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引きこもりのお飾り妻は悪妻になって離婚するのだ!  作者: 赤城ハルナ
本章/転生引きこもりお飾り妻

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17/24

最近妻の様子がおかしいのだが/どうすればいいんだ

★半分フィン・ライリーの自慢話です。

★ぶちのめしてやりたいと思った読者の方々、誠に申し訳ございません。

 若いころのぼくは女性関係が少々賑やかだった。来る者拒まずくらいには――まだまだ若いが。

 なにしろ、来るのだから仕方ない。レディの望みを断るのも可哀想だしね……レディが泣くところを見ると胸が苦しくなるんだ。


 それに、宮廷侍従長の補佐をしている以上、社交界の噂は重要だ。表立った動きのほかに、婚約・結婚・離婚・出産・不倫……そういった下世話な動きも把握しなければならないのだ。


 様々な女性を経験したぼくではあるが、結婚相手には身持ちの軽い女性は避けたい。もしも子供が産まれたとして、自分の子かどうか分からないじゃないか。

 妻は初心うぶで大人の世界を知らない、ぼくだけを見てくれる女性でなければならない。


 そもそも妻に子供は産ませたくない。母のように出産で死ぬなど、そんなことはあってはならないのだ。


 没落した貴族家から放り出された二人の女性を保護し、別邸に住まわせてはいる。

 少しだけ――関係を持ってはいる。


 断れなかったんだ。


 世間的にはそれを愛人というが、ぼくは愛人とは思っていない。そこに愛情はないから。いずれ女性たちとの間に子供ができたらアイネとの子にするつもりだ。

 自分の子なのだから、貴族でさえあれば母親は誰でもかまわない。


 ぼくの理想の唯一。


 いまだ少女のようなアイネを汚すのが怖い。





「わたし、悪妻になりましたのよ、ホホホホ……」

「アイネ、もう何度も聞いたよ」


 最近の妻の口癖だ。どこからそんな言葉が出るんだろう、誰かにそそのかされたんだろうか?

 そういえば彼女の部屋に安っぽい三文小説が積んであったかな。実家から持って来たんだろうか?


「……なので離婚して下さいな」

「アイネ……ロマンス小説の読みすぎなんじゃないか? 役所の書類を真似た紙に『り・こ・ん』と書けばいいのか?」

「そういうことじゃなくて!」

「フゥ、愚痴があるのなら晩餐のあとに聞くから、そんなことを気安く言葉にしてはいけないよ。特にパーティーでは気を付けること。お茶会は禁止だ。しばらくは外出も禁止する」

「えぇっ……そんな……」

「アイネはいつものようにピアノを弾いたり絵を描いたりしていればいいんだ」

「あの……だから……り、り、りこ……りこ……」


 アイネは両手を上下し、観賞魚のように口をパクパクさせている。そんな可愛いらしい仕草をしながら離婚と言われても、どう突っ込めばいいのか分からない。

 困った娘だ。

『離婚』という言葉の意味を理解しているんだろうか。

 ぼくは父のように、何度も離婚して再婚するような人間にはなりたくない。

 妻はアイネだけでいい。


 ハァ……目下のアイネの興味は『悪妻』と『離婚』らしい。そのうち『断罪』『追放』なんてことを言い出すかもしれない。いや、それよりも『虐げられた妻』などという戯言をパーティーで持ち出されたらマズイ、非常にマズイ。

 彼女はこんな風に奇妙な想像力を持った、虚言癖のある娘だったのか?

 間抜けな三文小説ばかり読む幼稚な妻をどうしたものか。


 可憐で清楚な妻は、まだまだ子供だったのか。


 ――そんなことがあった数日後。


 使用人の間でアイネが『浪費家』『我儘』『悪妻』だという、とんでもないデマが上がっているというではないか。

 確かにここ二日、三日のアイネの様子はいつになくおかしかった、料理やお菓子に苦情を言って。メイド長からは、奥様から文句ばかり言われていると苦言を呈された。

 今までこんなことは一度もなかったのに。


 今アイネは自室で大人しくしている。最近挙動がおかしいので外と接触するのを禁止しているのだ。何が原因でこんなことになってしまったのか見当もつかない。


 何かがおかしいと思ったときにはすでに遅かったのだ。どうしてぼくはそのことに気付こうとしなかったのか。


 だがそのときは、一ヶ月ほど屋敷で大人しくしていれば周りも落ち着き、すべて元通りになるだろう、いつものあどけないアイネに戻ってくれるだろう、だからしばらくそっとしておこうと思っただけだった。


 そういえば彼女のことが気になって最近別邸を訪れていない。結婚してからは頻繁に通っていたのだが……そろそろ行くとするか。あの従姉妹たちも気になるしね。


 ぼくたちのためにも……。



☆ ☆ ☆



 その頃社交界では、『悩めるライリー様』という話題が奥様・お嬢様方の間に頻繁に上り、誰が描いたのか分からない、それっぽい肖像画が高額で出回るのであった。

 肖像画の右下には『C.A.』というイニシャルがあった。

 フィン・ライリーグッズで儲ける存在があるとかないとか。

★次回はアイネ毒殺未遂事件前夜です。

★フィンがアイネを監禁したバッドタイミングで事件が起きました。

★犯人が出てきます。あの人です(ミステリー小説ではありません)。

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