第十五章 森の西、そしてさらに谷の奥へゆく 其の一
第十五章 森の西、そしてさらに谷の奥へゆく
チェルザードが戻ってきたのは、翌朝、みんなが食事を終えた頃だった。
「首領!」
まっさきにフリーナが彼のやって来る森へ駆けこんでいく。一番心配したのは彼女だっただろう。
すこし離れて見ていると、フリーナと並んで戻ってきたチェルザードはまず長老の小屋に入って長いこと話をしていた。
何を話しているのか気になったが、呼ばれもしないのに近づいて話を聞くのはなんとなく悪い気がしたので、みんなの手伝いをして朝食の片づけをしたり薪割りを手伝ったりしていた。狼は森へ狩りにでかけたようだ。
しばらくして長老が呼んでいると誰かに声をかけられ、小屋に入る。
薄暗い小屋の中にチェルザードと長老が座り、もう一つの椅子にすすめられて座った。チェルザードはむすっと黙っている。
「ええか、首領にゃ首領の役割がある。なによりも首領にはわしらを率いて行ってもらわんといかん。『谷間の風のはじまるところ』に行くのはこの子に任せたらええ。戻ってくるか戻ってこないかはわからん。当てになるどうかわからん谷間の風なんぞ待っとらんと、マルリオスを抑えていかにゃならんじゃろが。そうこうしとる間にもマルリオスは着々と準備を整えとるぞ」
「わかっている」
不機嫌な顔のままチェルザードは無愛想に返事をした。
「あの、マルリオス師の準備って?」
口をはさんでいいかわからなかったが、つい『学びの塔』のことは気になってしまう。
「あいつは自分では都を出てきよらん。都の外では、他人の力を利用するという奴のお得意の方法が使えんからの。しかしその代わりに、外でも十分力を使える配下たちを『学びの塔』で育てておる。奴は徐々に勢力を広げてくるぞ。まずはこの森に、そして都の外の村や都市に。古代魔法は失われ、奴の唱える理論魔法が支配する世界になる。一極支配のやりやすい体制になっちまう。そうさせてはならん。すべての魔法使いには自由に魔法を使う権限があり、獣や魔物にもそれぞれの自由があるべきじゃ」
「そんなことを」
「そうじゃ。エスケレス師が魔法使いの養成所として樹立した『学びの塔』を、今やマルリオスは己の欲望の道具にしようとしとる。気づかんかったかの。マルリオスを批判することは重罪にあたり、意のままにならん魔法使いは力を奪われる。おまえさんもそうじゃったろう。ま、おまえさんの場合は奴の思い通りにいかんかったようじゃがの」
ふぉふぉと長老はまた笑った。
チェルザードが、むっつりとした顔のままラジュエルに目を向けた。
「長老はおまえに力がないと言ったが、どうもそれはちがうな。俺やマルリオスのような力はないが、おまえには何か未知のものがある。俺は昨日、結構本気で戦った。もちろん、狼が助けたせいもあるが、おまえの剣から出たあの光。並の魔法使いにはああいうことは起こらない。おまえには特別な何かがある。おそらくは……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続きも読んでくださりありがとうございます<m(__)m>
来週もよろしくお願いいたします(^^♪




