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引きこもりのお飾り妻は悪妻になって離婚したい  作者: 赤城ハルナ/アサマ


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3/15

お飾り妻になったみたいです(たぶん)

 そもそもわたし、どうしてこんな【産業革命中ですよ】みたいな時代に生まれ変わったんだろう。前世は二十一世紀だったのに、今は十九世紀みたいな世界。時代が逆行してるのよね。次に生まれ変わって魔女狩りに遭ったらシャレにならない。


 しかもまた女だよ。男尊女卑世界だよ。参政権ないよ。


 ファッ○ンガッデム!


 ハァ……この世界の医療水準では、結婚しても子供なんかとてもじゃないけど産めない。帝王切開なんて望めないし、無痛分娩さえないだろうし。わたし出血多量で死んじゃうかも。


 怖いし憂鬱。





 この結婚は今から一年ほど前。


 いきなりライリー家から縁談の申し込みがあった。

 わたしは去年のニューイヤー舞踏会で社交界デビューしたばかりだったので、結婚なんて考えてもいなかった。


 お相手はフィン・ライリー。ライリー伯爵家の嫡男。わたしよりも十歳年上のアラサー男性。

 そのときわたしは十七歳になったばかりだった。十歳程度の年の差なら、良くある貴族同士の結婚なのかなと思っていた。


 違ったのは……。


「ライリー家のご子息様はプレイボーイで有名な方ではなくて? わたくし先日のパーティーでお見かけしたわ。大勢のレディを引き連れていましたわ」

 母が思い出したように言った。

「あぁ、そうだったかなぁ。だとしても結婚すれば落ち着くだろう」という、楽観的な父。


 ――うわっ、その人プレイボーイなの!? 激しく嫌なんですけど。

 万が一結婚しなければならないのなら、地味で平凡なボーイプリーズ! 目立たなくて少々つまらない程度の男性がいいな。

 ところがその翌週マケナニー家のカントリーハウスにやって来たのは、ゆるやかな金髪にブルーアイの高身長細マッチョな、噂通り超イケメンお兄さんだった。ほんのりタレ目っぽいかな。


 な、なんでわたしに!?


 ――そういえば舞踏会で見かけたかもしれない。見かけただけだけど。

 たくさんの女の人に囲まれていたっけ。着飾ったレディたちの見守る中、ワインについてウンチク垂れて。彼が何か言うたびにレディたちが『まぁっ!』『お詳しいのね!』『素晴らしいですわ!』などと賛美を贈っていた。


 そのときは(ゲエッ)と思って踵を返したわ。だってわたしの嫌いなタイプなんだもの。

 まさか……そのときに目を付けられた?


「初めまして、レディ・マケナニー」

「初めまして、ライリー様。失礼ですが、わたしたち、お会いしたことがありましたか?」

「先の舞踏会にてお見かけし、あなたの清楚で落ち着いた姿に惹かれ、結婚をし込みたく思いました。御迷惑でなければぜひ検討して頂きたく……」


(やっぱりあのとき?

 わたしが清楚……何か勘違いしてない?

 わたしのブルネットとグリーンアイがそう思わせているのかな。そりゃあ、わたしはアバズレでも跳ねっ返りでもないけれど……単なる引きこもりなだけで……)


 清楚とか落ち着いているわけではない、ただの引きこもりです。大人しいと言われるけれどそれは表向き。基本的に超がつく頑固者です。引きこもっているから周りがそれに気付かないだけです。


 いきなり結婚と言われても。

 わたしもう少し子供でいたい……というか、社交なんてしたことがない箱入り娘だし。一度だけ舞踏会へ行ったきり、パーティーへ顔を出したことはないし。

 屋敷に閉じこもって、絵を描いたりピアノを弾いたりしているだけ。レディのたしなみ刺繍はできません。


 あぁ、結婚したくない……そもそも子供を産みたくない。それにこんな、複数の女性を侍らすお兄さんと、あんなことこんなことをしなければならないの??


 あり得ない。色々無理。

 きっと取り巻きに殺される。逃げたい。

 チェンジプリーズ!!


「アイネはいつもボーッとしている娘なんです。末っ子だからなのか甘えん坊で世間にも疎く、社交もせず、ピアノを弾くか絵を描いているような娘でして。こんな娘でもよろしければ、ぜひお話を進めて頂けませんでしょうか」

「ありがとうございます。マケナニー家の姫を大切にお守りすると誓います」


(お~い、父! 勝手に話を進めるんじゃない!)


 結局三度も相手主導の謎デートをさせられ、前のめりになった父と母によって、わたしはマケナニー家を放り出されることになったのである。


「お前のようなぼんやりした娘でも伯爵家の夫人になれるんだ。こんなにいい話はないだろう。ライリー家に感謝しなければな」

「そうよアイネ。これからは甘えないでライリー様に尽くしなさい」


 あのモテ男に尽くす気は全然ないんだけど。

 結婚したかったわけではないのに結婚させられてしまう。

 断わろうにも断れない。


 女性の意思が無視される世界。それってどうなの?


