ペット?
「ふふ。もっと吾輩を頼ってくれてもいいのだよ」
サナトスが上機嫌だ。さっきから落ち込んだり嬉しがったりと表情がよくわかる。今まであまり人に手をかけてきたことがないのだと言い、フェルに何かをせがまれるのが嬉しいらしい。なんだか初めてペットを飼った人みたいだなとフェルは感じていた。
「それにしても、その話し方は母親譲りなのだね?」
「自分ではわかりませんでしたが、確かに母様もこのような話し方でしたね」
「年齢の割にはしっかりした物言いをするのだなと思っていた。思慮深そうでいいと思うよ」
「そんな風に言われたのは初めてです。子供らしくない。可愛くないと言われてきましたから」
「そうなのかい?」
「はい。ですが、自分の意見をはっきり言わなければ、うやむやにされます! 言いたいことを言わなければ泣き寝入りするだけですし、大人と対等に話が出来なければ給金も誤魔化されていたでしょう」
「…………君ってひどい目にあってきたんだね」
「…………ぐ。何事も経験ということでしょうか。その度に次は負けないぞと対処方法を考えましたので」
「ふむ。いいね。凄く面白い」
「私は面白がられても嬉しく……ありませんけど?」
「あはは。そういうところも凄い気に入っているよ」
サナトスは黙っていたらカッコイイのに、目尻をさげて笑う顔が案外可愛いのだと、フェルはまたドキドキする胸をおさえた。恋愛ごとには全く関わったことはないが、憧れなども感じる年齢なのだからとサナトスを見上げる。
「吾輩には珍しいことばかりなのだ。次は何をしてくれるのかとワクワクするね!」
「…………まるで私が珍獣みたいですね」
やっぱり……自分はペットのように思われているのだとフェルはがっかりした。
「吾輩は人間が好きなのだよ。「人間」という生き物は多様な個性があり、その繊細な感情や面白さに魅力を感じている。特に非力なくせに目的のために足搔き、這い上がる精神が尊い」
「……はあ」
変人の意見に賛同するのもどうかと思いながらフェルはサナトスの持論を聞き流していた。これが自分の雇用主と思うとこの先心配になるが、ここ数日、サナトスはフェルのためにあれこれと動いてくれている。
(ご飯もたくさん食べさせてくれる。服や靴まで手配してくれるなんて良い働き先だわ)
「……そうであればなおの事、私は師匠の役に立ちたいのです」
「ふふ。こうして傍に居てくれるだけで充分役に立っているよ?」
「もぉ、揶揄うのはやめてください。私も薬の種類などがわかるようになりたいのです!」
「ははは。そうだね。では少しずつ覚えて行ってもらおうかな」
サナトスがにこにこしながらフェルを棚の前に連れてくる。
「いいかい。ここからここまでが水溶性の草だよ」
「水溶性の草?」
「ああ、その上が可燃性、奥が砂塵、そっちが動物性。こっちが呪毒性……」
乱雑に置かれていると思っていた棚が実は細かな決め事があったことにフェルは驚く。
「そしてここからがハーブ。ローズマリーにノコギリ草、ブラックマルベリーにルースグラス……」
「待ってください。一度に覚えられません」
「おや、そうかい?」
「じゃあ一日一段ずつ覚えようか? 効能はそれからにしよう」
「…………はい、よろしくお願いします」
「……さっき、吾輩が薬を作っているときに覚えようとしていたよね?」
「はい。ですが一度では無理でした。出来れば書き留めることが出来れば復習できるのですが」
「あ! そうだよね。じゃあペンとノートを後で買いに行こう!」
「はい! お願いします!」
「うんうん。もっとおねだりしてくれてもいいんだよ」
「いえ、給金がもらえるようになれば自分で買いに行きますので」
「…………そうなのかい?」
「ええ。養女にでもなったのならいざ知らず、私は使用人ですから」
「はっ…………養女という手があったのか……」
「師匠どうかしました?」
「い、いや…………」
サナトスが若干落ち込み気味なのに対してフェルは薬棚の順番を覚えるのでいっぱいであった。
薬棚には魔女の薬草や幻の素材がてんこもりです。
そのうち採集にも行く予定です♪




