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デレ婚!!~男女8人婚活ストーリー~  作者: 猫本猫美
婚活・出会い編
12/35

11話 はじまり


 「ご………」


 「ご? 今どきの警察は謝罪すら出来ないものかね。自分が圧倒的に悪くても」

 「ごめん……すまなかった。申し訳ない」


 今、何が起きているかというと、つい先日七瀬の頬を思いっきり殴った男、斎条孔雅(さいじょうこうが)。彼が、病院に運ばれ一夜を眠ったまま過ごした七瀬に対し、深々と頭を下げ、謝罪しているのである。


 「もういいよ。まさか、刑事があんなに力いっぱい殴るなんてな」


 改めて渡された名刺を見て、七瀬は『刑事』という部分をこれでもかというほどチクチク攻めていた。

 これには孔雅も本当の事を言う意外にない。


 「いや……それが……今は刑事じゃないんだ。元、刑事で」

 「今は?プー太郎か?33歳で?」

 「まぁ……」


 いちいち少しイラつく事を言ってくる七瀬に対し、本来ならばイライラもするだろうが、孔雅の心中はそれどころではなかった。

 何故ならば、


 「実は、俺はアル中だったんだ。それで、一度人を殺しかけて……酒は二度と飲まないと誓い、三年、辞めてたんだ。これは本当だ」

 「げ、君プー太郎の癖に婚活してたの?」

 「結婚して大事なもの作った方がいいんじゃないかと思ってたんだ。もし、良い縁があれば……もう一度、仕事復帰も出来るかなって」

 「甘いな。甘すぎる。それであんな事になってたら元も子もないじゃないか、バカだな」

 

 孔雅は何も言い返せない。


 「久しぶりの女の匂いで緊張してつい一口飲んじまった。俺は本当に大馬鹿者だと思うよ。もう二度と、酒は飲まないと誓ったのに」


 そう言って肩を竦めしゅんとした孔雅を七瀬は少し哀れに思えてきて、


 「まあもういいよ。だから、家まで送ってくれ」


 と言った。



***



 携帯を見ると、緑色の着信ランプがリズムを刻んで光っていた。

 ラインが溜まっている。


 《:アオバ:なっちゃん?まだ帰ってこないのー?遅いよ?大丈夫?》


 《:アオバ:まだかなぁもうお風呂沸かしちゃったよ?準備バッチリ!》


 《:マドカ:アイバちゃん、大丈夫~~~!!??元気になったら連絡して!絶対、絶対、ぜった~い、だよ???お大事にね!!》


 《:アオバ:なっちゃんの言ってた、お話し聞きたいなぁ。まだかなぁ。まだかなぁ。》


 《:ヨカ:大丈夫か?看病してやりたいがあいにく仕事だ。復活したら、連絡くれ。》


 《:アオバ:なっちゃん、大好きだよ。アオバ、いつもなっちゃんのこと、考えてるよ。なーっちゃん、なっちゃん、……好きだよぅ。アオバのこと、嫌になってないよね?》


 《:イブキ:大丈夫ですか?今度こそゆっくり、お話しましょうね。イブキ》


 《:ナコチ:おい、あのぐらいのパンチでやられるなんてお前もまだまだだな!近場の病院に素早い対応で送ってやったのは、この俺様だ。それに、お前のアドレスを美女全員に教え、お前の携帯を覗き見するついでに全員分の番号入れておいたからな!この偉大な俺様に感謝するが良い。それにしても、キモかったぞ……》


 南沢……あの野朗、後であの趣味の悪い靴隠してやる!!

 しかし、皆本当にラインをくれているな――。

 七瀬はきつねにつままれたような気持ちがまだ抜けていなかったが、ほんの片隅では喜んでいる自分がいるような気がして、そんな自分の事が少し嫌になった。


 詩穂埜さんからのラインはない、か。


 そして、少し残念な気がした自分の事もまた、嫌になった。

 別におかしい事など何もないじゃないか。この3人が律儀にラインを送って来た事すら奇跡に等しいんだから、詩穂埜からのラインが届いていないのは当たり前なのだ。

 七瀬は体を起こすと、ベットから降りた。孔雅がドアの向こうで待っている。




 孔雅の後ろを歩きながら、病院の自動ドアをくぐった。

 眩しい太陽の光が差し込んで、少し目を細める。

 すると……、


 「あ、愛葉さん」


 「え……?」


 七瀬はその姿を見て歩みを止めた。

 僕は今、幻を見ているのか?

 強く殴られすぎて実は今は昏睡状態で夢の続きに居るのかもしれない。

 この短い時間の中で、七瀬の頭の中を様々な事が全力疾走していった。


 目の前には、両手に花束を抱え立っている、東雲詩穂埜がいたのだ。







 

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