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幼なじみサジェスチョン

 さて、問題は解決したかのように見えるが決してそんなことはない。



 なぜなら具体的な手法については何も考えていないからで……。というか恋愛相談部の三人は現在全員恋人ナシ。うち二名は恋愛経験すらない。口では達者なことを言っているが、パンドラの箱を開けてしまえば実態なんてこんなもんである。うん。やっぱり人って口先だけの生き物ですね。にんげんってこわいわ。


「それで、誰のデートを見ればいいんだ?」


 当然の質問である。そして俺にも分からない。


 だが俺だってバカじゃない。一応策は練ってある。……そもそも俺が彼らの相談の対応にこれだけ躍起になっているのは、全部アイツに対する復讐の念から来ていることをお忘れなく。


「それなんだが……。まず大抵のカップルはそんなお願いをされても引き受けてくれないと思うんだよな。まあ当たり前だけど。引き受けてくれたとしても、恥ずかしがって本来の二人の素性なんて見せてくれるはずがない。デートなんてそもそも人に見せるようなもんじゃないからな」


「それは、そうだね……」


 鳴海がなんかちょっと顔を赤らめて同調した。……そうか。そういえば俺と加納は鳴海のデートを見たことがあったな……。たぶん鳴海にとってはすごい黒歴史だろうし、あの光景はちゃんと忘れたので心配すんな鳴海。


「そういえば、莉緒ちゃんのデートは見たことあるよねー」


「…………うぅ」


 とか思っていたら早速デリケートな話題に突っ込んでいくバカが一人!


「おい加納、察しろって。お前アレなの? 地雷原に突っ込む戦車なの? それともバカなの?」


 多分後者だろうが、前者の可能性も否定できない。おっぱいの戦闘力だけ見れば戦車級だしな……。何言ってんだ俺。


「あ、ごめん……」


 まあ鳴海の話は今はいい。それより観察対象となってくれるカップルの選定の話だ。


「こんな話を本物のカップルが引き受けてくれるはずもない。だから俺たちにできるのはあくまでも擬似的なものに限られるってことだな」


「擬似的なもの?」


 小牧が首を傾げる。


「そう。つまり本物のカップルは無理だが、恋愛経験が豊富な男女に擬似的なデートをしてもらうことなら可能だろ」


 どういうことかと言えば、この作戦は何も本物のカップルを用意する必要はないということだ。偽物の関係でも作戦としては実行できる。犬山と小牧がデートの様子を観察し、そこから何かを得ることが重要なのだ。


「なるほどな……。つまりカップルのフリをしてくれる恋愛経験豊富な人を探す必要があるってことか……」


 犬山が真剣な様子でそう口にする。


「ああ。そこで提案なんだが……」


 俺はそう言うと、犬山でも小牧でもなく、加納の方へと目をやる。


 当然視線が合うわけだが、加納はしばらく訝し気な表情をした後、何かに気付いた様子でハッとした表情になる。……ようやく気付いたか。



 でも気付くのが遅すぎたな、加納。



 そうだ。




 時至れりと、俺は口を開く。




 ――俺は最初から、これを狙っていたのだ!




「あそこにいる加納琴葉は、恋愛経験豊富でみんなからも慕われる超人気者だ! つまり今回の相談にはうってつけの人材だ!」




 俺の言葉を号砲に、犬山と小牧の視線が加納の方へ、ばびゅーんと方向転換。


 彼女を見る二人の眼差しがどうなっているのか、見るまでもない。


 こんな可憐で元気で明るくて胸もデカい女の子だから、それはもうあの胸みたいにすごい恋愛経験に違いない、とか思ってそうだ。


「あのお方なら、お前たちを本当の恋愛へと導いてくれるだろう……」


「――ちょっ、何よっ。本当の恋愛って!」


 加納が焦った様子で立ち上がる。俺に何か文句がある様子だった。でも無視無視。本当の恋愛、ねぇ……。なんだろうね。自分で言っててなんだけど、そんなの俺が分かるわけなかった。


「加納さんについていくっす!」


「わたしもっ!」


「ええっ……」


 突然二人に頼られ困惑の表情で声を漏らす加納。その慌てふためく様子が本当にっ……ふふっ、くくくっ、いやぁ、いい気味だなぁとか思って隠れてクスクスしていたらめっちゃ睨まれてました。


「陽斗くん? 私のこと買いかぶりすぎじゃない?」


「そんなことはない。実際お前はモテまくりだろ? 自他ともに認める学内アイドルだろ?」


 まあアイドルつっても闇深い地下アイドルみたいなもんなんですけど。


 それに俺は嘘なんかついていないし、あながち正当な評価だと思う。実際お前はモテるし、お前のことを慕う奴らはごまんといるだろう。ああもちろん性的な意味で。


 だいたい俺がお前のことを買いかぶるワケが無い。なんなら買いたくないというか、もはや売りたいレベル。そうそう。むしろ売りかぶりたいまである。売りかぶるってなんだよ。


 そしてもう一つ。私怨とか抜きにして加納を推薦した理由。


 この作戦には、観察対象である男女二人をきっちり揃えることが必要だということだ。


 今回の一件、鳴海にも頼めそうではあるが、彼女の性格を考えるとそういう男友達はいなさそうに思える。対してコピー用紙みたいにペラッペラな男女関係を築いている加納であれば候補に困ることは無い。ちなみに俺は論外。ちなむな。


 まあそういう複合的な観点から、そして俺個人の恨みと憎悪と復讐の念から、加納を推薦させて頂いたまでだ。




 こいつ以上に、適役なんていないのだ。



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