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デレ婚!!~男女8人婚活ストーリー~  作者: 猫本猫美
婚活・恋愛攻略編
23/35

22話 帰還


 


 「やめて」

 「頼むよまどか、お前の事が忘れられないんだ」

 「お願いだから、もうやめて下さい!」


 桜庭まどかは昼休み中、元彼の只野宏(ただのひろ)に呼び出され保育園『大樹の子』の園門横でしつこく言い寄られていた。


 「子供達の親御さんが見てたらどうするんですかっ」

 

 宏は嫌がるまどかの腕を無理矢理掴み、抱きしめようとする。


 「誰も見てねーよ。まどか、もう一度俺と一日過ごしてくれよ。俺達相性よかっただろ、あっちの方も」

 「や、やめて!!」


 バチン!!


 耳元で囁かれ、まどかは思わず頬を叩いた。


 「この野郎……っ!!」


 まずい、また宏に叩かれる、まどかは咄嗟に腕で頭を庇いきつく目を閉じた、その時、


 「ちょっとそこで何してるんですか!」


 保育士仲間の先生が来て、宏は舌打ちをし、帰って行った。


 「大丈夫? まどかさん」

 「……はい、すみません……」


 優しく声をかけてくれるこの先生は、まどかより十個年上のベテラン先生で、上村恵美(かみむらえみ)という。常に優しくそれでいてしっかり者で、まどかは慕い尊敬していた。

 上村恵美は震えているまどかの手を優しく両手で握り締めると、言った。


 「こんな時になんだけど……裕也くんがね、事故ったんだって。裕也くんは幸い軽症で済んだみたいなんだけど、助けに入った男の人が代わりに車に轢かれたらしいのよ。たった今連絡が入って……」

 「えっ!! 本当ですか!? そんな……。裕也くん、本当に大丈夫なんですか?」

 「えぇ、かすり傷で済んだようだけど、園はお休みしますって」

 「そうですか……」


 三上裕也くんは、まどかの受け持っている『三つ葉組み』の園児だ。

 少し知能に障害を持っているが、ユーモアで優しい子で、まどかは大好きだった。


 「じゃあ、仕事帰りに私、その方にお礼を言いに行って来ます。無事だといいんですけど……。病院の名前、教えてもらえますか?」




***




 七瀬は夢を見ていた。


 空を飛んでいる夢だ。


 隣には、黒いハットとタキシードを身に纏い、赤い傘を持った「「豚」」が、一緒に飛んでいる。

 

 その豚が、話しかけてきた。


 「やぁ七瀬くん。空を飛ぶのは気持ちがいいかね?」

 

 「……うん、爽快だね」


 「そうだろう、もっとずっと遠くまで行ってみよう」


 「どこまで行けるんですかね?」


 「ずっとずっとずっと遠くまでだよ。ほら、あの地平線のそのまた向こうだ」


 「ずっとずっとずっと?そんなに遠くまで行っていいのかなぁ」


 「行っちゃだめ!!! 七瀬くん!!!」


 背後から呼び止める声が聞こえて、後ろを振り返る。


 「あ、みんなどうしたの?そんな格好して」


 そこには、まるで魔法少女の姿をした、あの、四人の美女が飛んでいた。


 「ダメよ!!! こっちに来なさい! 七瀬くん!!!」


 「え……でも……」


 七瀬はうろたえながら、豚の方を見る。


 すると、豚はいつの間にか真っ黒く焦げていて、黒く穴の開いた目がこちらを見てにたりと笑った。


 「う、うわあああああああああああっっっっっ!!!!!」


 七瀬はそのまま、地面に落下していった――。




 

***






 「………くん………ななせ……くん………」


 「……ん……」


 「先生、七瀬く……愛葉さんの、意識が戻りました」


 七瀬は朦朧とする意識の中、ゆっくりと目を開いた。


 ―――ここは―――?


 まだ夢の中なのか現実なのか、わからない。

 白い天井と光、が、ぐわんぐわん揺れて見える。


 「七瀬くん!聞こえる?!」


 ……ん?  ……誰だ……?


 呼ぶ声……、これは……。


 誰かが自分の名を呼び、手を握っているのがわかる。

 徐々に意識がはっきりしてきて、


 「あぁ………れ?  ほし……みや……さん………?」


 星宮夜風の顔が目の前に見えた。


 「そうだよ、七瀬くん、ここは、病院だよ」


 病院……。 そうだ、そういえば、今朝。


 「そうだ! 子供、だいじょ……っつ!」


 起き上がろうとして体が酷く痛んだ。


 「うん、子供は掠り傷で済んだよ。君は、左足骨折と脳震盪。幸い出血も脳に異常もなく…意識が戻れば大丈夫だろうって、先生が」


 子供は無事だったのか――。

 七瀬は安堵した。


 すると、夜風は握っていた手に力を込め、ぎゅっとして、目に涙を溜めて、


 「本当に……良かった……」


 そう言って、顔を伏せた。


 意識がはっきりした頭で見ると、彼女は白いナース服を着ているのがわかる。

 なるほど、担ぎ込まれたのは夜風の勤める病院だったのか――。


 しかし……。

 

 手、手、手、手ーーーっっっ!!!


 手を握り締められている事に気づいた七瀬は、もう一回意識を失いそうになっていた。











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