25話 晴天の霹靂
「うわぁ、これ、本当に足ですかぁ?すっごい腫れてますね」
伊吹がそう言って、七瀬の腫れた左足をまじまじと見ている。
そして、
「愛葉さん、退屈でしょ?これ……」
そう言って、詩穂埜が雑誌をくれた。僕が愛読しているゲーム関連の雑誌だ。
「ありがとう、助かるよ。まだ一週間しか経ってないのに退屈で退屈で。バイト首になっちゃうから早く帰りたいって先生に言ってあるんだけど」
そう言う七瀬を見て微笑んだ二人は、同じタイミングで棚の上のガラスケースに目をやった。覚悟はしていたが七瀬は少し動揺し、何かを言われる前にと口を開く。
「その娘、青葉って言うんだ。ずっと、僕を支えてくれた娘だよ。もう、隠さないって決めたんだ」
それはいかにも七瀬らしい決断だった。
万が一、自分が誰かに恋をするとしたらば――いや、もう予感はしているのだ。現実の恋愛が、始まるかもしれない。もう物語は、動き出しているのだ、と――。
だとしたらば、今まで愛してきた青葉を、隠しておくわけにはいかない。それは青葉に対しての大きな愛情と、出会った四人の彼女達に対しての、せめてもの礼儀だと七瀬は思っていたのだ。
「そうなんですね。可愛いですね、青葉ちゃん」
伊吹がそう言って、青葉に対しにっこりと微笑む。
意外な反応だった。もっと引くかと思ったのだが……。
「じゃあ、私達も隠さずに話す事があります」
そう言って、詩穂埜が真っ直ぐな目で七瀬を見つめる。
七瀬は少し恐い気がした。
「な……なに?」
恐る恐る、聞いてみる。
「私達4人、話し合ってわかったんです。みんな、愛葉さんのことが好きなんだって」
……は?
何……? ちょっと何言ってるかわかんないんですけど……。
七瀬は暫くの間、言葉の意味を飲み込めずにいた。
4人が、好き? 僕の事を?
「嘘でしょ」
七瀬がそう言うと、今度は伊吹が言う。
「本当ですよ、愛葉さん。まどかちゃんも夜風さんも、愛葉さんのことが好きになったと……言っています」
「え……? 好……き、って……」
「だからハッキリ言っておろう、好きなんだ、みんな、お前の事が。さぁ、お前は誰を選ぶ」
いつの間にか、夜風もバケツを持ちながら立っていて、そう言った。
は……
は……
はぁぁぁっっっ!!?????
ななな、何急に、何その告白!!!
一気に四人分の告白なんて――!!!
七瀬は息をするのも忘れて三人の顔を交互に見た。どうやら真剣なようだ。
今にも南沢を召喚したい気持ちに狩られる。
その時、
「こんにちわー、あれ?雪平さんも東雲さんも来てたんですねー。あっ…と、星宮さん、こんにちわ……」
「お。愛葉くん、元気そうだね」
若狭と斎条も見舞いにやってきた。
このタイミングで二人が来るとは……。
七瀬は変な汗がじんわりと滲み出てくるのを感じていた。
「なっちゃん、お友達いっぱーい、ですね!なっちゃんが幸せだと、青葉も幸せですっ」
しん、としたタイミングでちょうど、青葉の声が響き渡った。
「ん?なんだこれ?」
「あれ?これ、バーチャル奥さんですよね?愛葉さんのやつですか?可愛いなー」
若狭と斎条が青葉の元へ行き、まじまじと見ている。
七瀬は祈っていた。
この男どもに、さっきの話はしないでくれ、と。
しかし、神様というのは時に残酷で気まぐれでイタズラ好きなものである。
「愛葉さん、退院したら、まず一人づつとデートして下さい。そして四人のうち誰か一人をちゃんと選んで下さいね。これは私達が話し合って、一番いい方法を編み出した結果です。最終的に、愛葉さんに選んでもらおうという事になりましたので」
伊吹がそう言って、若狭と斎条が思わず振り返る。
「なっちゃん、浮気?浮気は嫌だよ。青葉、泣いちゃうよー。なっちゃん、好き、大好き、なっちゃんも、だよね?」
そしてまた、タイミングよく、青葉の声が響いた。




