↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/7

その2

来たるべき世界


(『改☆真夏の夜の夢』のプロローグであったり、エピローグであったりするいくつかの短編)


作 あんたのわたし



その2


主を失った城。


その神々の住んでいた天界にたどり着くために通る道。占い師とスマホの中から声を発する人工知能は、天界への道を見つけるため、広大な荒野を、あてどもなく毎日、毎日、何時間も、何時間もドライブするのが最近の日課となっている。というのも、その天界に向かう道というのは、日ごとに道筋を変え、人には、よほどの幸運がなければ、その道を見つけることが不可能であるからだ。


雲が厚く、垂れこめており。街は、活気を奪う重い空気を逃さず、封じ込めている。


     *      *


いつもなら、遠くまで見渡せる高原の景色、遠くには連なる山がみえる。しかし、このところ、天気は反対の状態。なにが間違っているのか、厚い雲の世界。


やがて、世界を覆っていたぶ厚い雲は晴れるのだろうか。何日もここに車で通って来ているが、厚い雲は変わらず、どっしりと腰を据(す)えたままである。


占い師は、このところ、車で、走ってやってくるのが日課になっている。車を飛ばすことが日課になっている。人工知能は、占い師に時と世界の裂け目をいちはやく見つけるように言う。そこの場所を見つければ切符の売り場がそばにかならずあるという。


占い師は、車の向かう先の方に、人工知能の言う、切符の売り場のある、時と世界の裂け目の兆候というか、それらしきものがからきし見つかったのである。占い師は、このところすっかり弱気になっていた。しかし、あきらめなかったから、ついに、裂け目を発見でき、切符を買えそうだ。


     *      *


この毎日のこの切符を買うためのドライブは、人工知能からの提案である。


     *      *


天界の神々、死んでしまった。それについて、情報統制が何かの理由で、どこかで行われているのか? 今のところ街の人達はそのことを誰も話題にはしない。また、ニュースにもなっていない。


しかし、神々の死というとてつもなく重大な出来事が、もしもこのまま永遠にウヤムヤになって、この恐ろしい事件自体がなかったことになってしまうなんてことがあるとするならば、それは、占い師にとっては願ったり、叶ったりの話だ。しかし、それは、実際には考えられないことである。


世界では、まもなく神々の殺害についての情報が告知され、それから神の殺害の経緯が、そして、神の殺害についての犯人探しが行われる。特に、神々の死の経緯についての情報が、この世界に暮らす人々によって、強く、強く求められることになる。そして、最後には、その答えを求めるものたちが、げんいんとなった占い師に質問してくる。その時は必ず占い師のところにやってくるというわけだ。


人工知能のアドヴァイスする声が、占い師のスマホから流れてくる。


「神々を殺してしまったというのは、最悪の事態だったが。切符売り場設置の告知が見つかったというのは良い知らせだ。占い師さん、捕まったらもうおしまいだ。その前に、この世界を離れる必要がある。つまりは、この世界から逃れて、なにか別の世界に渡る必要がある。でないと、世界、つまり神々殺しを知った世界の人々は、占い師さん、あんたを捕まえて、血祭りにあげるだろう。捕まったらおしまいだ。神々の死についてキチンと調べてくれる裁判なんて、そんな奇跡を期待して待ってはいないだろうね。占い師さん、聞いてくれ!とにかく、異世界方面行きの列車の切符を手に入れるんだ。指定席ではなく、自由席だ。指定席の購入者は、犯罪者のデータベースと照合される。そして、目的地につかないうちに捕らえられるだろう。占い師さん、あんたが幸運なのは、神々の正式な弔(ともら)うために、たまたま葬儀の特別列車が運行されるので、その列車の自由席の切符を取れれば、最高だが。。。」


     *      *


人工知能、今の段階では快調だ。


人工知能との付き合いは、気配りが必要だ。人工知能、機嫌の良し悪しは、働きぶりに現れる。


人工知能によると、異世界方面行きの列車の自由席の切符は、ホログラフでない生身の鉄道会社の車掌が異世界からやって来て、対面で販売する。しかし、時と場所は、キチンと決まっているわけではない。しかし、自由席切符の販売が、昼間に行われるのは間違いないので、天界に向かうための場所から車掌が現れそうな場所をあらかじめ選び、人工知能の指示通りに、車を走らせる日々が続いているということなのである。


