壊れた音
「ねぇ、今日のテレビ見た!?」
「あの人超有名人だよね!」
「そうそう。びっくりだよね〜」
「ね〜。びっくりだけど…なんか変だよね…」
「え…?」
「変だけど、有名人だから認められてる感じ?だって同性愛だよ!?絶対変だよ」
その言葉を聞いた時、私の中で何かがパリンと音を立てて壊れた。
思わず、立ち尽くしてしまった。視界が歪む。
「え!?急にどーしたの!?大丈夫、ひm」
(どーしよ、何か言わないと。でも、何か言うと涙が…)
「何…?喧嘩?」
ふと、頭上から声が聞こえて視界が塞がれた。
(ヤバいっ、このままじゃ彼女が悪者に)
「違うんです、彼女は悪くないです。」
視界を塞ぐ手を退け振り向き目を合わせた。
(綺麗な人。)
最初の感想はそれ以外なかった。本当にただただ綺麗な人。髪は艶やかな黒からグレーのグラデーションでウルフカット、目は心の奥底まで見通しそうな青みがかった黒、背は私より頭1つ分くらい大きい。
目が合った時、彼女は少し目を見開き、見つめ合うこと数時間。そう感じた。でも、実際には数十秒と無いはずだ。その時遠くから声が聞こえた
「泉〜!何してんのー?」
端正な顔立ちをした彼女は声のした方向へ目を向けた。
その瞬間、私は走り出していた。不意をつけたと思った。でも、違ったみたいだ。2.3歩進んだところで左手をグッと掴まれた。振り返り掴まれた手を目で辿っていく。端正な顔立ちをしたあの人だった。
もう、話して欲しかった。これ以上ここにいると泣き顔を見られる。そんな事が頭の中で浮かんだ瞬間、手を引き寄せられ、そして身体が宙を舞った。
気が付いたら泉と呼ばれた彼女の胸の中に収まっていた。つまりお姫様抱っこをされていた。
「○○〜、ちょっと保健室行ってくる」
「了解!けど、もうすぐ授業だよ?」
「後でノート見して」
「もぅ〜」
そんな会話を一通りして、泉と呼ばれた彼女はスタスタと保健室へと向かった。
「い、泉さん?もう後は自分で行けるのでおろして貰えませんか?今なら授業まだ間に合うと思いますし」
しばらくして、そんな事を言い手足をバタバタさせおろして欲しいと意思表示をした。
「待って、もうすぐ着くから。あの場で暴れなかったのは早くその場を離れたかったから?」
図星をつかれ、顔を赤面させ固まった。
「あらら、図星だった?着いたよ」
彼女はクスッと笑い、私を降ろした。
彼女の笑顔はとても魅力的でずっと見ていると引き込まれそうになる。そんな笑顔だった。




