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デレ婚!!~男女8人婚活ストーリー~  作者: 猫本猫美
婚活・恋愛攻略編
24/35

23話 初めてのキス





 「なっ……?なにをするんですか……っ!?」

 「じっとしていなさい、七瀬くん」

 「やだ、やだやだやだ!!やめてよ、頼むから…お願いだよ星宮さ~んっ!」

 「こんなことで泣きべそをかく男がいるか。すぐ終わるから、じっとしてるんだ」

 「あっ……ああっっっ!!!」


 

 



 星宮夜風が、七瀬の病室のカーテンをシャッと開けると、


 「あ、来たのか、まどか」

 「夜風ちゃん、ご苦労様。あ……」


 桜庭まどかが立っていた。

 まどかは、夜風の持っているバケツと尿瓶(しびん)に目をやる。


 「ああ……今、清拭と採尿を終えたばかりだ」

 「そ、そうなんだ。愛葉ちゃん、大丈夫?」

 「あぁ、帰りたいって騒いで大変だけどな。じゃあ、私は仕事があるから」


 夜風はそう言って、部屋を出て行った。

 まどかは七瀬のベットまで歩く。


 「愛葉ちゃん?大丈夫?まどかだよ」


 七瀬は布団を頭の上まで被っていたが、その声を聞くと顔を出した。

 さっき夜風にされた工程で、すっかり"何か"を失ったような気分になっていたのだ。


 「なに?なんでっ?なんでまどかちゃんがいるの!?」


 驚いてまどかを見ると、


 「……愛葉ちゃん……!!」


 まどかは急に七瀬に抱きついて、泣き始めた。


 「ありがとう、ほんとに、ほんとにほんとうに、ありがとう、愛葉ちゃん」

 「え……?な……何が……?」


 布団の上から自分に抱きつき泣くまどかを目の前に、七瀬はなんのことかわからずに顔を赤くしきょとんとした。


 「あのね、助けてくれた子供……私の働いてる園の子だったの。私が受け持ってる組の子で……愛葉ちゃんが助けてくれなかったら……と……思うと……」


 まどかはそう言って、大粒の涙をぽろぽろ流した。


 「そ……そうだったんだ。そんな偶然もあるんだね。でもほんと良かったよ。僕もこんなんで済んだし」


 七瀬は吊るされて固定された自分の左足を見てにっこりする。


 「ほら、ティッシュ」


 そして枕もとのちり紙を素早く三枚取って渡した。本当に、色気も何もない。


 「ありがと……」


 まどかはズズ……と鼻を啜りながら涙を拭き、少し微笑んで見せた。


 「女の子に泣かれると、こんなにドキドキするんだね。初めて知ったよ」


 七瀬がそう言うと、まどかは今度「えへへ」と笑う。


 「うん、やっぱりまどかちゃんには笑顔だね」


 「……愛葉ちゃん」



 ……!?


 ……!???



 七瀬は一瞬、何が起きたのかわからなかった。


 目を見開く。



 「ま、まどかちゃ…」

 「愛葉ちゃん、これは、お礼だよ」


 まどかはそう言って、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


 彼女は突然、キスをしてきたのだ。


 それは唇と唇が重なるだけの優しいものだったけれど、七瀬にとっては前代未聞の衝撃だった。


 やわらかい。

 あったかい。

 やわらかい、あったかい、やわら…。


 脳がフリーズした七瀬は、完全に石化する。


 その時、


 「はいはいはい、ご飯の時間だよー」


 2人のその雰囲気を打ち壊すかのようにぶっきらぼうな声で、夜風が部屋へ入って来た。

 そう、夜風は偶然そのワンシーンを目撃してしまっていたのだ。


 「じゃあ、また来るね、愛葉ちゃん。夜風ちゃん、それじゃあ、お仕事頑張ってね。愛葉ちゃんを、宜しくお願いします」

 「……あぁ。おつかれ」


 夜風は食事の乗ったおぼんを持ちながら、そう言って横を通り過ぎるまどかとは視線を合わせなかった。

 そして無表情のまま、ガチャリと音を立て介助テーブルにそれを置く。

 それから、


 「おい七瀬」


 と呼び捨てで呼び、


 「イテテテテッッ! なんだよいきなりっ」


 七瀬の頬を思いっきりつねった。


 「アホづらこいてる場合じゃない、ご飯だ」

 「……え……あぁ、ども、ありがと……」


 七瀬が礼を言っても、夜風は何も言わず動かない。


 「な、なんかした?」


 夜風は相変わらず無表情すぎて何を考えているのかわからない。

 七瀬は顔を引き攣らせながらそう聞くと、


 「……べつに」


 と言って、ぷい、と向こうを振り返り夜風は部屋から出て行った。



 七瀬の心臓はバクバクと音を立て、暫くおさまりそうにはない。

 さっきまで感じていた足の痛みも、脳から出るアドレナリンのせいだろうか。  

 もはや感じなかった。

 


 










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