31話 秘密と興奮
「君は……」
七瀬と伊吹のデートの次の日、木曜日。
南沢の診察室には、
「先生、こんにちは。こんな所まで来てしまって……ごめんなさい」
東雲詩穂埜が顔を出し、南沢は驚いていた。
「どうしたんだい……ね、眠れない、とか?」
「先生、私、聞きたい事があって、来たんです」
「聞きたいこと?」
「……えぇ」
「……ちょっと君、奥に行っててくれないか」
南沢は側に居た看護士にそう言うと、その看護師はいかにも関係を怪しむような怪訝な顔をして、奥の部屋へと入っていった。
「……七瀬の事だろう?」
「はい。彼と先生、ずっと仲が良かったと聞いていたので」
「それはそうだが……だからといって、私の職場にまで来て……何を聞きたい事があるんだ」
「……七瀬さんの、ご家族の事なんですけれど」
「家族?」
「はい」
「そんな事聞いてどうする」
「七瀬さん、弟さん、いらっしゃいませんか?」
南沢はそれを聞いたとたん、あからさまに動揺してしまい、すぐに後悔した。これで、彼女には嘘はつけない。すぐに見破られてしまうだろう。
「……あぁ、いるが……。幼い頃生き別れになり、あいつは一人母親に育てられたと言っていた。どうしてそれを……知ってるんだ」
「そうですか……それがわかれば、いいんです」
そう言って椅子から立ち、帰ろうとした詩穂埜に、南沢はイラめいたように言った。
「だから、なんでそれを知ってるんだ……!」
すると、詩穂埜は少しの沈黙の後、確かに言ったのだ。
「その弟さんの事、多分……殺したの、私ですから」
***
「2月23日土曜日、みんなで俺の別荘に行かないか、七瀬くん、みんなに聞いてくれないか」
「別荘!? お前、別荘なんて持ってたのか!?」
「まぁ……大したことないんだがな、温水プールもサウナも温泉もあるぞ。そんなに遠くはないし、ちっちゃな旅行だと思って…費用もいらん!となれば、さすがに来てくれるだろう、と、思うんだが」
七瀬のコンビニバイトの休憩中、近所の喫茶店でコーヒーを飲みながら、斎条孔雅は七瀬にそう言った。
「やっぱりお前、金持ちだったのか」
「まぁ……ちょっとした、な」
「ちょっとじゃないだろうその感じじゃ。金持ちのアル中のプー太郎なんて、最っ低だな!」
「……そ、そう言うなよ。俺と若狭だってな、伊吹ちゃんと星宮さんを好きなんだ。お前だけ独り占めするのはおかしいだろ!?」
「まぁ……それはなんか、申し訳ないと思ってるよ……」
「だろ!? だから、聞いてみてくれよ。みんなで一泊二日の旅行なんて、楽しいに決まってるじゃないか」
「……まー、な。わかったよ、聞いてみる」
「おーっ!!ありがとう、七瀬くんっ!!八人で楽しもう!!」
「八人?」
「七瀬君だろ、南沢くん若狭くんおれ…」
「え?南沢も入れてくれんの?」
「え?あぁ、あの時の婚活メンバーで……」
「そうか、お前いい奴だな。斎条くん」
そして、七瀬は全員にラインを送信した。
***
「あっああっ……きもち……いぃ、よ、夜風……っっ夜風……っっ」
(よかよか?なにこいつ、古くね?殿かよ)
若狭に抱かれながら、その女は思っていた。
飲み屋で若狭に気を持った、二十歳のホステスだ。
『夜風夜風』と呼ぶのが、名前だと思わずに変な奴、と思っている。
「出すよ、夜風……っ」
「はあぁぁんっっすっごい、あぁぁっっ若狭くぅぅぅん、真菜もイッちゃう、イクイクイク……っっはぁぁぁぁぁんっっ……」
これでもかというほど激しく突き上げ、
ビクビクビク……
彼女はイキ、若狭もたくさん放出した。
イク瞬間若狭の脳裏には夜風の顔が浮かんでいた。心の中では、"彼女の中"に出したのだ。
コンドームを外しながら、若狭はまたもや罪悪感に苦しんでいた。
(また……またやってしまった……夜風さん……、あなたと交わることができたら、この渇きもきっと……潤うのに……)
その時、若狭の携帯が鳴る。
「あれ、颯太くんの携帯だよ」
ベットに寝ている女がそう言って、颯太は携帯を手に取った。
《:ナナセ:二月二十三日から斎条くんの別荘に一泊二日の旅行が決定しました。メンバーは皆さんご存知の八人となります》
それを見た瞬間、
「……ねぇ、もう一回、しよっか」
若狭は興奮してそう言った。




