第十三章 彼らは仲間になるのか 其の八
返事はない。
けれども狼と一緒にいれば言葉はいらないと思う。
懐かしい。慕わしい。まるで家に帰ったように気持ちが安らぐ。
草原の青々とした草の香り、大地をすぎてゆく風の香り。
羊とともに草原をめぐっていた頃、よくこんな風に外で寝た。あの頃は狼は羊の敵でしかなかった。
「その狼がこんなに大切な存在になっちゃったんだな」
狼は黙っているが、その凜とした意志が伝わってくるように感じる。
ああ、この感覚だ――。
もう少しではっきりと言葉になりそうな感じがする。
『学びの塔』の師匠たちと戦いたいわけではない。しかし、チェルザードの言うとおり、マルリオス体制がこのままつづくのは阻止しなければいけないのはわかる。
「だから?」
――行くのだ。西へ。
『谷間の風のはじまるところ』へ。
「そうだ、行かなくちゃ」
つぶやいて立ち上がる。
このまま黙って去ってもいい。だが、『荒野』の魔法使いたちには助けられた。その恩をひと言の礼も言わずに立ち去るのは道を外れているような気がする。
それに、『谷間の風のはじまるところ』についても、もしかしたらもっと情報が手に入るのかもしれない。
今のところ、心の中に響いてくる声だけを頼りにここまで来てしまった。
これが『導き』にちがいなかろうという、確信というにはあまりにおぼろげな感覚はある。もしかしたら長老やチェルザードなら、もっと何かを知っているかもしれない。
戻ったら彼らとともに戦わされる羽目になるかもしれない。だが、それでもあのまま『学びの塔』にいて、マルリオスの言うがままに動いているよりきっとましだろうと思う。
立ち上がったとき、急に都の上空にぱあっと強い光がひろがったのが見えた。狼がぴくりと耳を立てて立ち上がる。
「あれは何だろう? デュカス」
狼が力強い視線でこちらを見る。うなずいて、ラジュエルは一緒に森へ駆けだした。
自分が竜を奪おうとして逃げた。それを『荒野』が戦って護ってくれた。あのマルリオス師が負けたまま黙って引き下がるとは思えない。
迷うのは後だ。今は自分と狼の身を護らなくてはいけない。そして本当の味方かどうかわからないが、とにかく自分を助けて寝床と食べ物を与えてくれた『荒野』の人々に協力しなければ――。
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文字数少ないので12時に次章投稿しますのでよろしくお願いいたします(^^♪




