ふたりだけの保健室
ガラガラッ
「香織先生いらっしゃいますかー?」
保健室を二人でキョロキョロと見回すが、何処にもその姿はない。
「居なさそうだね…こっち」
泉さんは私の手を引きベッドまで誘導した。保健室のベッドは今日は誰も来ていないのか綺麗に整頓されていた。
「横になって」
「えっ!?体調が悪い訳ではないですし、大丈夫ですよ」
「いいから。今は横になって頭を冷やして冷静になった方がいい。」
渋々と言われた通り、従う事にした。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は2年の森泉。貴方は1年生?」
「はい…って泉って苗字じゃなかったんですか!?私てっきり」
「あははっ…なんだそのこと。てっきり距離詰めるのが早い子なんだと。大丈夫、よく勘違いされるから。今まで通り泉でいいよ。」
私は初対面で親しい仲のような呼び方を気付かずしてしまったことに赤面した。
「さっきから、顔真っ赤。もしかして熱ある?」
「これはっ、大丈夫です。不覚を恥じているだけですので」
熱を測ろうと近づく泉先輩を押し言い訳をした。
「そう?そういえば、私まだ君の名前聞いてない」
といい、青みがかった瞳がじーっと見つめてきた。
「あっ、すみません。私は1年の姫華です。」
「ひめちゃんか。見た目ととても似合っていて可愛い名前だね。」
「そうですかね。でも、見た目はもういいかなって。ツインテールも今日でおしまい。」
「なんで?似合ってるのに」
「なんていうかガラじゃないって感じで…自分の好みでしてたわけじゃないから…もうする目的もないし」
そう言い、少しはにかむ様な苦笑いのような笑顔を見せると先輩は黙って私の顔をじーっと見つめるだけだった。
「…」
(そんなに見つめられると今までの思いが溢れ出しそうになる)
心臓をギューッと掴まれて息ができなくなりそうになり、目頭が熱くなる。
「そんな顔しないで。じゃあ、私が理由になる。私のためにツインテールしてきてよ。似合ってるし」
「なんでそこまで私の髪型に拘るんですか?」
先輩が私の毛先をすくって口元に近づける。相変わらず目をじーっと見つめ、首を傾げながら言った。
「んー。私がもっとツインテールの君を見ていたいからかな、そんな理由じゃ…駄目?」
私はそんな返答が返ってくるとは思わず、ポカンと呆気にとられた。
「先輩…分かってやってるでしょ?」
呆れたようにジト目で見つめ返した。
「バレたか、紗羅には効くのにな〜。ひめちゃんには効かないか」
クスッと笑い、頭をポンポンと軽くたたかれた。
「そんな事をいえるくらいには気持ちが落ち着いたようで良かったよ。もう少しここでゆっくりしていきなよ。私は戻るよ」
と言い、ベッドの横から退こうと何歩か進んだところで先輩が止まり、驚いた表情で振り向いた。
「どうしたの?」
「え…?」
私はなんの事か分からずキョトンした顔で首を傾げた。
「裾なんか掴んで〜…もしかして寂しい?」
少し嬉しそうに頬を緩ませそう聞いてきた。
「違います!さっさと行ってくれて大丈夫です」
どうやら無意識に先輩の服の袖を掴んでいたようだ。その事に気付いた私は顔を赤らめ袖を掴んでいた手をパッと離し、さっさと戻るように促した。
「んー。やっぱりもう少しここに居ようかな」
そう言うと、近くにあった椅子に腰をおろした。どうやら本格的に居座るようだ。
「お好きにどうぞ!」
そう言い終えるともう話すことは無いというかのように先輩に背を向けて布団を被った。
しばらくするとページをめくる音が聞こえてきたので、先輩の方をチラッとみてみると何処にしまっていたのか分からないが、メガネをかけ参考書をペラペラと真剣な眼差しで見ている泉先輩の姿があった。
(こんな場所でしかもまだ2年生なのに勉強してるなんて意外…しかもメガネかけてても美しいなんて不公平だわ)
そんな事を思っているといつの間にか深い眠りにへとついていた。