「ライリー家からは侍女を一人なら連れて行ってもいいと言われたの、アンを連れて行く?」

 フィン・ライリーという噂のモテ男が義理の息子になり、勢いづいている母。

「ぜひそうして。それなら向こうへ行っても寂しくないわ。どう思う、アン?」

「も、もちろんです、わたしがご一緒してもよろしいのなら」


 アンは十六歳。わたしの実家マケナニー領の地主の娘だ。平民といってもアッパーミドルクラス、マケナニーの遠縁にあたる。わたしと同じブルネットとグリーンアイの、ぽっちゃりした愛らしい少女。侍女というよりは話し相手、コンパニオンという感じ。


 アンが男性に色目を使うことはない。





 婚約式はライリー家で行われた。

 それほど大規模ではなかったけれど、オフホワイトドレスでお人形のように正装させられ、片っ端から挨拶させられ、次から次へとダンスを申し込まれた。婚約者様はそれはもうスターのような方で、『なぜアイネ・マケナニーが結婚相手!?』と、誰もが思ったに違いない。

 ずっと微笑んでいたから、終わったときは顔面筋肉痛を起こすかと思った。


 嫁入り支度はメチャクチャ大変だった。身の回りのあれこれをすべてそろえなければならない。嫁入り道具も。体力をつけなければ結婚式まで乗り越えられない。何しろ引きこもり、筋肉ゼロ子である。結婚したら散歩くらいはしようと決意するのであった。


 そして――壮大な結婚式だったのは覚えている。教会で簡単な結婚式を挙げたあと、ライリー家のタウンハウスホールで披露パーティー。招待されたのは二百人以上。めまいがしたわ。

 招待されたマケナニー一族は、フィン・ライリーの縁戚になって鼻高々だった。


 初めてのキスは……何だか柔らかかった。ちょっと驚いた。


 その後ウェディングドレスのままフィンにお姫様抱っこされて、わたしの部屋まで運ばれた。


「今日からここがアイネの部屋だ。あなたが寛げるように模様替えしたが、要望があったら何でも言ってほしい」

「ありがとうございます」


 なるほど、絶賛乙女なインテリアで統一されている。わたしに対する齟齬があるような……。


「これはアイネに……」

 そう言って、フィンがわたしにピンクのバラの花束を渡し、膝を折ってわたしの手にキスをした。くすぐったい。何だか騎士に誓いを立てられているみたいだ。


「それから、あらかじめ言っておくことがある」

「ハイ、何でしょうか」

「アイネとの間に子供をもうけるつもりはないから、楽にして。ただし、朝食と散歩、晩餐は共に、それから、パーティーも共に参加してほしい。アイネはぼくの隣で微笑んでいればいいから」


(は? えっ? マジですか?)


 初夜とか嫌だな~、好きで結婚した人ならともかく、仲良くなってもいない男に裸を見られるなんて……いっそのこと服を着たまま入れて出すだけにしてぇ……と思っていたんだけど……。


 隣で微笑んでいるだけ――の、白い結婚でいいの!?


(そのときは)ラッキー、と思ったね。前世でも今世でも大人の世界なんて知らなかったから。


 理想の結婚じゃない。子供を産まなくてもいいなんて。

 白い結婚の『お飾り妻』というやつですかね。文字通りの『お飾り』。着飾って隣で微笑むやつ。この男の隣がわたしでいいのか謎ではあるけれど。


 まさか……旦那様は男専門だったりして。『私には一応妻がいますよ』というパフォーマンス。

 つまり偽装結婚。置き型防虫剤。


「後継者はどうするんですか?」

「それは考えてあるから、アイネが心配することはないよ」


 そーですか、そーですか。

 一人っ子だと聞いているから、後継者は叔父とか従兄弟とかその辺ですかね。ということは、初夜はないし、疲れたからもう休もうかな。


「ライリー様、わたし疲れましたので、もう休んでいいですか?」

「あぁ、これからはフィンと呼ぶように」

 さも愛おしそうに私の髪の毛をくし削りながら微笑んでいる。


(おおう、さっすがモテ男、振る舞いが全然違うわ)


「はい。フィン、もう休みたいです」

「アンにホットミルクを頼もう。それから、食事と散歩以外は自由に過ごしてかまわない。共に出かけることがあれば、あらかじめ告げるから」

「ハイ……」


 わたしの額に優しく口付けた。ちょっぴりドキドキした……。

 隣で微笑んでいるだけでいいって言われたんだから、もちろんその通りにする。それ以上のことはしないわよ。


 それっきりフィンは姿を見せなかった。



☆ ☆ ☆



その頃社交界では、『ライリー様ご結婚』という話題が奥様・お嬢様方の間に上り、涙に暮れるご令嬢があちこちで見られるのであった。

※プロローグで書いたように、フィンは(アイネからすると『あり得ね~』)秘密を持っています。アイネは何も知らずに嫁ぐことになってしまいました。


※アイネの第一印象は……だいたい正しかったようです。

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