に見えるところまで来た時、ケイビーの真後ろで何かが倒れる音がした。

 振り向くと、背の高い男が倒れて痙攣をしている。

 ケイビーが男に駆け寄った。

 外傷はないが、白目を剥いて、筋肉が弛緩している。

「この状態は……パラライザー?」


「敵襲だ! 前!」


 ハンスの叫ぶ声に反射的に物陰に隠れる。

 一緒に物陰に隠れようとしたひとりが、ケイビーの目の前でうめき声をあげて倒れ込んだ。

『だ、大丈夫なんですの?あの方』

 ケイビーの小脇でルリが心配そうな声をあげた。

「死にはしないよ、半日動けなくなるだけだ。でも、ここで麻痺したら終わりだ……」

「どこから撃っている?」

 周りを見渡しても、ドローンらしいものは見当たらない。

「音どころか気配すらしないぞ!」

 言っている間にまたひとり地面に倒れた。

「このままだとじわじわ全滅させられる!」

 ルリが向かいのビルの隙間を指差した。

『あの階段の向こうのビルの隙間を狙ってくださいませ!』

「何?」

『いいですから、早く!』

 ケイビーはAK-47を手に取るとビルの隙間に向けて構えた。

『壁の排気口が見えますでしょ?その辺りを狙って撃ってくださいまし!』

「わ、わかった」

 ビルの隙間から覗く、換気扇ほどの大きさの排気口に向けて引き金を絞った。

 

 乾いた銃声の直後に金属に弾かれるような硬く甲高い音が響くと、球状のドローンが姿を現すと細い煙を引きながら、コンクリートの階段を転がり落ちていった。


「あれは?」

「見えない奴までいるのか?」

「可動ドローンが少ないとはいえ、油断できんな」

「あれ!見てください」

 ケイビーが指差した先のタワーの入り口が開くと、コンコースから3台の人型ドローンが出てきた。


「中ボスのお出ましか」

「散開しろ、固まるな!」


 ハンスが叫んだ。

 ビルの陰や壁を盾に散開したメンバーが、一斉にAKを構える。


「左の奴から狙え! 撃て!」

 号令と共にいくつもの銃声がビル街に響いた。

 三方からの銃撃が左の人型ドローンに浴びせかけられる。


 キンキンと金属音と銃声が激しい雨音のように耳を貫く。ルリが思わず両手で耳を塞いだ。

 

「おい!」

 

 ハンスが驚きの声を上げた。

 人型ドローンが弾を弾きながらこちらに向かって歩いてきたのだ。

「浮遊型と違って装甲が厚い!」

 誰かが悲鳴のような声を上げた。

「AKじゃ歯が立たん!」

「どうするんですか!?」

 一機の人型ドローンが、道路の反対側で陸橋の柱に隠れている数人に狙いをつけた。人型ドローンが迫る。

 柱に近づくにつれてドローンに当たる金属音が高くなっていく。

 あと5メートルまでというところでドローンの動きが止まった。


「やったか?」

「まさか」


 バチッ!と高圧電流が弾けるような音がして、ドローンの周囲を青白い光が覆った。

 一瞬の出来事だった。

 柱の影にいた全員が無力化されていた。

「範囲攻撃か!」

「奴を近寄らせるな」


「おい、どうする?」

 ハッキング班のヒゲがハンスに迫る。

「ハッキングはできるか?」

「やってはみるが、時間はかかるぞ」

「どのくらいだ?」

「15分……いや10分か」

「かかるな」

 無線機で連絡を取っていたメガネがハンスに耳打ちする。

「別働隊も人型ドローンと戦闘に入り苦戦しているようです」

「応援も望めなさそうだな」

 ケイビーが道路上にあるマンホールのようなハッチを指差した。

「あの、ハッチから一層下に入れませんか?」

 タワーと今いる遮蔽物の中間ほどのところに、黄色と黒の警戒色のテープに囲まれた黒く四角いハッチがあった。

 ハンスがハッチを見て、ふっと笑った。

 

「あれはインフラ用のメンテナスハッチだな。なんとかなるかもしれんぞ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