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引きこもりのお飾り妻は悪妻になって離婚するのだ!  作者: 赤城ハルナ
プロローグ/若奥様殺人未遂事件

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2/24

妻が毒を飲んだようだ/取り乱す夫

「ライリー様、ご覧の通りでございます。奥様は服毒され、心身ともに消耗しております」

 エントランスでフィンを迎えた医者が妻の寝室へやって来た。


「なぜこんなことになったんだ、答えろ、メイド長!」

「で、ですから、奥様は恐らくみずから……」


 奥様は自分で毒を飲んだのだとメイド長は思い込んでいるようだ。

 それもそのはず、伯爵家の若奥様に対して毒を盛るなどという頭のイカれた使用人がこの屋敷にいるわけがなく、思い当たることさえないのだから。


「違います! アイネ様が自分で毒を飲むはずがありません!」

 侍女のアンが反論した。


「妻は助かるのか?」

「息がほとんどありません。助かる見込みは……どうでしょう……覚悟なさった方がよろしいかと……」と、うろたえる医者。

「まさか、そんな……」

「もう少し早くわたしを呼んでくだされば……」

「遅くてもよい、何とかしろ!」

「はい、善処致します」


「医者を呼ぶのが遅すぎる、どうして誰も気づかなかったんだ!」

 イライラしているフィンは、今にも部屋中を破壊する勢いで執事に迫った。


 アイネの部屋には執事以下使用人全員が集まっていた。こんな風に取り乱し、言葉を荒げる若伯爵など見たことがない。


「も、申し訳ございません。奥様はずっと自室にこもっておりまして……」


(それはぼくが……そうさせたから……)

 フィンは自分の軽率な行いに頭を抱えた。

(あぁ、アイネ……ぼくはどうすれば……)


「……いつものように絵をお描きになっていると思っていたのでございます」

 執事がうろたえながら答えているとき、アイネの侍女アンが涙ながらに訴えた。

「恐れながらご主人様、わ、わたしはメイド長から二日ほど休暇を頂いておりまして、友人宅を訪ねていたのでございます。夕刻お屋敷に戻りましたら、ま、まさかこんなことになっているなんて……アイネ様はわたしがお世話しますとアリッサから言われておりまして……」


「わたしは奥様のお世話をアリッサに任せなさいなどとは誰にも言っておりません! そもそもアリッサは別邸の使用人ではないですか、なぜ彼女が?」とはメイド長の反論だ。


「アリッサ、なぜお前がアイネの世話をした? それに、何故発見が遅れた?」

「あ、あの、アンが二日間いないと聞いたので、それならあたしが奥様のお世話をしようと……アフタヌーンティー用に、奥様にいくつかお菓子と、ダイエットシュガーとミルク入りカモミールティーを持って参りました。そのときはお元気でした。けれども晩餐にお呼びしようとしたら返事はなく……だから、お休みになっているものとばかり思い……」

 アリッサと呼ばれる使用人が泣きそうになって訴えた。


「その時点で確認するべきだろう!!」

「も、申し訳ありません……!」


(日中はたいてい妻とは別行動だ……最近は妻を自室で大人しくさせていた……外出を禁止していた……しかも、今日に限ってぼくの帰りが遅くなってしまった……)


「アイネ……」

 夫のフィンが妻のベッドに突っ伏し、ブルネットの髪の毛を愛おしそうに撫でた。

 まだ温かい、妻が死ぬはずがない。



〈ウ~ン……〉



 ベッドからか細い声がした。


「アイネ!」

「アイネ様!」

「生きてらしたのですか!?」


 フィンとアンがアイネの顔を覗き込み、メイド長はただただ驚いていた。


〈ウ~ン……ハァァァァ……〉


 弱々しく、消え入りそうな声。

 次いで、薄く目を開けたアイネがつぶやいた。


「生きていて、申し訳、ありません……」

★次回から強情なポンコツ妻アイネ視点になります。

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