13話 オフ会③
「……という感じで、中学生の時からお付き合いをさせていただいています」
そう寧々が締めくくって、美穂を見る。ぎょっとした。
「うううう〜、わた、わたし、ブラック主人公だった……!」
「その心は?」
号泣する美穂にハンカチを差し出しながら加奈が聞いている。
「桜庭の夢とか、全然考えてなくて、ゲームで無神経に萌えてたよぉ」
「それを言うなら、私も途中までブラックよ……」
寧々は呆れつつも、美穂の言葉に同意する。
ゲームでは夢を諦めた後の一博しか出てこないのだ。プレイヤーとしてどうこうできるものではない。
「一博のために泣いてくれて、ありがとう」
それでも、愛する人のために後悔の涙を流してくれることは嬉しかった。
「これは転生したからできたチートね」
加奈が言った。由真もうんうんと頷いている。
「転生して、よかったですね」
推しを救えた。
由真の言葉に、寧々は素直に頷いた。
「ちなみに、桜庭ルートの夏祭りイベントありました? あれ好きだったので、気になります」
「はい! 私も!」
由真の質問に加奈が挙手をして追従する。
夏祭りイベントはあった。
主人公でなくても、一年生の時にちゃんと発生した。
「……あったわよ。少し、内容は違ったけど」
寧々と一博は高校一年の夏休みに、近所の祭へ行った。
ゲームの中では、浴衣を着た主人公と一博が出店を回って最後に並んで花火を見る、平和なイベントだ。まだ友達の域を出ない中、初めて手をつなぐという初々しい内容だった。花火を背景に一博が微笑むスチルは記憶に残っている。
「少し違う内容を、くわしく!」
「却下」
由真がニマニマしながら詳細を求めてくるのを却下する。
恥ずかしくて人に言えるものか、と寧々は思った。
寧々は浴衣を着ていった。
一博がとても喜んでかわいいと何度も言ってくれて嬉しかった。
しかし、出店を回っている途中で帯が崩れてしまったのだ。
慌てて人けのないところに避難した。
スマホの履歴から帯の締め方を呼び出す。しかし、出かける前に帯と一時間格闘していた。なかなかうまく直せない。
結局、一博の申し出を受けて、直すのを手伝ってもらった。
その最中に、「どうせ直せば見えないから」と襟元など、人からは見えない位置に印をつけるのだ。
恥ずかしいからやめてほしいのに、一博が嬉しそうに印をつけた肌をなぞる様子に何も言えなくなってしまう。
器用に帯を直し終わった頃には、寧々は色んな意味で消耗していた。
正直、その後に見た花火のことなど覚えていない。
思い出すうちに顔が赤くなっていたのだろう。
由真が寧々の様子を眺め、それから合掌した。
「ごちそうさまです」
寧々は、あとで〆よう、そう心に決めた。
「え、ええっと、次は私かな?」
不穏な空気を感じた加奈が声をあげる。
その声に気持ちを切り替えたらしい、真顔に戻った寧々に頷かれた。
「私は記憶が戻ったのは、小四の時で……」
加奈の話が始まる。
寧々とは違う、とても大変な話だった。




