第十四章 本物の竜に乗る 其の一(イラストあり)
(チェルザードはiwajun様、フリーナは宮出サキ様のイラストですが、今回お二人のご協力で夢のコラボ画像を描いていただきました(〃艸〃)♪ ありがとうございます<m(__)m>)
第十四章 本物の竜に乗る
集落に戻ると遅い時間だというのに空き地には火が炊かれ人々は武装していた。
「ラジュエル、無事か」
チェルザードに声をかけられうなずく。
「都が明るいです。襲撃でしょうか?」
「わからない。だが用心はしておかなくては」
言っているそばから空から何かが飛行してくる。先日の竜たちだ。
「竜はいつもはどこにいるんですか?」
「プロト・モリス(黒大山)のどこかにいる。場所は極秘だ。マルリオスに居場所を知られたから一度すみかを移した。これ以上犠牲を出してはいけないからな」
「マルリオス師は山に棲む竜を捕らえて魂を抜いたんですか……」
「命じたのはマルリオスだと思うが、実行したのは奴ではない。獣すら扱えないマルリオスに竜を捕らえることなど、できるわけがない」
「じゃあ、一体誰が!」
急にはっと悪い考えがよぎった。
獣を使えるのは、『学びの塔』ではダッジオ師ではなかったか。
チェルザードがその考えを読み取ったかのように、にやりと笑った。
「ダッジオ……だと思ったんだろう。よかったな、奴はさすがにそこまで墜ちちゃいない。実行犯はおおよそわかっている。『学びの塔』の地下で死んだ魔法使いがいただろう。カッチェという。知っているか」
「いいえ」
聞いたこともない。
だが、ダッジオ師ではないということだけは安心した。
『学びの塔』の地下で死んだという魔法使いは、あの、ラジュエルが閉じ込められて苦しんだときに遺体で運び出された人物だろうか。
「それは、わりと最近のことですか? 僕も地下で苦しみました。そのときに?」
「いつ、何が『学びの塔』で起きたのか、俺には詳しくはわからない。長老がカッチェが死んだと言った。年齢は俺より上だ。『学びの塔』にはあまり出入りしていなかったかもしれないから、おまえとは面識がなかったか」
「その人も獣使いだったんですか」
チェルザードはしずかにうなずいた。
「王室づきの、な。王侯貴族を竜に乗せてみたり、魔物を見世物にしたり、これまでの獣使いがやろうとしなかったことで国王の歓心を買い、出世した。マルリオスはそれに便乗した。利用するだけ利用しておいて、いらなくなったら適当な罪を着せて殺したのか、それとも別に何か罪状があったのか、どちらもありうることだ。お互いロクなことをしていない。知らなかったか」
「……いいえ。まったく」
「まあ、そうだろうな。まだ『学びの塔』に来て一年の坊主にはそんなことは話さないだろう」
「僕は……『荒野』が、学生に何か取り憑かせて、今まで真面目で大人しかった学生を惑わせたのだと聞きました。だから『荒野』は悪い連中なんだって」
「そんなことを吹き込んでいるのか」
チェルザードは長靴の紐を締めながら吐き捨てた。
「なんのためにそんなことをする必要がある? 貴重な魔法使いの卵を潰して何が楽しい。もしその学生に問題があって罰を与えないといけないなら、それは『学びの塔』の師匠たちが考えるべきことだ。俺たちはそんなに暇じゃない」
「じゃあ、いったい彼女はどうしたんでしょう」
「強すぎる魔法の『器』にされて気が触れたか、一時的にヒステリーを起こしたか、が考えられるな。その彼女は死んだのか」
「死んだとは聞いていません」
「魔法の『器』になるのは、生半可なことじゃない。だからおまえは強いと言っているんだ。『学びの塔』では力は下から上へと流れる構造になっている。地下に閉じ込められた者は力を吸収されて奪われる。集めた力を一つにして吹き出すことで、強力な魔力を発動できる。マルリオスは、あたかも自分だけが強大な魔力を使っているように見せかけているが、実際には『学びの塔』が国民や他の魔法使いから集めた力を用いているにすぎない。力の方向性を決めるのに、いつかおまえが『器』として使われただろう」
稲光が空に走った。
「首領! 準備が整いましたぜ!」
背の曲がった男が呼びに来る。
「わかった! おまえはここに残れ」
「僕は……」
「戦いたくないんだろう。そんな奴が戦場に出ても無駄だ。下手をすれば犬死にだ。ここに残って食事の支度でもしてろ」
広場に集まってきた竜の群れに向かってチェルザードは大股で歩いて行く。
残って食事の支度、と言われてまたすこし腹が立った。だが戦いたくない気持ちは嘘ではない。
不満を抱きつつ、『荒野』の竜に乗らない人々と、順ぐりに飛び立つ竜を見る。
チェルザードがフリーナに何か話している。フリーナが近づいてきた。
「竜には乗りたそうね。でも都の魔法使いとは戦いたくない。ひとつ、仕事があるけど、一緒にやる?」
「どんなこと?」
「『荒野』はここにいるのが全部じゃない。もちろん、同じように『荒野』と呼ばれてても私たちの仲間じゃない人たちもいる。森の別の場所にもっと仲間がいるのよ。彼らに連絡を取りに行く」
とくんと胸が弾んだ。
「そういうのならぜひ行きたいな」
「じゃあ、いらっしゃい」
フリーナと歩きながら、ふと気になって尋ねた。
「その仕事はチェルザードが僕にと言ってくれたの?」
「そうよ。あの人あんな風だけど、あなたのこと結構買ってるのよ。最初、どうしてあなたみたいな子供をってみんな思ってた。でも、崖から一人で戻ってきたときから見る目が変わったわ。気づいてた?」
「そういえば、ちょっと」
親切になった。
殺せと言われなくなった。
崖に置き去りにされたのは試されていたということなのか、自分だけの力でどれほどのことができるのか。
フリーナの美しい赤の竜に近づく。
竜は首を持ちあげ熱い息を吐く。ラジュエルには警戒しているようだが、フリーナにはまるで飼い主に懐く犬のように嬉しそうに首をむけている。
たしかにこれは『学びの塔』の竜とはまるでちがうものだった。
「いい? 生きてるんだから怒らせちゃだめよ。私がこの子を見てるからあなた先に乗って。鱗や棘をひっぱったりしないように……」
言われても、板の上を歩くように乗れた都の竜とはずいぶん勝手がちがう。馬に乗ったときのことを思い出しながら、ようやく片手をかけて大きくまたがる形で背中に乗った。
「そう、もうちょっと前に座って。首には手を回して大丈夫だから。両足は翼の前がいいわ」
後ろにフリーナがひらりと飛び乗った。
「発つわよ。行こう!」
ー――――――――――――――――
今週も読んでいただきありがとうございます<m(__)m>
来週もよろしくお願いいたします(^^♪




