15話 涙、ココロ、すれ違い
ドンドンドン!
「おい! 開けろ! 七瀬!!」
ドンドンドン
「七瀬!! 開けろって!! おい七瀬!!」
若狭をあの場に置き七瀬を追いかけてきた南沢は、七瀬の住むアパートのドアを叩きながら七瀬に呼びかけていたが、中からはなんの反応もない。
中に居るのはわかっていた。「「殻に閉じ篭りたい時」」は、自分の家が一番落ち着くという事を南沢はわかっていたからだ。
「あのな、七瀬。お前が恋愛に対して臆病な気持ちはよくわかるよ。小、中、高と一緒にいた俺には良く分かる」
南沢はきっと聞いていると信じて、話し始めた。
「心無い女子に嫌がらせされた事も知ってる。靴隠されたりデブって机に書かれたり足引っ掛けて転ばせられたりして笑われてたよな」
七瀬はというと、毛布を頭から被りベットの上で膝を抱え座り、それを聞いていた。
隣に聞こえるような大きな声で言うんじゃねぇ!と叫びたかったが、唇を噛んで我慢する。
「でもな、俺はそんな七瀬が好きだった。変な意味じゃないぞ。何をされようが、お前は休まず学校に来て、静かにただ自分の好きなことに情熱を注いでいた。そんな奴らの事なんて、鼻で笑ってな。強い奴だな、って思ったよ。だから、こいつと喋ってみたいと思った。俺達結局仲良くなれたの、高校からだもんな。もっと早くちゃんと話ししてれば良かった。そしたらきっと楽しかっただろうな、小学も中学も……」
情熱を注いでたのはネットアイドルウナナちゃんだぞ、カッコ悪いじゃないか、と七瀬は思ったがそれと同時に胸が熱くなり、何かが喉をつっかえる感覚を覚えていた。
「今起きている事は信じられないような事だろうが、これは一生に一度しかないかもしれないチャンスなんだ。どでかいチャンスなんだ。何を恐がる事がある。いつものように、何かあったとしても鼻で笑い飛ばせばいいじゃないか。傷ついたっていい。その時はまた一緒に、秋葉にエロゲ買いに行こうぜ。俺のせいだから、好きなやつみんな買ってやるよ」
七瀬は、いつの間にか自分が泣いている事に気づいていた。
「あの子達と話をしてみよう、まずはそれからだ。この恋愛マスターの俺様がついているんだから、大丈夫だ!」
どんなに腕で拭っても、涙は溢れてくる。
混ざり合う絵の具のように、いろいろな感情が心を塗りつぶしていく。
長い間、白一色だった七瀬の胸の中に流れ込んでくる、黒、青、赤、黄色。
「どうしたのですか? 悲しいのですか? 嬉しいのですか?
体調が悪いのですか? 大丈夫ですか? 話を聞かせて、ゆうちゃん」
七瀬はガラスケースの中からこちらを見て心配してくれている青葉に、今にも消え入りそうな声で言った。
「……青葉…………ごめん………」
***
《:ヨカ:アイバちゃん、いなくなっちゃった》
《:イブキ:え、いなくなったって、どうゆう事ですか?》
《:マドカ:なにぃ??もう着いちゃうところだよぉ。アイバちゃん、酷いなぁ》
《:シホノ:用事でもできたのかしら?》
《:ヨカ:いや、みんなが来る、って言ったら、飛び出して行っちゃったんだ。逃げるようにな》
《:イブキ:私達、相当嫌われてるんですね……》
《:マドカ:はぁ~、もう、お喋りも諦めますか》
《:ヨカ:そうだな、嫌われてたんじゃどうしようもない。ただ話がしてみたかっただけなのに、こんなに拒絶されたんじゃな》
《:イブキ:そうですね》
《:マドカ:そうだね~残念!さよなら、アイバちゃん!(泣)》
《:シホノ:…………そうね》




