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引きこもりのお飾り妻は悪妻になって離婚するのだ!  作者: 赤城ハルナ
プロローグ/若奥様殺人未遂事件

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毒を飲まされたみたいです/苦しい助けて

★服毒事件後のポンコツアイネです。

★田舎で伸び伸び育ったので、『悪意』が害を及ぼすことがあるとは知りません。

★ここからしばらくアイネ視点です。

 気が付くと、わたしはベッドに寝かされていた。

 全身が重く、手も足も動かすことができない。喉が詰まっている気がする。気持ち悪い。喉と胸が苦しくて声を出せない。


〈ウ~ン……(誰か……助けてぇ……)〉


 確か、ランチは軽くリンゴとイチジクのコンポートにしてもらって……。


 あれ以来わたしは自室に監禁状態だ。

 話し相手がいなくて暇だから、風景画の続きを描いて……喉が渇いたので何か飲もうとした。

 アンは昨日から外出しているから、呼び鈴を鳴らしたら……アリッサとかいう使用人が、ジャムを挟んだスポンジケーキと、ミルクとシュガー入りカモミールティーを持ってきて……。


 そういえば昨日もアリッサがアフタヌーンティーの用意をした。アンがいないから代わりに持って来たって言ってた。


『奥様、お飲み物にはダイエットシュガーというお砂糖をたっぷりお入れしました。昨今の流行とのことでございます』と、アリッサが得意げに言ってたっけ。


 ダイエットシュガーだとしても、たっぷり入れたらカロリーは同じじゃない。ダイエットするならお砂糖は少なめに、それか入れなければいい……と思いながら飲んだら、とても甘くてほんのり苦かった……いくらなんでもシュガーを入れすぎだよと、あとで注意しようと思って……それから……。


 そう、急に動悸が激しくなって、息をするのがつらくなった。

 目の前が歪んで、体が重くて動かなくて……。

 苦しくて苦しくて、呼び鈴を鳴らそうと思ったけれど、紐に手が届かなくて……もう、ダメだと思った。


 終わった……と思った。


 次に転生するときは二十一世紀の日本、そこそこ都会そこそこ田舎にしてほしいとマジで思った。何でも揃っている巨大ショッピングモールがあるところ。気軽にお一人様カフェへ行けるところ。


 そして意識が遠のいた。


 でも、今は息をしているし、確かに生きている。瞼に力を入れたら、辛うじて薄目を開けることができた。


 あれっ、ウ~ン何だろう、この、


【伯爵家全員集合!】


 みたいなシチュエーション??


〈ウ~ン……ハァァァァ……(誰か何とかしてぇ、だりいの、ぐるじいの、ドクター、薬!)〉


「アイネ!」

「アイネ様!」

「生きてらしたのですか!?」


 三者三様の反応。

 最後の反応はたぶん、最近わたしを睨んでくるメイド長。


「生きていて、申し訳、ありません……」

(生きていて、悪うござんしたぁ!)


 きっとわたし、毒殺されかけたんだわ。

 でも死ねなかったみたい。

 医療がそこまで発達していないガッデム世界なのに、奇跡だわ。


 でも、誰が?

 何のために?

 わたしを殺してもどうにもならないじゃない。


 ただひとりアンだけが泣いている。フィンも泣きそうだけど……。

 皆さんごめんなさい、どうしてこんなことになったのか見当もつかない。

 周りに恨まれるようなことをしでかしたっけ?


 あぁ、そういえば最近わたし、悪妻になろうとして……それから……。


 もしもわたしが死んだらアンはどうなるの?

 アンは一生わたしが守るって決めたのに。




☆ ☆ ☆




「少しは話せるかな、アイネ」


 翌朝になりだいぶ落ち着いたわたしに、フィンが話しかけた。今わたしの寝室にいるのは、医者とアンとフィンだ。


 ゆるやかに波打つ金髪に、愁いを帯びたブルーアイのイケメン旦那がベッドサイドに座り、わたしの髪の毛をもてあそびながら話し掛けた。

 髪の毛を触られているだけなのに、何だかくすぐったい。


「……ハイ」

「まさかとは思うけれど、その……毒を……飲んだのかい?」

「飲んだ……たぶん……でも、自分から飲んだわけじゃない。毒なんて持ってない」

「何があったのか話せるかな?」

「はい……アンがいないから、今日の午後はひとりで絵を描いていて……喉が渇いたからアリッサというメイドに……ダイエットシュガーとミルク入りカモミールティーを……ゴホゴホ……」


「アン、水……いや、温かい水を持って来て下さい」

「はい、ドクター」

 アンが退出した。


「……カモミールティーを飲んだら、動悸が激しくなって、息ができなくて……」

「では、アリッサが?」

「呼び鈴を鳴らそうとしたけれど、紐に手が届かなくて……その先は記憶が無いので分かりません」

「警官を呼んで使用人全員に聞き取りをしようと思う」

「いいんですか、警官なんかを呼んで?」

「構わない。その上で処罰を決めよう」

「そういえば、アリッサという使用人は今まで見たことがないような……あるような……?」

「彼女は……普段別の仕事をしている。なぜアイネの世話をしたかは分からない。まずそこからだな。アンをこの部屋で待機させるから、安心して眠りなさい」

「ハイ……」


 心配そうなフィンが部屋から出ようとした。これはチャンスだと思い、わたしは勇気を出して自分の願いを口にした。


「この屋敷で暮らすのは辛いんです。わたしと離婚してください」


「何を言っているんだアイネ、犯人は必ず見つけるから。もうこんなことは起こさないから安心して。そうだ、もう一人侍女を付けよう」

「犯人とかそういうことではないんです」

「どういうことかな? また変な内容の三文小説を読んだのか?」

「どうしてそうなるんです?」

「アイネはぼくの妻なのだから、そのつもりでと何度も言っただろう。もう子供じゃないんだから、くだらない小説に影響されないように。今度そんなことを言ったら小説を禁止するよ」

「……」


「あとは頼んだ、ドクター」

「かしこまりました」


 フィンはそのまま部屋を出た。

 医者とアンだけが寝室に残った。


 ――何を言っても無駄なんだな。


 のれんに腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏。

 あと何かあったっけ?

★次回から本章です。二人の出会い(ロマンチック度ゼロ)からです。

★ミステリー小説ではありません。

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豆腐に鎹( ̄ー ̄)b
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