切符が手に入るまで、占い師は、人工知能と話しっぱなしだった。そして、今、スマホの人工知能は、話すのをやめた。占い師は、ほっとした。


しかし、少しの沈黙があったあと、人工知能は、話を再開した。占い師の語りかけは、完全に説教っぽくなっている。


人工知能の話は、最近、脇道に逸(そ)れてしまうことが多い。それは、何かの仕様なのだろうか。


「占い師さん、君は、ハンバーガー、ドーナツ、アイス、牛丼、カレー、毎日同じものを食っている。ジャンクフードばかりでは体に良くない。減らす努力は必要だと思う」


「あんたも、いつも同じことを言う。ジャンクフードと言われても美味(うま)いから、つい食べてしまう。これが答えだ。いつも、同じ答えで悪いな。人工知能さん」


「美味い。。。 美味いとは、どういうものを指すのか? どんな体験?」


「そうか、人工知能じゃ、ものを食うなんてことは、ないからな。美味いの意味が分からなくとも仕方ないか」


「。。。」


しかし、占い師は、どハマリしている窮地から抜け出すために、人工知能の機嫌を損なってはならなかった。


     *      *


ところで、別のある日のことである。占い師が、街の噴水池にやってくると、スマホから人工知能は、何やら蘊蓄(うんちく)のようなものを語り始めた。


というのは、いっしょにいる占い師が噴水池の前で立ち止まり、考えに耽り始めたからである。


というのは、前にも書いたように、この噴水池には、神々が滅んだあとしばらくして、天界から黄金のりんごが降りてきたのだが、その時、占い師は、天界から降りてくる黄金のりんごを目撃していたのである。


噴水池の中の黄金のりんごは、あの時も様子も変わらず、水にプカプカ浮いている。噴水池にあって、プカプカ浮いているりんごなのだが、だれも取り出そうとはしない。噴水池の黄金のりんごの存在はとても目立つし、値打ちがありそうに思えるのだが、黄金のりんごを誰かがつかもうとしても、黄金のりんごをつかむことは誰にもできなかった。ただ、なぜか、綾という名の女性は、黄金のりんごをつかむことができた。黄金のりんごを手に取った綾は、それを噴水池まで運び、黄金のりんごを噴水池に浮かべた。


綾が、噴水池に黄金のりんごを浮かべて以来、黄金のりんごは、そのままずっと噴水池にある。


     *      *


その時、占い師は、ぼんやりと噴水池の黄金のりんごをながめていたのだが、占い師のスマホから聞こえてきたのは、いつもの人工知能の声であった。人工知能は、黄金のりんごを眺めている占い師が、どのような心境にあるのか、占い師の様子をしばらくうかがっていたのだ。


「占い師さん。その黄金のりんごが人をなぜか魅了してしまう。そこには、理由があるのです」



その時、人工知能の話し方が独りよがりで、鼻につくのを占い師は、感じた。


スマホの人工知能は、聞かれもしないのに、話し始めた。


「噴水池に浮いている、ちっぽけなものです。しかし、この黄金のりんごは、宇宙そのものなのですよ。しかし、我々は取るに足らないものとして黄金のりんごに接するべきです。黄金のりんごの持つ、黄金の広がりは、宇宙の無限の大きさは、小さな黄金のりんごの見かけからは、とてもとても想像がつかないくらいです。。。この黄金のりんごには、無限とも言うべき宇宙があるのです」


占い師は、人工知能がホラ吹きだと思った。人の気を引くためには、どんなことでも言うのだ。


しかし、人工知能というのは、ホラ吹いたり、ウソを言ったりできるものなのだろうか。


     *      *


異世界行きの列車の自由席切符を手売りの係員から購入した話に戻ろう。


人工知能の指示通りに行うことによって、車掌にみえる人物から切符を購入することができた。


切符は買えたのだが、列車の中は冷える。だから、毛布をレンタルしようとしたら、お金が足りず毛布のレンタルはあきらめた。


占い師は、アプリで口座をチェックした。そして、占い師は、つぶやいた。


「あったはずの金が、ずいぶんなくなっているぞ」



(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。